【「変化と再生を繰り返す島」と「家族のようなツンデレ島」】
火山という自然の脅威を受け入れ、変化と再生を繰り返す「三宅島」。
断崖絶壁に囲まれた島の中で、あたたかく自然と伝統を守る「青ヶ島」。
取材を終え、両島とも行く前とは大きく印象が変わってしまった。

「火山の島」と思っていた三宅島は、多くの珍しい野鳥が住み、長い時間をかけて育った日本最大級の巨木の森がある「森の島」だった。火山の影響でなくなる森もあるが、これまで無かった植生を生み出し再生をしていく。一瞬で様相を変える火山の景観と、長い時間をかけて育った森の景観。その両面を持つ。
2000年の噴火で被害を受けた森も、若い木々が覆い始めている。この先そこは巨木の森と変わっていく。そんな変化が見られる島。

巨樹・巨木の島・三宅島
巨樹・巨木の島・三宅島

絶海の孤島であり、激しい海の脅威を受け続ける青ヶ島は、「厳しい自然と戦う島」と思っていたが、その中ではあたたかく自然と共存していた。外に向かって立ちふさがるように立つ断崖絶壁は、「受け入れない」のではなく守る「父」のような存在であり、それに守られた島の中は、「母」のようなあたたかさで、自然と共とともに伝統を受け継いでいる。「ちょっと入りにくいけど、中はあたたかい」。そんなツンデレな島w

「父」のように守る、青ヶ島の断崖絶壁
「父」のように守る、青ヶ島の断崖絶壁

どちらも「過酷な自然と隣り合わせ」というところは変わらない。ただそれを脅威に思うのではなく、受け入れ共生し、守りながらも新たに進んでいく2つの島。外からの印象ではわからない。ぜひ中に入って感じて欲しい島。

【青ヶ島から帰る:あおがしま丸編】
さて、そんな青ヶ島と、中継する八丈島とを結ぶ『連絡船・あおがしま丸』は、外洋のうねりや波の影響を大きく受けるため、就航率50%とも言われる、なかなか乗れない交通機関。「青ヶ島に行くならぜひとも乗船レポートをしたい」と思っていたが、青ヶ島からの帰りにチャンスがやってきた。

我々がヘリコプターで上陸した日、1週間ほど欠航が続き、久しぶりに着岸したあおがしま丸(着岸の様子はこちらの記事から)。いっぱいの貨物を下ろし積み込んで出て行った。見送りながら「明日出ますかねえ」と島の方に聞くと、「今日無理に着けたからどうだろうねえ」という返事。うーん、難しいかなあ。帰りもヘリコプターかなと覚悟をしていた。

あおがしま丸着岸中
あおがしま丸着岸中

翌朝「出航」との情報が入る。「条件付き(「出すけど停まらずに帰る場合があるので覚悟してね」という条件)」がほとんどのあおがしま丸には珍しい「出航」。多少の不安がありながらも、ヘリコプターをキャンセルし、あおがしま丸への乗船を決める。

数分間の間しか開かない窓口で切符を購入(時間は当日島の方に確認を)。出航時間を待つ。
昼過ぎ、遠くからあおがしま丸が近づいてくる。そんな様子を見ながら一杯。

遠くにあおがしま丸が見える
遠くにあおがしま丸が見える

近づいてくる船を見ながら「昨日より揺れてないですね」と島の方に聞くと、「島の影に入っているうちは波は穏やかだけど、そこから出ると今日は揺れるよ」との返事。そんな返答に多少ビビりながら乗船。乗客は10名ほど。ほどなく出航。岸を離れていく。ありがとう、青ヶ島! また!

またね、青ヶ島!
またね、青ヶ島!

