【島の人に会う】
『神津島の人』は、神津島村 地域おこし協力隊の中村さん。神津島出身で高校入学の際に上京。鉄道会社勤務後Uターン。「いつかは戻ろうと思っていたんです」という中村さんは、戻ってきて半年ほどだそうだが、イベントやツアーの運営、ガイトなど、島のアピールに関することはなんでもやると、精力的に活動中。
まずは懇親会と島の居酒屋へ。中村さんのお知り合いも合流し大宴会に。神津島は人口2,000人弱の島だが、そのほとんどが一つの集落に集中して住んでいる。島には「地域で子育てをする」という意味の『親のない子が神津島』という言葉があるそうで、横のつながりが強い島のようだ。そういえば、急遽民宿が変更になった時も、「いとこの民宿だから」とスムーズに変更ができた。そんな協力体制がこの島にはある。この大宴会の雰囲気もそんな横の強いつながりを感じる。
その宴会でいろんな話が出る。「天上山は行ったのか」「千両池はいいぞ」「ドローンはどこで飛ばすんだ」などなど。明日はそんなオススメの場所を巡るということで、神津島の夜は更けていく。そしてビールおじさんは記憶を無くしていく。
【神津島のシンボル・天上山を巡る】
朝。民宿から見上げる天上山には、雲が厚くかかっている。こんな時に限って、天気予報は正確だ。
神津島に来て、天上山に行かないのはもったいないと、小雨だが登山口に向けて出発。大宴会でご一緒した、カメラマンとしても活動する島民・藤井さんのガイドで、『白島登山口』に向かう。白島登山口は6合目まで車で行ける登山口。天候を考え、30分で山頂に到着するの最短コースを選択する。がっつり登山を楽しめる『黒島登山口』もあるが、こちらは次の機会に。
森の中を車で進む。雲の中に入ったのか、周囲は霧に包まれる。なんとも幻想的な景色が続く。こんな天気だからこそ見えた景色、とポジティブに考える。そこが我ら取材班のいいところ。
登山口に着くとさほど雨も気にならない程度になったので、登山を敢行。まずは、木々に囲まれた、森のトンネルを抜けていく。神津島ツツジの季節は終わりに近づいていたが、ところどころに小さな可愛い花を見せてくれる。霧にしめり、しっとりした森は、なんだか安らぎを与えてくれる。
森のトンネルを抜けると、ゴツゴツした岩の山肌に、低めの木々が生える山の七合目あたりにでる。天上山は標高572mのさほど高くない山だが、本州で2,000m級の山で見られるような高山植物がとこどころに生えていて、かなり高い山を登っている気になる。こんな高さの山で高山植物が生えていることに、登山者の多くは驚くそうだ。
ふと振り返ると、眼下にはモコモコとした森と、それを包みこむような白い霧。神が集まったとされる山は、どこか神々しくもある。風に流される霧の切れ間から、集落や海が時々見えて来るのがいい。ずっと見ていられる景色。
白島登山口から山頂に到着すると、目の前に『不入が沢(はいらないがさわ)』が広がる。火口の跡とのことだが、神々が集まった場所とされていて、立ち入ることを禁じている。それが名の由来。霧が包む聖なる場所。自然の力を感じたであろう、古(いにしえ)の島民の気持ちに思いをはせる。
天候も回復傾向。ドローン隊は撮影の準備。ビールおじさんはこの眺めをつまみに一杯。
【神津島のオススメスポット!】
中村さんのガイドでオススメスポットへ。「神津島のパンフレットの表紙になったところに行きましょう(中村さん)」ということで、島の北側『神戸山』に向かう。神戸山は元採石場。森の中の細く、うねった道を進む。採石場は岩肌がむき出しの荒廃とした場所だったが、「こっちです」と中村さんが案内した場所は、昔、削った石を船に積むため、海まで下ろすのに使った索道(貨物用ロープウェイ)の出発点だった場所。海岸が一望できるこのスポットは、オススメするのもわかる絶景!
このスポットは、わかりにくく危険な場所なので、詳細は地域おこし協力隊に確認を。いい景色だが、ビールをやめておこうと思う。
「ちょっと行くのが大変なんですけど、『千両池』にも行きましょう」という中村さんに案内されて、島の南側へ。細く入り組んだ道を進む。分岐も多いので迷いそうだ。方向感覚に自信がなければ、徒歩、自転車で行くのはやめた方がいい。
千両池の入り口に着く。ここにもトイレとシャワーが。行き届いている。荷物を持って目的地へ。ちゃんとした階段があったのは最初だけ。ほぼ断崖絶壁のような道を進む。足元から気が離せない。一つ間違えれば滑り落ちるような道を進む。途中整備されている場所もあるが、全般的に道は険しく、気軽に行けるところではない。小さな子供には厳しいかもしれない。行く際は荷物は少なめで、ちゃんとした靴で行くことをオススメする。そんな秘境に千両池はある。
過酷な道を通ってたどり着いた千両池は、深い入江になった波も少ない天然のプール。岸壁に囲まれた景色は神秘的な絶景。ポスターにもなるほど。海の色を見ると、深さも結構ありそうだ。
「ここに魚を追い込んですくい上げると、一夜にして一攫千金の水揚げがあった」ということで、この名前がついたらしい。ここも噴火口の跡。
この絶景に、帰り道が不安だが飲まずにはいられない。酔いを覚ましてから帰ろう。
行く場合はくれぐれもご注意を。綺麗で楽しい場所だが、注意が必要な秘境。
【そんなわけで…】
「水の神に愛でられらアイランド・神津島」。まさにそのことを裏付けられた形になった。
千両池は、昔は海の恵みを与えてくれて、今は海の楽しみを与えてくれる。
神戸山は、海が綺麗に見える景色を与えてくれる。
そして、そんな水の恵みを与えてくれる神の山・天上山。
観光だけでなく、島の産業、島民の生活が、豊かな水により与えられている島。
やっぱり『水の神に愛でられたアイランド・神津島』だな。
神津島の観光情報は「神津島村役場:観光・イベント」Webサイトから。
次回「神新汽船乗船レポートと第2回渡航の終章」。
盛りだくさんだった今回の取材を、なんとかまとめたい。
Nature Service 正会員 島事業リーダー
酒と音楽をこよなく愛する自由な情報設計者。島での楽しみ方は素潜り。綺麗な海を見ると潜りたくなって仕方ないらしい。潜った後のビールと、民宿のご飯が大好物。ビールおじさん。