富士山には「八百八沢(はっぴゃくやさわ)」と言われるほどたくさんの沢が存在します。しかし、そのどれもが水が流れていない、いわゆる「水無川(みずなしがわ)」なのです。

その訳は、富士山の土壌は「スコリア」と呼ばれるたくさんの穴が開いた暗赤色の火山噴出物で覆われているため、雨水や雪解け水が地表に残らずすぐに地下に染み込んでしまうからなのです。

富士山のスコリア|筆者撮影

富士の中腹に現れる「まぼろしの川と滝」

しかしそんな富士山において、唯一、しかもある一時期だけ沢に水が流れることがあります。
それが「富士山 まぼろしの川」といわれる沢です。
そして、落差のある場所には「まぼろしの滝」が姿を現します。

まぼろしの滝|筆者撮影

なぜ川や滝ができるかと言えば、ここだけはスコリア質の土壌ではなく表面が岩盤状になっているため、水が地中に染み込みにくくなっているからなのです。

また、日によって現れる場所や様相を変えることや、一年の内のおよそ1ヶ月で姿を消してしまうことから、「まぼろし」という名がついたと言われています。

「まぼろしの川と滝」を見に行こう!

富士山の主要なルートは4つ存在しますが、その中の一つに静岡県側の「須走ルート」があります。
「まぼろしの川と滝」は、この須走ルートの玄関口、標高1,950ⅿにある須走登山口からそれほど遠くありません。

須走口|筆者撮影

例年、ゴールデンウィーク頃から登山シーズン前の6月中は登山口までマイカーで行くことができ、およそ200台停車できる無料駐車場も整備されていますので、比較的手軽に行くことができるのです。

(注意:登山シーズンはマイカー規制により一般車両の乗り入れはできません)

一番上方に位置する第3駐車場に車を止め、駐車場の南の方角(御殿場ルート方面)へ向かえば、そこからすぐに登山道が始まります。

登山道入り口|筆者撮影

はじめはアップダウンのあるカラマツの樹林帯の中を行きますが、それも束の間、すぐに視界が開けたトラバース道(水平移動の道)になります。
左に目をやれば、目の前には9つのピークを持つ愛鷹連山、遠くは箱根外輪山や伊豆半島、駿河湾や相模湾といった太平洋までも見渡せ、後ろを振り向けば山梨県にある富士五湖の一つ、山中湖の全容をも一望することができ、大変素晴らしい景色を堪能しながらのトレッキングが楽しめます。

トラバース道から覗く富士山頂|筆者撮影

そして歩き始めてからおよそ20分、かすかに水が流れる音が聞こえ始めた頃、目の前に雄大な富士が姿を現します。さらにトラバース道が富士山頂方向に向きを変える頃、とうとうその川を見つけることができました。

富士山まぼろしの川|筆者撮影

まぼろしの川と滝がみられる時期は?

この「富士山 まぼろしの川と滝」ですが、例年、富士の雪解けがすすむ5月中旬頃より6月中旬ごろまでのおよそ1ヶ月間だけ姿を現します。

このわずか1ヵ月ほどの短い期間の中でも、特に気温が高めの晴れた日、そして時間帯は午後に行かれるのがおススメです!
「雪解けがかなり進むため、そこにできる滝の規模も大きくなる」というわけです。

富士山の中腹に、春の訪れとともに現れる「まぼろしの川と滝」…

このあと川の水は下流に行くにしたがって水量が少なくなり、やがて富士の地中深くに消えてなくなってしまいますが、何十年もの歳月をかけ再び麓の湧水となって現れるのです。

一年の一時期しか現れない神秘的な「まぼろしの川と滝」を見に行ってみてはいかがでしょうか!

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