私が今回ご紹介するのは、静岡県御殿場市出身の橋都彰夫(はしづめ あきお)さん(59歳)です。
関連記事:富士に集うシニアエイジの冒険家たち〜その1〜

橋都さんは、富士山に4つある登山道の一つ、御殿場ルート上にある、収容人数40名ほどの小さな山小屋「わらじ館」(標高3,050m)の館長をされている方です。

富士山登山シーズンである、7月初旬から9月初旬までの2ヵ月間、束の間の休息と喉の渇きや胃袋を満たす食べ物などを提供などしながら登山客の安全を見守っていてくれる山の番人なのです。

刑事から山小屋の主人へ

こんなわらじ館の御主人である橋都さんですが、その経歴を初めて聞かされたときは驚きました…

それはなんと、2011年6月まで警察官をされていたというのです。
優秀な警察官だった橋都さんは、かつて機動隊や刑事を歴任。銀行強盗を逮捕し、表彰されたことだってあるのだそうです。

しかし6年前、突如そんな安定した警察官の職を捨て、休業していた山小屋を知人から借り受けたった一人で営業を始めてしまったのでした。

標高3,050mに位置する山小屋「わらじ館」

いつしか仲間たちが小屋を手伝うように

開業当初、ひとりぼっちで営業を始めた橋都さん。

しかし、いつしかその魅力に惚れ込んだ仲間たちが一人、二人とわらじ館の仕事を手伝うようになり、今では毎年のようにわらじ館に戻ってくるようになりました。

わらじ館々長の橋都さんとその従業員の方達

生死を彷徨うほどの大ケガを負うことに

富士山の登山シーズンは7月から9月までの2ヵ月間ととても短いため、オフシーズン、館長の橋都さんは信州のスキー場にある従業員宿舎の管理人をしていたのでした。

ある時、雪おろしの最中に飾り屋根からの落雪に巻き込まれてしまい、そのまま3階の屋根から転落。両手、両足の骨が砕けてしまう、四肢粉砕骨折という大変な重傷を負ってしまったことがありました。
生死を彷徨うほどの大ケガです。普通の人なら確実に死んでいたであろうところですが、元警察官という鍛え上げられた肉体のおかげで、九死に一生を得たのでした。

プリンスルートの魅力

橋都さんのわらじ館が位置する御殿場ルート。

シーズン中、一番登山客の多い山梨県側の吉田ルートとは対照的に、登山者数は全体のおよそ6%・1万8000人ほど(平成29年度)です。吉田ルートとは違い、山小屋の件数が少ないことや、標高差によるところが大きいのかもしれません。

だれにも邪魔されず、静かで雄大な富士山を満喫するには、是非、このルートがおススメです。

また、2008年8月に皇太子殿下が、となりの富士宮口から登りはじめ御殿場ルートに合流、その後山頂まで御殿場ルートを使って登られて以来、このルートを「プリンスルート」と呼ぶようになりました。

途中、1707年の宝永噴火の際にできた「宝永火口」(縦1.3km、横1.0km)の真横を通り過ぎる際には、その大きさや迫力に圧倒されるとともに、まるで富士の息吹を感じるかような錯覚さえ覚えることでしょう。

このプリンスルート、富士山「第5の登山道」として最近ひそかなブームとなっています。

「山のおやっさん」に会いに行こう!

魅力に満ちたわらじ館とその館長橋都さん、そして雄大で神秘的な富士を満喫できる御殿場ルートと、プリンスルート。

取調室のカツ丼(?!)は出てきませんが、お替りOKのじっくり煮込んだ特製カレーやお酒を片手に、波乱万丈に満ちた「山のおやっさん」橋都さんの人生話を聞きに、わらじ館へ行ってみてはいかがでしょうか!

わらじ館から見える御来光と山中湖

「わらじ館」のHPはこちら。

コメントを残す