長野県が“自然保育”に力を入れているということで、百聞は一見にしかず。実際に見に行ってきました。
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お邪魔したのは軽井沢にある「森のようちえん ぴっぴ」。
“森のようちえん”というだけあって、本当に森の中にありました。その敷地面積2000坪……。想像をはるかに超えた、柵のない自由な空間のすべてが子どもたちの遊び場でした。
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そこに通うのは、2歳から6歳までの36人。中には、この幼稚園に入園したくて東京などから移住してきた人もいるとか。確かにあか抜けた印象で、「しっかりしたものじゃないと、すぐにダメになる」という理由で選ばれているアウトドアブランドの服をきっちりと着こなしていました。
森の中で自由に、そして真剣に遊ぶ!
子どもたちは広大な森で自由に遊びながら、9時から2時までを過ごします。園舎はなく、広場にはトイレと事務用の小屋があるのみで、荷物はタープの下に設置された棚へ。登園するとすぐに思い思いの遊びをはじめます。
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ボールを蹴る子
ソリに石を入れて引っ張り続ける子
木陰の手作りブランコで女子トークをする子
集めた落ち葉でキレイなアートを作る子
とんでもなく急な崖を満面の笑みで滑り降りる子(2歳)
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それぞれの想像力をフルに生かし、全力で遊ぶ姿がそこにありました。あふれる笑顔は曇りがなく、真剣な表情は純粋で、泥まみれになって遊ぶ表情にはキラキラ輝く瞳があり、いつの間にか私も一緒に遊んでいました。
自然の中で身に付ける、人との関わり方
森のようちえんには、時計も時間割もチャイムもありません。
集合の合図は、鈴。決して大きくない鈴の音でも、気付いた子どもが周りの子に声をかけ、あっという間にみんなが集合してきます。好き勝手に遊びながら、そこにはルールがあり、みんなで守るための友達同士の関わりがあるのです。
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そしてもうひとつ。
自由に遊ぶ森のようちえんには、年齢によるクラス分けはありません。
小さな子が起こしたトラブルを見つけたお兄ちゃんは、双方の言い分を十分聞き、納得できる解決策を見つけ出していきます。
大人がすぐに仲介に入り、理由を聞いて「でもどっちも悪いよね。お互いに謝ろうか」と無理やり納得させるようなやり方は、そこにはありませんでした。大人は口を出さないから、「せんせ〜、○○君がケンカしてるよ〜」と子供たちが闇雲に大人に助けを求めることもありません。
お兄ちゃんがとりなす姿を見ながら、小さい子供は「何だかすごいな」と憧れを持ち、年齢が上がれば自分がとりなす立場になる。そんな“つながり”がありました。
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丸く置かれた切り株にすわり、木漏れ日の中で見る絵本。そして伴奏がなくても、ひとつになれる歌。
そこには強制感はないのに、何事にも真剣に取り組もうとする子供たちの姿がありました。
葉音と調和した生命力にあふれる歌声を聴きながら、「この子たちの将来が楽しみだ」と心が躍る気がしました。
幼児期の自然との原体験は、子どもの創造力を育て、未来を豊かにしてくれます。
お子さんがいる方はもちろん、たくさんのあふれる笑顔を見たい人は、まず森へ!
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NATURES. 編集部 キュレーター
自然の中で自由に遊ぶ息子を見たくて、週末キャンプに出かけていたのは遠い昔。キャンプでは食事と酒にこだわり、動けなくなるほどに食べてしまいますが、楽しければそれでいい。虫がいなけりゃもっといい。コンクリートだらけの世界で生きながら、自然の偉大さを想っています。