Nature Serviceは長野県信濃町の委託を受けて、2016年度より行ってきた実証実験「脳波測定による、自然体験が寄与する企業経営課題解決への実証実験」の最終報告会を2019年2月13日(水)、東京ミッドタウン日比谷「BASE Q ホール」にて行いました。この実証実験は、電通サイエンスジャムの簡易脳波測定器を用いて、自然環境下における従業員のリモートワークが企業のメンタルヘルスマネジメントにどう貢献できるかをエビデンスに基づき科学的に解き明かすために行ってきました。IT企業大手や一部上場企業等、定員の200人の会場が満席になりました。

報告会では冒頭、信濃町の横川正知町長から、開会のご挨拶をいただき、2016年から共に行ってきた実証実験の結果、自然の近くでリモートワークを行うことで生産性の向上が期待できると言う結果が出たのは大きな成果であること。2019年5月にはNature Serviceとの協働で、ノマドワークセンターの開設も予定しており、信濃町としては今後、企業の健康経営の一助となることはもちろん、信濃町の交流人口の増加、ファンの増加につなげていきたいとする旨のお話をいただきました。

講演セッションは、「働く人の健康から考える生産性向上」をテーマに、3人の講師から講演を行いました。

講演1 「日本における健康経営への取り組みの実情や課題と効果的な対策の事例共有と傾向」

田中克俊 氏(北里大学大学院医療系研究科医学先行産業精神保健学 教授)

田中氏からは、自然がどのぐらい良いのかについては、海外でも認知を得てはいるところだが、科学的なエビデンスがないのが実情である。今回の脳波測定の実証実験は、健康経営、脳の健康管理を進めようとするなか、科学的なエビデンスをつくる上で画期的なプロジェクトであった旨のお話をいただきました。

講演2 「簡易脳波測定器と自然体験と組み合わせる可能性について」

神谷俊隆 氏(株式会社電通サイエンスジャム 代表取締役社長)

神谷氏からは簡易脳波測定器の感性アナライザー特徴や脳波の取得技術についての解説がされ、言葉にしづらいことを客観的に示すことで、商品開発や新しい価値を生み出すことに活かしていきたいとしていることが話されました。

講演3 「脳波測定による自然体験が寄与する企業経営課題解決への実証実験・最終報告」

木村理砂 氏(Momo統合医療研究所 医師)

木村氏からは、実証実験の概要と結果について、以下の通り報告がされました。

実験概要

実験参加者:首都圏で働く労働者20名(男性15名、女性5名、平均年齢37.2歳)

実験方法:
Aグループ:都内実験後、信濃町
Bグループ:信濃町後、都内実験

実施時期:2018年9月、10月

実験内容:脳波測定(座位安静開眼)、自覚症状テスト、クレペリンテスト(実施中脳波測定)

実験結果

  • 森林環境で過ごすことにより、都内オフィスよりも自覚的な心身の状態が有意に良好になった。
  • 脳波調査では、80%の参加者において森林環境では都内オフィスより興味が高まり活性化する傾向がみられた。
  • 森林環境と都内オフィスにおいて同様の作業を実施したところ、森林環境では作業成績が向上している傾向がみられた。
  • 脳波測定では、森林環境では興味関心が向上し、心穏やかに快適性を保ちながら作業をしていることが有意性を持って検証された。
  • また、都内オフィスと比べて、心の穏やかさの向上は有意であり、森林環境での作業は疲れがとれやすくリラックスして作業していると推測される。

まとめ

  • 信濃町森林環境では
    • 自覚症状が改善
    • 「興味が高まり活性化している傾向」が向上
  • 信濃町における知的作業では
    • 作業成績が向上
    • 「心の穏やかさ」「興味関心」「快適さ」が向上
    • 森林環境では、疲れがとれやすくリラックスして作業をしている可能性が推測

森林セラピー、自然体験、自然の中でのリモートワークなどを活用することで、精神疾患の早期発見・早期介入/自殺予防、求職者の減少やよりよい心身の健康状態、予防・メンテナンススキルの向上、そして生産性・ワークパフォーマンスの向上につながるとの示唆がされました。

