日本海に浮かぶ離島、新潟県の佐渡島。
新潟市内から船で行ける、利便性の良い南北に伸びた特徴的な形をした島です。
佐渡島といえば有名なのが「朱鷺(トキ)」。
全国に向けてトキのPRや、トキの生息する田んぼを中心に子供たちの環境教育を行っている “一般社団法人佐渡生きもの語り研究所”さんのモニターツアーに参加をしてきました。
「トキは絶滅した」と思っていたので、今回のツアーで飼育されているトキだけではなく、野生で生きているトキもいることを知って驚きました。
トキの野生復帰のために、国や県だけではなく、島民が協力をして様々な取り組みをしているということが印象的でした。
佐渡島に観光で行っただけではなかなか分からない、トキと共生するための環境整備についてご紹介します。
【朱鷺(トキ)ってどんな鳥?】
まず、トキについて。
ペリカン目トキ科の鳥で学名はニッポニアニッポン。“朱鷺色”という名前にもなっている淡い桃色の羽が特徴的な美しい鳥です。大人になると、羽を広げると1.4m、1.5kg程のサイズになります。そこそこのサイズの鳥ですが、非常に繊細。
環境破壊による環境の変化や農薬の影響や、美しさゆえに捕獲されてその数が減っていってしまい、1981年に日本に残る5羽のトキを捕獲し、繁殖が試みられましたがヒナ誕生とはいかず、2003年に日本の野生最後の朱鷺“キン”が死んでしまいました。
トキ絶滅。もういないのか・・・。
と思ったら、トキが野生に帰ってから2018年で10周年。
・・・?!
実は、日本では野生絶滅したトキが中国で発見され、1999年中国から日中友好の証として2羽のトキが贈呈され、その年にヒナ(優々)が誕生したことを皮切りに人工繁殖を通して徐々にトキの数が増えていったそうです。
2008年に第一回となるトキ試験放鳥が行われ、10羽のトキが自然下に飛び立ちました。毎年、年2回の放鳥を行い、4年目の春(2012年)に日本では36年ぶりとなる野生下でのトキのヒナ誕生というおめでたいニュースもありました。
野生下で暮らすトキの数も徐々に増え、現在、佐渡島にはトキが300羽ほどいて、そのうちの半数は野生で生まれています。
今回のモニターツアーでも2日の滞在でしたが、田んぼの中にいるトキを見ることができました!
トキの情報は、環境省の「放鳥トキ情報」に最新情報が載っています!
【朱鷺を守る様々な取り組み】
ツアー初日が野生復帰ステーションの一般公開日とかぶり、職員の方からお話を聞いたり、放鳥されるトキが訓練する順化ゲージの中に入ることができました。
この順化ゲージは、放鳥候補となる1~5歳位のトキを集めて野外で生き抜く力をつけるための訓練をしていくそうです。1回に入るのは20羽以下で、トキが驚いてパニックになって飛んで壁に衝突してもケガをしないように内側にソフトネットが張られているトキに優しい環境。
ケージ内には、田んぼや、休む木など、放鳥後にトキたちが暮らす島の自然がコンパクトに再現されていて、田んぼではきちんと田植えをして、稲刈りまで行うそうです。
トキが繊細、と書きましたが・・・かなりのビビリ。人間に慣れるまでは、その姿が見えただけでパニックになって飛び回ってしまったりするそうです。ここでスタッフの動きを見て「人間は敵じゃない」ということを理解してもらうのだそうです。
“野生復帰ステーション”は普段は一般の人は立ち入れませんが、“トキの森公園”では、トキの生態や歴史について学べたり、飼育されているトキを見ることができます。私が行ったときは、運よく観察窓の近くまでトキが来てくれたので、間近でトキを見ることができました。
【島の人たちの協力】
トキの野生復帰をどれだけ頑張っても、トキが生きていくのは人間も生活をしている佐渡島の自然の中。そのため、島人の協力が不可欠です。
“トキのみかた”をキーワードに“トキと共生”を目指しています。トキはとても臆病な鳥なので、車から降りずに観察をすること、大きな音や光を出さないようにすること、観察をする時には私有地や農道へ無断で立ち入らず地域に迷惑をかけないこと、などを呼び掛けています。
また、トキは林の中で寝て夜が明けると水田や畦(あぜ)でエサを取ります。佐渡では、トキのエサ場となる田んぼでは、農薬や化学肥料を従来の半分まで減らしたお米づくりを全島で行っています。また、「朱鷺と暮らす郷認証米」生産農家さんは、“生きものを育む農法”を行い、トキのエサとなる田んぼの生きものを増やす工夫もしています。田んぼの水を抜く時期に水辺の生きものが住める環境を作ったり、畦の草刈りは除草剤を使わず、手刈りで行ったり、農家の方の多大な努力でトキと共生する環境を作っているのです。
「生きもの調査を年2回実施していること」「生きものを育む農法で栽培されたお米であること」「水田畦畔等に除草剤を散布していない水田で栽培されたお米であること」などの厳しい条件をクリアしたお米にだけ認証マークが与えられる、“朱鷺と暮らす郷づくり”認証制度が作られています。
朱鷺と暮らす郷のお米は、売上の一部をトキの環境整備基金として寄付され、お米を食べることで、トキへの応援にもなります。
【まとめ】
現在、野生で暮らすトキは約300羽(ツアー参加時2017年10月)。多い様に感じますが、まだトキの野生復帰としては道半ばだそうです。環境省では、「2020年頃までに、佐渡島内に220羽のトキを定着(1年以上生存)させる」ことを目標に活動を続けているそうです。
遠いイメージがありますが、佐渡島は都内から週末旅行で行けることが分かりました。佐渡汽船のカーフェリーの新潟港からの特徴的な出航や充実した船内を楽しみながら、佐渡島で野生のトキに会い、里山を観察する離島旅もオススメです。
佐渡の観光情報は、こちら!
生まれも育ちも仕事も東京。2015年冬に東海汽船企画の「島ガール」をきっかけに島に魅せられ、2年で伊豆諸島9島制覇。シュノーケリングとキャンプにはまり、夏が待ち遠しい!!