(【八丈島編:1】より)
【島の人に会う】
『八丈島の人』は、八丈島の自然ガイド『山小屋』の島田さん。今回の取材でいろいろと調整いただいた『八丈島観光協会』の田村さんと一緒に、まずはと、居酒屋で島の味を楽しみながら、打ち合わせ(という名の飲み会w)。
島田さんは、若いころから山屋(山に登る人)として山に親しみ、伊豆諸島の山は全て制覇。仕事で何年か住んでいた八丈島に3年前移住。ハイキングから秘境巡りまでガイドする、八丈島の山のスペシャリストとして活動中の方。我々が回ったスポットの話をすると、「まだまだありますよ」といろんな秘境の話をしてくれる。そんな話をスペシャリストに言われたら行かないわけにはいかないと、八丈島の秘境をガイドいただくことに。多少天候が心配ではあるが、八丈島の焼酎も入り、気持ちは盛り上がる。
【三原山の秘境スポットを巡る】
10万年の歴史を持つ『三原山』。一つだけでなく、いくつかの火山が合わさってできているとのこと。伊豆諸島には珍しく川があり、沢や滝といったスポットも多いのが特徴の山。
ポットホール
「ポットホールに行きましょう」と島田さん。ちょっと聞きなれない名前だが、八丈島のイチ押しのスポットとのこと。これはいかないわけにはいかない。『ポットホール』とは、「岩の上を流れる水路にできる穴(くぼみ)のことで、小さな穴に溜まった小石が水流で回転し、長い年月をかけ徐々に穴が大きく深くなったもの(八丈島観光協会Webサイトより)」。数万年かけて作られたこのポットホールが、調査の結果、八丈島には800個以上の穴あるそうで、八丈町の天然記念物に認定された、世界的にも珍しいスポット。取材スタッフの気持ちも盛り上がる。さらにこの調査をしたのが島田さんというのにも驚く。山の中の道無き道、沢という沢を数か月に渡って調査した結果らしい。
周遊道路からポットホールへの道に入る(ちょっとわかりにくい)。道沿いにはいくつかポットホールが見られる沢があるが、一番代表的なスポットに行く。なるほど、沢の途中にいくつか穴がある。これがポットホール。結構深い穴もある。これを小石が削ったかと思うと、気の遠くなる時間がかかったのだろうと思う。
足をちょっとつけてみる。雪解け水ではないので、適度な冷たさが気持ち良い。この時期のちょっと蒸し暑い気候にはちょうどいい。周りの緑も心地いい。そんな時は開けるでしょ、ビールw。
都道の入口から2.6kmに渡る細い林道を、制限時速20kmで走行することになるので、レンタカーで行く場合は注意を。ガイドの紹介や、詳しい情報は八丈島観光協会に確認を。
ポットホールの落ち口
ポットホールがある沢はいくつかあるが、「沢がいくつか集まって太平洋に注ぎ込むスポットがあるんですよ(島田さん)」との情報。「全く整備されていないので、覚悟してください」と怖いことも言われるw そんな話で怯む我々ではない。これは行かないとでしょ。
落ち口の入り口付近に車をとめて、草木が生い茂る小道に入る。除草がされている場所ではないので、足元は不安定。ところどころで足を踏み外し崖に落ちそうな思いもしながら、なんとかたどり着く。その場所は沢からの水が、滝になって断崖絶壁から落ち、海に注ぐ場所。隠れた八丈島の秘境。
「海からこの滝を撮影しよう」と、ドローン隊が動きだす。
危険な場所なので、要ガイドのスポット(島田さんしか案内できないそうです)。「行きたい!」という場合は観光協会に相談を。
三段の滝
「沢を歩いていく滝があるんですよ」と島田さん。細い道を入った途中に車を止める。「本格的に沢登りをするので、沢歩き用の靴に履き替えてください」と、なにやら本格的な冒険の匂い。
靴を履き替え、沢に入っていく。くるぶしくらいまで水につかりながら沢を歩く。かなりの冒険。
10分ほどで目的の場所へ。ちょっと霧がかり神秘的な滝が見える。島田さんがいなければ、行けないスポットを楽しむ。
唐滝(からたき)
「落差36m、八丈島最大級の滝があるんですよ(島田さん)」。『唐滝』と呼ばれるその滝は、森の中を歩くトレッキングコースの先にあるとのこと。するとドローン隊が「上空からその滝を狙いましょう!」と提案。トレッキングコースの途中から飛ばし、普段は見ることができない角度から狙う。木々に囲まれている道を上空から辿っていく。山を覆う深い森は秘境感満載! そしてパッと森が開けた場所に巨大な滝!