■先行事例の紹介

「白浜オフィスの事例を中心に、実践企業としての気付きや成果・課題」

吉野隆生 氏(株式会社セールスフォース・ドットコム 白浜オフィス長)

吉野氏は、セールスフォースが和歌山県の熊野古道の近くに白浜オフィスを3年半前から開設しているが、仕事を変えることなく、自然の近くで働くことで、商談率の向上、社会貢献の増加等の効果が上がっている旨の話がされました。

報告会に参加した方に感想をお聞きしました。

トッパングループ健康保険組合 ヘルスケアチーム リーダー 梅木 稔さん

心や体の疾患を未然に防ぐために、自然体験が有効な手段であると改めて実感できました。また、自然が人にもたらす効果を従業員やご家族の皆さんに納得してもらうための材料を得られたのは大きな収穫です。ぜひ弊社でも従業員の健康維持のために自然体験を取り入れていきたいと思いました!


富士テレコム株式会社 染谷 義一さん 畑 智雄さん 葛西 康人さん

弊社は、脳波プロジェクトの実証実験にも参加させていただきました。「自然の中では不思議と気持ちよく仕事ができる」というのが当時の感想でしたが、今回その科学的な理由を知ることできたので晴れやか気分です。ノマドワークセンターの完成も楽しみにしていますので、ぜひまた協力させてください!


事業構想大学院大学 事業構想研科 修士課程 株式会社ユーグレナ 研究開発部 機能性研究課 課長 中島 綾香さん

「仕事=つらい」という既成概念を「仕事=楽しい」に変えられる可能性を感じました。自然が人に与える効果を実証するプロセスも、研究者の一人としてとても興味深かったです。そして何よりNature Serviceの皆さんが楽しそうに仕事に取り組まれていることが印象的でした。私も活動に参加してみたいです(笑)


一般社団法人日本野外研修ワークショップ協会 廣川 英昭さん

今まで何となくとしか語られてこなかった自然の効果を、科学的なエビデンスをもとに実証する取り組みは、とても有意義だと感じました。そして自然を舞台に活動してきた私たち関係者にも大きな勇気を与えてくれました。素晴らしい機会を、ありがとうございます!


株式会社イトーキ オフィス総合研究所 所長 谷口 政秀さん

自然に囲まれていると気持ちがいいことは誰にとっても承知の事実だと思います。その理由を科学的に証明しようという試みはとても画期的だと思えました。ノマドワークセンターの取り組みにも興味があるので、内覧会に参加させていただこうと考えています。そのときはどうぞよろしくお願いします!


坂戸市役所 市民健康部 健康保険課 課長補佐 岡本 行弘さん

多くの気づきを得られたとても貴重な機会でした。私が勤務する埼玉県坂戸市にもたくさんの自然が残っています。長野県信濃町さんとNature Serviceさんの取り組みに触れ、ふるさとの美しい自然を活用しない手はないと痛烈に感じました。たくさんの刺激を与えてくださり、ありがとうございます!


春皐園 町田 康寛さん

日本の未来に明るい光をもたらしてくれるような講演でした。森や川や古民家、もともと地域に存在していたものが発想次第で資源として活用できる、そう考えただけでワクワクしてきます。今後も皆さんの活動を楽しみにしています。ありがとうございました!


星読み ライフパーパスコンサルタント すぎもり ゆかりさん

自然と触れ合うだけで前向きな気持ちになれることは自分でも分かっていたのですが、科学的な視点や論文を見せていただけたことで妙に納得させられました。これから、より地域に根付いて仕事をするような働き方が増えていくのだろうと、そんな期待をもたらしてくれる素晴らしい講演でした。


3年間の実証実験にご支援いただきました長野県信濃町および実証実験に参加いただいた皆様、関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。

Nature Serviceは、信濃町と共同で企業の働き方改革やテレワーク支援を目指して信濃町ノマドワークセンターを2019年5月にオープンする予定です。ノマドワークセンターの利用や森林セラピーにご興味をお持ちの企業の方は下記の問合せ先まで電話、メールもしくは問合せフォームよりご連絡ください。

問い合わせ先
特定非営利活動法人 Nature Service 担当:野尻、赤堀
TEL: ‪050-3142-1518‬ E-mail:labpr@natureservice.jp

信濃町ノマドワークセンター

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