リフレッシュのために外を歩く。気晴らしに森林や海辺を歩く。とっても簡単なことなのに、なぜか心が静まる。それはなぜ?気のせい?いえいえ、気のせいなんかではありません。自然が心身を癒やす力はこれまでにも多くの研究者に興味を持たれ、今では科学的に証明されているのです。
今回はNATURE WORLD NEWSの記事から、自然が人体に与える影響についてご紹介します。
これまで、科学者たちは何年もの歳月をかけ、自然が人にもたらす良い影響を科学的に証明しようと繰り返し研究を重ねてきました。それら研究結果のなかから、実際にどのようなことが分かったのかをいくつかご紹介しましょう。
さらば、ストレスホルモン
ストレスホルモンとも呼ばれる脳内分泌物質、コルチゾールの量に注目した研究があります。コルチゾールは過度なストレスを受けると増加し、うつ病患者などでは高値を示します。 Landscape and Urban Planningにて発表された研究によれば、多くの緑や自然に囲まれて生活していると、都市部で生活するよりもコルチゾールレベルが低くなることが確認されているそうです。
ただし、この研究からは、コルチゾールレベルの低下が自然だけの影響とは言い切れません。自然に囲まれて生活している人は、都市部の人よりも散歩などの適度な運動をする傾向があるため、「自然+適度な運動」の結果と言えるようです。とは言え、適度な運動を助長しているのは目の前に広がる自然でもあるため、間接的には自然がもたらしているものと言えます。
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海外だけじゃない!日本でも証明されている!
こういった研究は海外だけでなく、日本の研究でも明らかになっています。2014年発表の日本の研究では、森林の中を歩いた被験者はコルチゾールのレベルが下がっただけでなく、血圧、心拍数、ストレスに対する過剰な神経反応が低下したという結果が報告されています。また、参加した被験者の半数以上の免疫力が増加し、神経の一部がリラックスしていることも確認されたようです。
戦闘モードをオフに
イリノイ大学の研究者、Ming Kuo氏の研究結果によると、自然には私たち人間の免疫システムを強化してくれる働きがあるといいます。屋外での活動は「ストレスと闘うモード」を「休めモード」に切り替えてくれ、結果的に心や体の健康を助長してくれるそうです。
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病室は窓際が良い!?
また、自然環境が人にもたらす影響は、新鮮な空気を吸ったり、鳥のさえずりを聞いたりすることだけではありません。自然を目で見るだけでも違うのです。
サイエンス誌で1984年に発表された研究によれば、窓から森が見える部屋に入院していた患者と、自然が全く見えない患者とでは、術後の回復と苦痛の程度が異なったといいます。自然を目にできる病室患者の方がより早く回復し、苦悩や苦痛を感じることも少なかったそうです。
過度のインドア生活や孤独、ストレスの多い都市生活は、人間の免疫システムや神経に悪影響を与えます。休日に家に閉じこもっていることは、一見休息のようにも思えますが、実はそうではありません。家から一歩出て外の空気を吸い、できれば車や人が多く行きかうような場所ではなく、少しでも自然のある場所を探してみてください。そして、自然から真の意味での休息を得る習慣を付けてはいかがですか?
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Katrina Rossos (意訳:NATURES.編集部)
Nature Serviceのウェブメディア NATURES. 副編集長。
自然が持つ癒やしの力を”なんとなく”ではなく”エビデンスベース”で発信し、読者の方に「そんな良い効果があるのなら自然の中へ入ろう!」と思ってもらえる情報をお届けしたいと考えています。休日はスコップ片手に花を愛でるのが趣味ですが、最近は庭に出ても視界いっぱいに雑草が広がり、こんなはずじゃなかったとつぶやくのが毎年恒例となっています。
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