長野県が県を挙げて取り組んでいる自然保育。いろいろなところで話題になっていますね。
そんな自然保育の現場に、自然が遠いものになってしまった私が行って、優しい衝撃を受けた、ご報告です。

訪れたのは10月の中旬。東京より早く秋が来る信州では、あちこちで紅葉が見られる季節でした。
森のようちえんは、園によって環境にあわせた保育をするのが基本とのことで、いろいろな取り組みを見たいと、3つの園を見学してきました。

先に説明しておくと、私はベッドタウンといわれるそこそこの都会で育ち、四半世紀前に東京のど真ん中に移住。高層ビルが立ち並ぶ場所で、子育てをしました。街路樹を見て自然を感じるほど、自然が遠い世界です。

私には見えなかった赤い木の実
森のようちえんに行った時、その世界は「茶色と緑」の世界でした。木々の葉は、緑の中に、茶色くなりはじめたものがある状態で、地面は茶色。落ちているどんぐりも栗も、すべて茶色です。
「この風景を絵具で書いてください」
と言われれば、間違いなく、茶色系と緑系だけを大量に購入したと思います。

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森のようちえんでは、特別なカリキュラムはないことが多く、子どもたちは思い思いに遊びます。そんな中、ある女の子が、色とりどりの木の実や葉っぱを集めていました。その中に鮮やかな赤い実。

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その赤は、どこに?
色があふれる秘密の場所があり、そこから持ってきたのだろうか?
それが私の思ったことでした。

よほど不思議そうな顔をしていたのか、その女の子がはずかしげに見せてくれます。
「とってもかわいいね。よく見つけたね。遠くまで行ったの?」
「え?そこにあったの」

指差したのは、ほんの数メートル先。よく見ると、そこには小さいけれど、しっかり自己主張する赤い実がたくさんありました。

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あまりにも何も見えていなかったことに小さな衝撃を受けつつ、上を見上げれば、「茶色」や「緑色」といった言葉だけでは表現できない豊かな森の色が、優しく私の目の中に飛び込んできました。同時に、そよぐ風に葉がざわめく音や鳥の声も聞こえてきます。それは私にとって、驚きでもあり、感動でもあり、そして心がほどけていく、心地よい変化でもありました。

遊ぶだけでは不十分。自然の中で遊びきることに意味がある
自然には、100色絵具でも表現しきれない色があり、それを目で見て感じることで、心が豊かになっていきます。自然保育のメリットは、まさにこの自然を実体験として感じながら、素直な心で毎日、発見を繰り返し、心を紡いでいくことにあるのだと、身をもって知りました。

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自然保育は、子どもたちがただ、自然の中で遊んでいるわけではなかったのです。子どもたちは、毎日変化する自然の中で、大人には想像できないほど多くのことを感じ、それを心に刻んでいきます。そして自然の優しさが、豊かな創造力や自由な発想力を育ててくれているのです。

自然は私の心にも衝撃を与えてくれるほど、雄大なのですから。

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「とことん遊びきることが大事」
その言葉の深さが、やっとわかった気がしました。

日々の生活の中にある、さまざまな色やにおい、音、感触をまったく感じていなかった私ですが、あの体験以来、生活の彩りが変わったように感じています。その証拠に、見慣れた秋の公園にも、小さな赤い実があるのを発見!

自然保育で思いっきり遊ぶ子供たちが与えてくれた“心で見る”という感覚。またかすんでしまうことがあったら、教えてもらいに森に行こうと思います。

自然の刺激と優しさは、最高の教育の場!
みなさんもぜひ、森のようちえんに足を運んでみてください。

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