以前、「アイスランドの自然は人生観を変えてしまうほど美しい」という記事で、アイスランドの自然の素晴らしさをご紹介したことがありました。
今回は、自然の宝庫であるアイスランドが直面する、観光産業からの収入と観光客による自然破壊問題を、「Iceland’s massive popularity with tourists has a gross downside」からご紹介したいと思います。
小さな国に溢れる自然
外務省のホームページによると、アイスランドの面積は「10.3万平方キロメートル(北海道よりやや大きい)」とあります。人口はおおよそ33万人に対し、年間に訪れる観光客は100万人だそうです。
ヨーロッパ最大級のラング氷河や多数の火山、さらには夏の白夜、冬のオーロラなど、自然好きにはたまらない要素が満載で、さまざまな興味を持つ者を満足させてくれる、まるで自然の宝石箱のような地なのです。
観光産業とその代償
観光業による収入は、アイスランドを潤しています。しかし一方で、その代償が大きいことも悩みの種となっています。旅行者たちはアイスランドの美しい景観を一目見ようとあちらこちらに足を延ばしますが、故意/過失に関わらず、かけがえのない自然を危険にさらす行為が頻発しているようです。
以前は人もまばらであったグトルフォスの滝やシンクヴェトリル国立公園(世界遺産)も、今では有数の観光地となり、多数の観光バスや観光客のレンタカーでごった返しています。
アイスランド各地で、立ち入り禁止区域を越えて保護区域を踏みつけ、ゴミをまき散らすといった事態が発生し、さらには屋外で用を足すものまで現れているそうです。これでは自然景観を楽しむどころか、単なる自然破壊となってしまっています。
禁止されているオフロードドライブも問題の1つです。過去には、ランドマンナロイガルというアイスランド有数の景勝地を、観光客が四駆で円を描くように走行し、タイヤ痕がはっきりと残るほどの被害をもたらしたこともあったようです。
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インフラ整備の必要性
ただし、こういった行為は、観光客のモラルだけの問題ではないようです。アイスランドのガイドたちによれば、インフラ整備の遅れが、さまざまな問題を引き起こす一端となっているそうです。
公共トイレやパーキングエリアの増設、看板や標識の整備、といったところから早急に手をつけなければ、観光業によって国が受けるダメージはひどく、観光客の数を制限すべきという意見さえ、現実味を帯びる可能性も捨てきれません。
また、もう一つ、アイスランドを悩ませているのが、捜索・救助活動の増加。捜索・救助活動は、驚くべきことに政府主体ではなく、寄付をもとにしたボランティアが活動にあたっています。
観光客が借りるコンパクトカーでは、アイスランドの雪、風、氷には対応できませんが、事前の情報収集不足、さらには看板や標識が少ないことも相まり、事故や水辺での立ち往生など、さまざまなトラブルが後を絶たないようです。
2014年の7月と8月には、この間だけで、なんと4千人に対して何らかの支援を行う必要があったそうですから、「観光客の安全」と「環境保全」の両者を維持するために、インフラ設備の整備が急がれます。
ところで、アイスランドの自然ってどんな感じなの?と思った方は、ぜひこちらの写真をご覧になってください。世界中の自然愛好家がこぞって行く理由がわかりますよ!
いつかアイスランドに行ってみたい、そんな夢を抱いている人のためにも、美しい姿を保ち続けていてもらいたいものですね!
《参考URL》
Iceland’s massive popularity with tourists has a gross downside|Quartz
Jenna Gottlieb(意訳:菊地薫)
Nature Serviceのウェブメディア NATURES. 副編集長。
自然が持つ癒やしの力を”なんとなく”ではなく”エビデンスベース”で発信し、読者の方に「そんな良い効果があるのなら自然の中へ入ろう!」と思ってもらえる情報をお届けしたいと考えています。休日はスコップ片手に花を愛でるのが趣味ですが、最近は庭に出ても視界いっぱいに雑草が広がり、こんなはずじゃなかったとつぶやくのが毎年恒例となっています。