【島はやっぱり夏?】
「都心からすぐ近くなのに、伊豆諸島の島は海が綺麗! 行くならやっぱり夏だよね!」と多くの方が思うのは、確かにその通り。伊豆諸島の島々の綺麗な海は、やっぱり夏に楽しみたいということで、夏のトップシーズンには多くの観光客が島を訪れて、目一杯楽しむ姿が見られる。
そんな夏も終わり、秋へと季節は移っていく。こればかりは待ってくれない。「また島に行くのは来年の夏だなあ」と思うのもよくわかる。でも実は秋の島も侮れない! ちょっと涼しくなって、いろいろな島のスポットを巡るのも楽になるこれからの季節、暑い夏の賑やかな島もいいが、ちょっと静かになった秋の島を、のんびり楽しんでみては?
【旅のキーワードは「水」!】
今回はそんな秋の島を紹介しようと『八丈島』へ。
伊豆諸島の島々は水の確保に苦労をしてきた。現在でもそのためにいろいろ工夫をしている。そんな伊豆諸島の中でも、水に比較的恵まれているのが八丈島。「伊豆諸島の水をどのように配分するか?」を決めたと言われる神津島に残る神話では、八丈島は神津島、新島に続いて3番目に水に恵まれたとされる(『水配り伝説』)。事実湧き水も多く、川や滝まである。そんな水と縁の深い八丈島の旅ということで、今回のキーワードは「水」に決定!
そんなわけで、水を探しに秋の八丈島旅スタート!
【まずは川のスポットへ】
八丈島は伊豆諸島では珍しく川のある島。まずはと「川」のスポットへ向かう。伊豆大島に続き伊豆諸島で2番目に大きい島ということで、オススメの移動手段はレンタカー。あらかじめ予約をしておこう。
八丈島は2つの山が連なっているひょうたん型の島だが、川があるのは「東山」と呼ばれる『三原山』。10万年の歴史があり、深い森に包まれた山だ。三原山を目指して、八丈島一周道路を進む。
龍が登っているように見えるという『登龍峠』を上がっていく。曲がりくねったきつめの坂。登りきった先には、港を見下ろせる展望台がある。ここからの景色は『新東京百景』に選ばれている絶景ポイント。眼下に広がる海という「水」。
ポットホール
展望台から一周道路をしばらく行くと、山の中に入っていく道が現れる。
ちょっと荒れた道なので気をつけて進む。その進んだ先にあるのが『ポットホール』。ポットホールとは、雨水と小石によって岩盤が削られた甌穴(おうけつ)群のこと。島内にはこのポットホールが800以上もあるんだとか。何万年もの長い年月をかけて、穴を作ってきた「水」の流れ。ここでしか見られない景色。
裏見ヶ滝
一周道路に戻り、次に向かったスポットは『裏見ヶ滝』。滝の裏側を通れるというこのスポットは、珍しい景観ということで、多くの観光客が訪れる。森の中の遊歩道は整備されているが、周りはジャングルのような森に囲まれている。10分ほどで落差20mほどの滝が見えて来る。濡れずに裏を通るのは難しいほどの水量が落ちてくる滝。「水」を直接感じることのできるスポット。
どちらのスポットも足場が濡れていて滑りやすい。足元には注意を。
他にも三原山の山には、落差36m、八丈島最大級の滝『唐滝』や、沢を登っていくスポットなどもある。ガイドが必要な場所も多いので、詳細は取材班もお世話になった、八丈島の山のスペシャリスト『山小屋』さんにご相談を。
[ コラム ] 500mごとに現れる目印
八丈島の周囲を巡る『八丈島一周道路』。八丈島観光には欠かせない道だが、走っていると定期的に数字が刻み込まれた石が立っている。これは「道路地点標」で、500mごとに立っているそうだ。観光案内所などでもらえる「八丈島観光地図」には、「何番がどこか」ということが書かれているので、自分がどこにいるのかがわかったり、目指すスポットへの目印になる便利な道標。
【温泉へ】
三原山の周囲には、いくつか温泉施設がある。
まずは海を見ながら入れる無料の足湯『足湯きらめき』へ。広大なきらめく海という「水」を見ながら、足湯という「水」に浸かる、なんとも贅沢な時間。
もちろん全身ゆったり浸かれる温泉施設もある。その中でも、景色が抜群の露天風呂がある『みはらしの湯』がオススメ。取材時は曇りだったが、晴れていればかなりの絶景が楽しめる。運が良ければクジラが見られることがあるのだとか。奇数偶数で男湯女湯が入れ替わるので、露天風呂に入りたい場合は事前にチェック(片方に露天風呂がある)。
八丈島にはこの2箇所も合わせて、7箇所も温泉がある。料金も手頃なので、温泉のハシゴもできる。温泉という「水」に恵まれた島だ。
【海の幸】
水のスポットを巡り、温泉に浸かったら、次は食事。伊豆諸島は言うまでもなく魚の宝庫。お刺身はもちろん、煮たり焼いたり、季節ごとに違う魚が楽しめるが、八丈島で紹介したいのは『島寿司』。主に白身魚を醤油ベースのたれでヅケにして、わさびの代わりに練りがらしを使うのが特徴。高温多湿で風が強く、雨が多い八丈島で発達した、寿司を食べるために独自の技法で作られる。八丈島に行ったらぜひいただきたい、海という「水」からの恵み。
[ コラム ] いろいろな島のいろいろな島寿司
島寿司は八丈島だけでなく、伊豆諸島の各島や小笠原諸島、八丈島からの移民の多い沖縄の大東諸島などでも、島の味として食べられている。環境の違いから各島で独自に変化し、小笠原ではサワラを使うのが一般的だったり、大東諸島ではからしではなくわさびが使われている。伊豆諸島北部の伊豆大島では、青唐辛子を加えた漬けダレを使うといった違いも。ネタの違いだけでなく、島ごとに違う島寿司の食べ比べも楽しい。
【焼酎】
さて、最後の「水」はやっぱり『焼酎』! 水が豊かな八丈島には、焼酎を酒造している工場が5箇所ほどあり、麦・芋・ブレンドと種類も豊富。ぜひ、島寿司と合わせていただきたい。八丈島の焼酎の歴史は、流罪となった薩摩出身の丹宗庄右衛門爺から伝わった。実は、本格焼酎の製造免許は九州以外では伊豆七島だけが持っているそうだ。ここだけでしか味わえない味を、ぜひ島で!
これからの季節は気候もよく、のんびり島を回るのにはいい時期。今回は「水」をキーワードに回ったが、上記の他にもいろいろ見どころが多い島。レンタカーを走らせて、いろいろ巡ってみてはいかがだろうか。
八丈島に関する情報は、『八丈島観光協会』Webサイトから。
八丈島への旅は船が楽しい! 夜出発の船で出港。レインボーブリッジをくぐる東京湾のナイトクルーズを楽しんで、翌朝起きたら島に到着。そんなのんびりした船旅はいかが? 船に関する詳しい情報や、予約は『東海汽船』Webサイトから!
Nature Service 正会員 島事業リーダー
酒と音楽をこよなく愛する自由な情報設計者。島での楽しみ方は素潜り。綺麗な海を見ると潜りたくなって仕方ないらしい。潜った後のビールと、民宿のご飯が大好物。ビールおじさん。