【青ヶ島への道】
前回の渡航では残念ながら断念した、「絶海の孤島」「東京の秘境」と呼ばれる青ヶ島へのリベンジと意気込む取材班(前回の渡航断念についてはこちら)。
「死ぬまでに見るべき世界の絶景13」にも選ばれ、日本だけでなく世界から注目をされる島。実際に多くの外国人も訪れるそうだ。面積5.98㎢、人口160人ほどの、日本一人口が少ない小さな島(日本で最も人口の少ない地方自治体)。そんな小さな島なのに多くの人が「行ってみたい!」と思う。そう思わせる何かがこの島にはあるはず。この旅はそれが何かを確かめに行く旅でもあるのである(それくらいの意気込みw)。
「選ばれたものだけが行ける島」と言われるほど、この島に行くのは簡単ではない(前回身にしみたw)。
内地(いわゆる本土)から青ヶ島への直行便はない。八丈島を経由して、ヘリコプターか船で渡る。
周囲が断崖絶壁で海の波やうねりを直接受ける港には、船が着岸できないことが多く、欠航することは度々。就航率は50%程度。一週間以上船が出ないこともある。「出る」となっても条件付きとなるのことがほとんど(「出すことは出すけど、着岸できないかもしれないので覚悟してね」という条件)。宿の予約をする時に「船で行きます」というと、かなり心配される島。
「じゃあもう一つの交通手段であるヘリコプターを使えばいいじゃん」ということなのだが、こちらは客席は9席、1日1便。島民も利用する交通手段のため、予約はかなりの争奪戦。1ヶ月前から可能な予約は瞬殺のことも多い。
そんな青ヶ島への渡航。さて、今回、我々取材陣は選ばれるのか…。
【青ヶ島へ:ヘリコプター編】
結果からいうと「ヘリコプターで上陸しました」w
連絡船・あおがしま丸の取材をするため、行きか帰りのどちらかは船でと企画を進めたが、「『帰れない』方が『行けない』よりダメージがでかい」ということで、帰りのヘリコプターのみおさえて今回の渡航に臨んでいた(あおがしま丸は予約不要。というか出るか出ないかわからないので、予約できない)。
青ヶ島に渡る予定前日の八丈島。「海の状況を考えると船は難しいかも」という島の方からの情報。その日まで何日か出ていなかったそうだ。「またか…」と思いつつ、出なかった場合のことを検討している時、ヘリコプターの臨時便が出るとの情報(何日か船が出ないと出ることがあるらしい)。「おお、これだ!」ということで、取材班総出で予約にかかる。日頃の行いのおかげか、争奪戦の末なんとか人数分を確保! なんとか青ヶ島に渡れそうだと一安心。
とは言うものの、取材班のほとんどが初めてのヘリコプター。「滅多に乗れるもんじゃないから、いい経験だ」と思いながらも、さすがに緊張する。「青ヶ島に行ける!」という思いとのせめぎ合い。興奮と若干の緊張。そんな夜は更けていく。
翌朝、八丈島空港にあるヘリポート。搭乗手続きを終え、いざヘリコプターへ。いやあ、緊張する。
いよいよ離陸。ローターの音も大きくなる。ふわっと浮かび上がるように飛行開始。八丈島が離れていく。
「怖!」と思いながらも、景色はいい。もちろんシャッターは切る。青ヶ島までは20分程度の空の旅。白波の立つちょっとうねった海を眼下にヘリは進む。想像以上にスムーズ。
眼前に青ヶ島のシルエットが見えてきた時は、期待と安心でちょっと鳥肌が立つ。
島にぶつかった風にちょっと煽られた瞬間はヒヤッとしたが、そこは熟練のパイロット。難なくクリアして着陸。そんな初体験。20分くらいがちょうどいい(それ以上乗っているのは怖いw)。
さあ、来たぞ! 青ヶ島!