下から見る滝も迫力満点とのこと。トレッキングも楽しそうだ。
【八丈富士は今日も雨だった】
『八丈富士』は、文字通り富士山を思わせる円錐型の山。三原山と違い八丈富士には川がない。雨が降っても水を吸い込む岩質だからだそうだ。一つの噴火口でできているというところも三原山と違う点。できたのが数千年前とかなり新しい火山。
腰程度まで草が生える火口丘を、ぐるっとを巡る『お鉢巡り』が有名で、天気がよければ御蔵島あたりまで見える絶好の展望スポット…らしいのだが、山頂付近は帽子をかぶったように雲に覆われ風も強く、両側が崖になっている火口丘は危険ということで、お鉢巡りは断念。島田さんに伺うと「風が強いことが多いので、お鉢巡りはできればラッキー」くらいな気持ちでいた方がいいとのこと。
八丈富士の登山口までは、山を登っていくので車の方がいい。レンタカーの検討を。自転車はよほどの健脚じゃないと難しい。その後、登山口から1280段階段とお鉢巡りが待っているからねw
夕刻が近づくタイミング、雲がかかる山頂を恨めしく見ながらの下山途中、八丈小島横に太陽が沈みつつある展望スポット。ドローン隊は撮影の用意。お鉢巡りができなかったのは残念だが、こういう景色はうれしい。ビールおじさんはビールを開ける。
【八丈島は案内板がない?】
「八丈島は案内板や看板がない(見にくい)んですよ」と島田さん。その理由を聞くと「普段から風が強く、台風が直撃する場所なので、普通に案内板や看板を立ててもすぐ飛んでっちゃう」からとのこと。「車から見やすいように道に直角に立てると飛んでいくから、道に平行に立てないといけない。だからちょっと見にくいんです」。気にして見ていると納得。慣れていないと行き過ぎてしまう(低い位置に設置されている場合も)。ちょっと不便だが、これは仕方ない。島田さんというガイドがいなかったら、どうなっていたことやら…。
スポットによっては、その周辺集落が独自で作った、かわいらしい案内板が立っているところもある。和む。
【そんなわけで…】
かつて「東洋のハワイ」と呼ばれ、憧れの観光地だった八丈島。南国の花やヤシの木などの溢れる南国感、海も山も楽しめるアクティビティなど、リゾートと言ってもいい雰囲気はある。ただ、温泉や飲食店なども含めて、全体的に「観光客向け」というイメージは少なく、島民と一緒に利用しているという感じがある。それは、観光客を受けれていないという意味ではなく、撮影をしていると気軽に話しかけてくれたり、宿の方と飲み会が始まったりw、島民と観光客の距離が近く、「知り合いのところに遊びに来た」というような感じがするからのように思う。『島』か『アイランド』で言えば、『島』のイメージ(島かアイランドに関しては「利島編2」参照)。アイランド的な要素を多く持ちながらも、ここは島民の息遣いが感じられる『島』。
島田さんが「この島を体験してもらうには3日は欲しい」と言っていた。その感じは「半分だけわかる」。一方の山を回っただけでは、この島はもったいない。両方の山を巡って、やっと八丈島を体験したということだろう。今回の取材では、お鉢巡りができなかったので、我々の八丈島体験はまだ半分。さらにこの島には海という自然もある。「半分だけわかる」と言った理由はこれ。3日では足らない。
また八丈島に来る理由ができた。一体何日必要なんだろう…w
『海・山・川、三拍子揃った亜熱帯の島・八丈島』
八丈島の観光情報は「八丈島観光協会」Webサイトから。
次回「橘丸乗船レポートと『ほんとに行けないんだ青ヶ島w』」。
Nature Service 正会員 島事業リーダー
酒と音楽をこよなく愛する自由な情報設計者。島での楽しみ方は素潜り。綺麗な海を見ると潜りたくなって仕方ないらしい。潜った後のビールと、民宿のご飯が大好物。ビールおじさん。