近年、以前にも増してアウトドア人気が高まっていますね。
「肝に銘じてほしい 自然のリスクと個々の責任」に引き続き、皆さまと一緒に自然のなかに存在するリスクと個々の責任について考えてみたいと思います。
今回は、アラスカの自然を知り尽くす、引退した登山レンジャー Daryl R. Miller 氏の「Survival is Your Own Responsibility」を参考にしましょう。
自己責任がルールだった
”一度は訪れたい地”としてアウトドア愛好家に挙げられることが多いアラスカ。手つかずの大自然が多く残る一方、自然環境は過酷で、私たち人間に優しいとは言い難い場所です。記事によるとアラスカでは、自然と関連する事故が毎年多数発生し、そのなかには熟練の登山家やバックパッカーも含まれるそうです。今でこそ趣味としてアウトドアを楽しむために多くの人がアラスカを訪れますが、百年前はサバイバルスキルを学ばない限り、決して生き残れる地ではありませんでした。
自然のなかを生き抜く当時のルールはシンプルながらも厳しく、「生き残れるかどうかは自分の責任。他の誰の責任でもない。」というもの。しかし、現代人である私たちが過去のこういった教えを学ぶ機会はほとんどなく、いつの間にか自然にリスクが潜んでいることを忘れ、最悪の場合命を落とす可能性でさえも、どこか遠くのことのように感じていることと思います。
文明の進化がもたらす装備依存
記事の中ではこんな指摘がされています。アラスカ在住者も含め、アラスカを訪れる人たちの多くは都市部で育ち、自然に対するスキルが不足しているそうです。そしてそれを穴埋めするためか、装備にますます依存し、自らの力で自然環境に対応しようとする能力が乏しくなっていると言われています。
テクノロジーの進化は旅を容易にし、より多くの人がアウトドアに携わる機会を与えてくれました。また、ほとんどすべての場所から救助を呼べるようになったことで、安心感を与えてくれているのも事実だと思います。しかし、それが災いして根拠のない自信につながり、スキル不足や経験不足が事故を引き起こしていることも否定できません。
今一度考えて欲しい
前述の「生き残れるかどうかは自分の責任。他の誰の責任でもない。」というルール。本来は、この単純明快なルールが、現在のアウトドアでも受け継がれるべきだと Daryl R. Miller 氏の記事を読んで思いました。
現代においては、よほどの危険を伴うアウトドアでない限り、「生き残れるかどうか」を考えた上で行動している人は少ないと思います。しかし、自然の本質は今も昔も変わらず、潜む危険は同じです。誰の責任でもなく自分の責任において行動することが求められ、それはアウトドアに関わるすべての人たちが心にとどめておくべきことではないでしょうか。
また、記事のなかでは、「救助に向かう者にもリスクが発生する。」「自然が自分に寄り添ってくれるだろうという考えは捨てるべき。」といったことも書かれており、自然の中で活動する人たちに向けての注意が促されていました。
前回に引き続き、自然に潜むリスクと自己の責任について考えてみましたが、皆さまはどのようにお感じになったでしょうか。アウトドアがますます楽しく活発になってきた今だからこそ、自身の考え方や行動を踏まえて、今一度考えてみてはいかがでしょうか?
《参考URL》
Survival is Your Own Responsibility|National Park Service
Daryl R. Miller(意訳:菊地薫)
Nature Serviceのウェブメディア NATURES. 副編集長。
自然が持つ癒やしの力を”なんとなく”ではなく”エビデンスベース”で発信し、読者の方に「そんな良い効果があるのなら自然の中へ入ろう!」と思ってもらえる情報をお届けしたいと考えています。休日はスコップ片手に花を愛でるのが趣味ですが、最近は庭に出ても視界いっぱいに雑草が広がり、こんなはずじゃなかったとつぶやくのが毎年恒例となっています。
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