「オーバーランディング」(Overlanding)は、ただ未舗装の道を走るのではなく、自然への敬意と理解をもって、自然豊かな林道などの悪路をキャンプしながら楽しむためのスタイルです。
参考記事:「オーバーランディングとは?非日常を味わえるその魅力と楽しみ方!」
今回の記事では、これからはじめる初心者の方向けにオーバーランディングの世界に安全に足を踏み入れるためのルールをご紹介します。
林業従事者への敬意と配慮を持って林道を利用する
林業従事者が作業で使用する林道や作業道を利用させていただいているという意識を常に持ちましょう。林道に入る際は、林業従事者の作業を最優先に考え、邪魔にならないよう最大限の配慮をしましょう。林業従事者の判断で今まで通れていた道が簡単に閉鎖されてしまうことも大いに考えられます。
山火事防止は私たちの責任
自然の中で暖を取るために火を扱う際は、防火対策を徹底しましょう。焚火は「solostove」が延焼を防ぐためにオススメです。さらにブロアで枯葉を飛ばし、防火シート上に焚火台を置いて飛び火対策を心がけることはもちろん、枯れ草の上などで車の長時間アイドリングは避けてください。万が一の山火事に備えて、損害が生じた際の「個人賠償責任保険」への加入など、社会的な保障にも配慮が必要です。
危険な道は事前調査を
運転中、何か不安に感じる時は躊躇せずに車を停め、歩いて道の先を確認しましょう。それによって小傷などの車へのダメージを防ぎつつ、実際に歩くことで脱輪や転落のポイントを避けることができます。また、熊や猪などの危険な野生動物との遭遇を避けるために、熊よけスズ(無ければスマホで音楽を大音量で流す)や、熊スプレーの持参をして山の中を歩きましょう。
コミュニケーションの確保
へき地でのトラブルに備えて、常に衛星通信システムを携帯し、万全なコミュニケーション体制を確保しておくことが重要です。命を守るためにも、絶対に必要な機材の一つと言えるでしょう。
オススメなのが、Garmin社のinReach 衛星通信技術や、Starlink などです。
最低でも携帯電話を持参し、電波圏内まで歩いて連絡を取る手段が考えられますが、暗い夜道は滑落や動物との遭遇、そして帰り道がわからなくなる遭難のリスクがあります。遭難をさけるため「Wikiloc」などの無料アプリを活用しましょう。夜間にやむを得ず車中ビバークすることを想定し非常食・飲用水ペットボトル・防災用アルミ保温シート・トイレットペーパーを車に常時積んでおきましょう。
地域住民への配慮
訪れる地域の住民に敬意を表し、うるさいマフラーなどは使用を控えて、静かに旅をすることが好まれます。また民家があるエリアでは静かにゆっくりと通過し、住民が危険を感じないように最大限の配慮をしてください。皆が快適に生活できるよう共存共栄の心で臨みましょう。
キャンプをした場合は「来た時よりも美しく」
自然を楽しんだ後は、火気の徹底した安全確認、ゴミは持ち帰り(もちろん、自分以外のゴミがあればゴミ拾いをしましょう)、キャンプ地を来た時以上に美しい状態にして帰ることを心がけましょう。消し炭は放置せず火消し壺に入れて安全に持ち帰りましょう。火の始末とゴミ拾いは自然環境を守る基本的な行動です。
オーバーランディングの旅は、これらの心がけとルールを守ることから始まります。自然との調和を第一に考え、安全で責任ある行動を心がけながら、新たな冒険へと踏み出してください。
私たちが行動で示すマナーの良さは、地域住民や林業従事者との信頼関係を築く礎となり、林道の閉鎖などの最悪の事態を防ぐことにもつながります。さらには、人里から離れた地帯を複数の車両が訪れることで、動物たちが人間の存在を意識し、将来的には人里に出没しなくなる効果も期待できます。私たち一人ひとりが良識を持ったオーバーランダーとして行動することで、日本全国にオーバーランディングの健全な文化を根付かせていきましょう。
NPO法人 Nature Service 共同代表理事
自然大好きで気の合う仲間達とNature Serviceを立ち上げました。北極から南極、アメリカ横断、アフリカ、北欧、オセアニア、南米などいろいろな自然を求めて旅しています。自然好きですが虫キライです。