ヘリコプターの情報は「東邦航空株式会社」Webサイトから。
【断崖絶壁の坂だらけの島】
外から見た青ヶ島は、海から飛び出た断崖絶壁の島。その断崖が海に削られさらに険しくなっている。島に来るものを仁王立ちで拒むような、そんな印象もある。さて、どのような島なのだろうか。
青ヶ島の集落は島の北側、青ヶ島の写真などで有名なカルデラの外側で、緩やかな傾斜地に全島民が住んでいる。
「緩やか」とは言っても島の道はどこも急斜面。どの車も唸り声をあげて登っていく。自転車はよほどの健脚でなければ無理だろう(登れたとしてもかなりの体力を使う。取材中、島内で1台も見かけなかった)。歩くのも厳しいくらいだ。
そんな島なので我々取材班はレンタカーを借りて移動。小さい島ではあるが、島内をいろいろ回るのであれば、レンタカーをオススメしたい。かなりの傾斜になっている箇所も多いので、運転には注意が必要。道も狭いので、対向車とのすれ違いにも気を遣う。なかなかに運転技術が試される道。
細かくカーブを繰り返す道は、方向感覚を失わせる。気づくと向かっていた方向とは逆に進んでいたりする。我々取材班も道を覚えるまでは、どっちの方向に向かっているかがわからなくなり、何度か道を間違えた。地図は必ず手に入れておいた方がいい。それでも最初は迷うけどw(青ヶ島村Webサイト:マップ)
【島を一望するスポットへ】
まずは青ヶ島の全貌を見ようということで、尾山展望台に車を走らせる。『尾山展望台』は外輪山の高台にある展望台。青ヶ島は島の断崖絶壁を作っている外輪山の中に、『丸山』と呼ばれる内輪山を持つ、世界でも珍しい二重式火山(カルデラ)の島。外輪山の高台にあるこの展望台からは、そのカルデラ内部のダイナミックな自然の姿と、外側に広がる太平洋が一緒に楽しめる。
「この景色はすごい!」と取材班全員が見とれる景観。箱庭のようにも見える青ヶ島のカルデラ。かつては女人禁制の神聖な島だったらしいが、そのことがなんとなくだが伝わってくる。内部も切り立った断崖になっている外輪山の中に、聖壇のように存在する内輪山。こんな景色はほかにはない。見ておく価値のある景色だということがよくわかる(内輪山が「プリンだ」「カヌレだ」といった声も取材班から聞こえたがw)。
ふと振り向けば、外輪山の絶壁の向こうに広がる青い太平洋。天候がよければ八丈島まで見えるそうだが、ここが海に囲まれた絶海の孤島だということを知らされる風景。
こんなところで飲まないわけにはいかないでしょw
ドローン隊もこの絶景を収めようと撮影を開始。上空から狙った動画は近日公開予定!
【夜には星空スポットになる草原へ】
島の最北部「ジョウマン」と呼ばれるスポットへ向かう。車を進めると次第に何もなくなり草原が広がってくる。草原のすぐ向こうは崖だそうだが、ここからは見えない。周囲に街灯も何もない場所。ただ海からの強い風の音が聞こえる草原。
あ、牛がいた(放牧されている)。
今回は天候の都合で断念したが、星空でも有名な青ヶ島の絶好の観察スポットとのこと。天体ファンは要チェック(「星の方舟・青ヶ島」)。
【港へ】
「今日は船が着くらしい」との情報。本来乗船予定だったあおがしま丸。ヘリコプターで上陸したため、島から着岸と離岸を見られるチャンスと港へ向かう。
青ヶ島の港『青ヶ島(三宝)港』は、外輪山に通されたトンネルを抜け向かう。外輪山の外に出る唯一の道。
港は海に向かって桟橋が2本。湾などで囲まれていないので、外洋の波やうねりの影響を直接受ける。大きな波が当たっている場所もあり、これは欠航になるのもわかる。
そんな港には漁船を停泊しておくことができないので、船を持ち上げて陸にあげるクレーンが青ヶ島にはある。既に全部の船があげられていたので、その様子は見られなかったが、これも青ヶ島ならではの景色。
遠くにあおがしま丸が見えて来る。揺れる着岸をタイムラプスで。
青ヶ島 伊豆諸島開発「あおがしま丸」 from MPO Labs. on Vimeo.
かなり揺れる船に驚いていると、「今日はたいした波じゃない」と島の方。さらに「島から出たらもっと揺れるよ」とのこと。その意味は翌日知ることになる…。
【断崖絶壁、急斜面が作り出す景観の島・青ヶ島】
世界が憧れる景観を持つ青ヶ島。
世界的にも珍しいカルデラの景観は、神秘的で圧巻。
切り立った断崖と広がる海の景観は、力強く壮大。
どちらも魅力的な自然の景観を見せてくれる。
島の内側と外側、その共通点はやはり「断崖絶壁、急斜面」。
島の外の立ちふさがるような断崖絶壁はもちろん、外輪山の内部も切り立った崖になっていて、内輪山を包み込むように切り立っていることによって、箱庭のような独特の景観を作っている。
集落の急斜面な道は、厳しい環境にある青ヶ島の生活を特徴づけていて、来島者に印象的な姿を見せてくれる。
外も内も断崖絶壁。そして道も急斜面。厳しい自然は見事な景観を見せてくれる。
『断崖絶壁が作った、景観と生活が見られる島・青ヶ島』
取材中、「なんて男っぽい景観なんだ」という声が、取材班から何度も聞こえてきた。青ヶ島の自然から感じる男性的な印象。入ることを拒んでいるように見えた外の断崖が、「父」のように力強く中に住む人を守っているようにも見えたからかもしれない。
青ヶ島の情報は「青ヶ島村」Webサイトから。
青ヶ島への入り口、八丈島への船に関する情報やチケットの予約は、「東海汽船」Webサイトから。
次回「青ヶ島編2」。いよいよ青ヶ島の聖なるカルデラ内部に潜入!
Nature Service 正会員 島事業リーダー
酒と音楽をこよなく愛する自由な情報設計者。島での楽しみ方は素潜り。綺麗な海を見ると潜りたくなって仕方ないらしい。潜った後のビールと、民宿のご飯が大好物。ビールおじさん。