就航して2年ほどのあおがしま丸は綺麗で、客室は横になって過ごせるようになっている。乗客は各自思い思いに過ごす。快適な船旅が期待できそうだ。

客室
客室

まずは青ヶ島を外から撮影をしようと甲板へ。数名が出て写真を撮っている。「なんだ、思ったより揺れないじゃん」と、余裕を持ちながら撮影。

「このくらいの揺れならのんびり船旅ができそうだな」と思い始めた時、様子が一変する。急に何かに捕まっていなければ立っていられないほど揺れ始め、どんどん揺れは強くなっていく。その揺れに耐えられず、一人二人と客室に戻っていく。取材班もギリギリまで粘ってはみたが、さすがに撤退。

激しい波に揺れるあおがしま丸
激しい波に揺れるあおがしま丸

「一番いいのは寝てしまうこと」と、あおがしま丸の攻略法を聞いていた。確かに横になるのが一番揺れを感じないし、船酔いもしなさそうだ。2時間ほどの船旅。寝て過ごす。

目を覚まし窓から外を見ると、八丈島が近くに見えていた。今度は八丈島の島の影に入ったのか、揺れもおだやかになっていた。夕方の海と秋の空。きれない景色を見せてくれる。

秋の空と八丈島
秋の空と八丈島

八丈島に着岸。揺れが激しく一時はどうなるかと心配した航海だったが、八丈富士が見えた時にちょっと安心。島の方に言わせたら「たいした揺れじゃないよ」と言われるんだろうなあ。

八丈富士が見えてきた!
八丈富士が見えてきた!

なかなか乗れない連絡船・あおがしま丸は、いつもということはないだろうが、のんびりクルーズとは程遠い船だった。乗り物酔いが心配な方は大変かもしれないが、この揺れも船の醍醐味。雄大な海原の景色と、海の激しさという、自然を十分に感じることができる航海が楽しめる。

あ、心配な方は酔い止めの用意を。

あおがしま丸の情報は「伊豆諸島開発株式会社」Webサイトから。
毎週木曜日と日曜日は運休。水曜日は隔週で運休(2016年11月現在)。事前に運行スケジュールの確認を。

【「そして御蔵島が残った…」】
「あれ? 今回は『御蔵島』も行くんじゃなかったっけ?」
そう、その通り。でも御蔵島には上陸出来なかった…いや違うな、上陸しなかった。

御蔵島に渡る前日、予約していた宿からの電話。「明日の船で上陸はできるかもしれないけど、海と風の様子を見ると、出られない可能性が高いので、キャンセルしてはいかがですか?」という連絡。

御蔵島も青ヶ島のように切り立った崖に囲まれていて、港は外洋の影響を大きく受ける島。船はしばしば「欠航」もしくは「条件付き」になる。就航率があまり高くない島ということで、上陸できるかどうか情報収集をしていた時に入った連絡。「なんとか上陸を」と思っていたが、経験に裏付けられた島の方の情報は、やはり説得力がある。上陸は出来たものの出られなくなってしまっては、その後の予定も狂うということで、ありがたく提案と受け入れ、今回の御蔵島上陸は断念。まあ、そんなことが起こるのも島旅の醍醐味。

そんなわけで、伊豆諸島全島企画、残りは御蔵島のみ。
待ってろよ! 御蔵島!

待ってろよ! 御蔵島!
待ってろよ! 御蔵島!

【三宅島、青ヶ島へ行くには】
さて、今回の三宅島、青ヶ島への玄関である八丈島へは東海汽船橘丸が快適。JR浜松町駅に近い竹芝桟橋を夜に出て、寝て起きれば島に到着。帰りはのんびりと太平洋クルーズが楽しめる。「橘丸乗船レポート」はこちらから。

八丈島から青ヶ島へは、船かヘリコプター。
連絡船・あおがしま丸の情報は「伊豆諸島開発株式会社」Webサイトから。
ヘリコプターの情報は「東邦航空株式会社」Webサイトから。

青ヶ島から離陸するヘリコプター
青ヶ島から離陸するヘリコプター

【今後の予定】
さて、伊豆諸島全島企画は前述の通り残り一つ『御蔵島』が残った。
この島も多くの自然に恵まれた魅力的な島。
必ずリベンジ! 乞うご期待!

御蔵島編:序章】へ。

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