日増しに陽射しが強くなって気温も上がり、いよいよ夏らしくなってきました。アウトドアや夏休みのイベント、実家への帰省などで自然に触れる機会も多くなってくるのではないでしょうか。

みなさんはセミの抜け殻を見つけたことはありますか?
今回は、セミの抜け殻を通して、その一生とそこから感じる小さな命の存在について考えてみたいと思います。

セミは身近な存在

私は宮城県の山奥の出身で田舎育ちということもあり、子供の頃はセミの抜け殻をたくさん見つけていました。その度に嬉しくて大はしゃぎしていた思い出があります。都市部でも夏になるとセミの鳴き声が聞こえ、それだけで夏を感じます。

セミは身近な存在で、ちょっとした林や緑が多めの公園など身近な場所にも生息しています。お子さんと近所を探索してみませんか?セミの抜け殻を見つけることができたら大はしゃぎするかもしれません。

セミの一生

セミと言えば長い間土の中で過ごし、やがて地上に出てきて成虫になり、ごくわずかな期間を懸命に生きる…のようなイメージを持たれる方が多いと思います
以下にセミの一生を簡単にまとめてみましょう。

  • 成虫のセミが木に卵を産みつけます。
  • 卵はそのまま冬を越し次の年の梅雨の時期にふ化して幼虫になります。
  • 幼虫はその後、木から降りてきて土にもぐって5年間過ごします。
  • その後夏になると地面から出てきて羽化(うか)し、成虫になります。(幼虫から成虫に羽化する際に脱皮した皮がセミの抜け殻です。)
  • 成虫は数日経ち体が成熟した後、ようやく鳴くことができるようになります。(オスのみ)
  • 鳴くことによりメスを呼び寄せ交尾し、メスはその後産卵します。
  • 成虫になってからの寿命は約2~3週間です。

幼虫の時はのんびりですが羽化し成虫になってからが大忙しで、この短期間に産卵まで済ませるのでかなり必死に生きているのではと思ってしまいます。羽化する時に脱皮し残していったセミの抜け殻が「小さな命の足跡」のように感じられ、とても神秘的に思えてはこないでしょうか。

セミの抜け殻は、木の幹や枝葉などの人の身長程度の高さの場所にしがみついた状態のものが多くあります。木の表面を一周じっくりと観察するほか、木の根元の落ち葉や草花を注意深く見ると発見できるかもしれません。

とは言え、必ず見つかるものではないので「あったらいいね」くらいの気持ちで探してみてください。もし見つからなかった場合は、お子さんと聞こえてくるセミの鳴き声にじっと耳を傾けてみてください。きっと命の存在を感じ取れると思います。

セミを通して感じる命

セミが短命であるということから「儚い」「命を大切に」というイメージを持っている方が多いと思いますが、ここでぜひ知っていただきたい歌があります。

響き渡るセミの鳴き声を「セミの合唱」と例えますが、合唱曲の中に「セミ」というタイトルの曲があります。

「セミ」~児童のための合唱組曲「虫の絵本」より
作詞 まど・みちお
作曲 吉岡弘行

この曲は作曲家の吉岡弘行さんが、まど・みちおさんの詩であった「セミ」に音楽を加えて合唱曲にしたものです。まど・みちおさんの作品の多くは子供向けの詩で、小学生の頃の教科書で名前を覚えている方も多いのではないでしょうか。童謡「ぞうさん」「一ねんせいになったら」の歌詞もまど・みちおさんの作詞です。

「セミ」の歌詞は、命の大切さを子供に押し付けるありきたりな内容ではなく、自然の中に命が存在し繰り返し受け継がれていく様子を子供目線で歌っています。大人が子供に命とは何かを「教える」のではなく、子供に「感じて」もらえるのではないかと思っています。

「セミ」を歌う動画はいくつかありますが、私は下記のURLで聴くことをおすすめします。児童合唱という真っすぐさと音楽の美しさも相まって大人の心にも響く点が私のオススメポイントで、合唱曲の中では名曲と言われています。ぜひ一度聴いてみてください。

https://www.nicovideo.jp/watch/sm16267560

以下に歌詞を引用します。

土の中から けさでてきて

もうセミが うたえている

ならったことも ない

きいたことも ない

とおい そせんの日の うたを

とおい そせんの日の ふしで

たいよう ばんざい ざい ざい ざい

たいよう ばんざい ざい ざい ざい

うたは もえて もえて

こずえへのぼり くもへのぼり

くも つきぬけて そらへと のぼり

たいようの てに すくわれて

そのゆびに あそんで ちりこぼれ

きらめき ながら

ゆらめき ながら

またふるさとの うみやまかわへと

しんしん しんしん まいおりてきて

土の中へと しみとおっていく

とおい しそんの日の なつにも

とおい しそんの日の そらへと

また もえのぼって いきたくて

たいよう ばんざい ざい ざい ざい         

たいよう ばんざい ざい ざい ざい     

作曲者より

「作曲上、歌詞を変更しているところがあります」

カワイ出版 吉岡弘行:児童(女声)合唱のための組曲 「虫の絵本」ISBN 978-4-7609-1628-3 

このひらがなの文体と空白と改行を見て、小学生の時の授業で教科書を朗読したことを思い出してしまったのは私だけでしょうか。何だか童心に帰ったような気がしませんか。

まとめ

今回はセミの抜け殻とそこから見えるセミの一生について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
内容を簡単に振り返ります。

  • セミは人間の生活と身近であるということ
  • セミの一生の簡潔なまとめ
  • セミの抜け殻を探すにあたって
  • セミを題材にした合唱曲

について書きました。

これから暑い夏が始まりますので、実際にセミの抜け殻を探しに出かける場合は熱中症対策として十分な水分補給や日傘などを準備して行ってくださいね。親子で自然に触れ、小さな命の存在を感じるきっかけとしてみてはいかがでしょうか。

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