エコツーリズムの先進地といわれているニュージーランドは、南島のミルフォード・トラックに人気が集中していますが、北島にも驚くほどの魅力的な自然がたくさんあります。そこで2018年3月に出かけた、オークランドからフェリーで1時間ほどのティリティリマタンギ島、ランギトト島、ワイへキ島の魅力についてご紹介します。今回は前編として、野鳥の聖地であるティリティリマタンギ島です。
飛べない鳥の楽園、ニュージーランドの謎
ニュージーランドには、絶滅危惧種のキーウィやカカポ、タカヘなどの「飛べない鳥」を始めとする固有種が数多く生息しています。テレビなどでその存在は聞いていましたが、なぜ飛べない鳥がニュージーランドにたくさんいるのでしょうか?
日本国内でその謎は解明できませんでした。しかしティリティリマタンギ島出発前に出かけたオークランド博物館で、意外な事実が明らかになったのです。
ニュージーランドのベースは、8番目の大陸だったジーランディア
「飛べない」=「天敵がいない」。ではなぜ天敵がいなかったのか?それは地形と密接な関係がありました。
ニュージーランドは太古、巨大大陸のゴンドワナ大陸から分裂した「ジーランディア」(ニュージーランドの語源)と呼ばれる8番目の大陸の名残ではないかという説です。海水面が上昇して孤立し、さらに火山により形成された大きな離島だというのです。
離島のために哺乳類は移入できませんでしたが、もともと翼のあったキーウィなどの鳥は、オーストラリアなどからニュージーランドに飛来することができました。そして留鳥となって翼が退化しました。
テレビで観た飛べない鳥たちは、「足が太い!」「身体も丸っこい!」。そう、飛べない鳥は歩いてエサを探さなければなりません。太めの身体を支えるためには、立派な足が必要なのでしょう。ヨッタヨッタと歩く姿は、ユーモラスで愛らしく見えます。
野生のキーウィは、山奥で夜じゅう見張っていない限り観られないようですが、タカヘは野鳥の楽園であるティリティリマタンギ島で観られるとのことで、とても楽しみでした。
ガイドツアーで自然の営みについて学ぶ
オークランドシティからフェリーで75分のティリティリマタンギ島。羊と牛の放牧地にするためにほとんどの原生林を伐採して開発された離島です。しかし1980年代以降は自然環境保護省とボランティアによって、本島で絶滅の危機にある野鳥の回復を目的に、30万本以上の樹木が植栽されました。現在も厳重に管理をしながら一般公開をし、自然保護プログラムについてインタープリテーション(参加者の五感に訴えかける自然解説)を行っています。
島の見学方法は、自由見学とボランティアガイドツアー(予約)があります。筆者はガイドツアーに参加しました。ガイドツアーのコースはショートとロングがあり、島の半分近くを2時間半かけて歩くロングコースを選択。1,000円ほどの代金は乗船前のフェリーチケット購入時に支払います。
ガイドツアーでは、野鳥を通して人間による自然の破壊と回復による自然の営み、生態系について学びます。島にはさまざまな野鳥がいました。目撃できたのは、スティッチバード、サドルバック、カカ、カカリキ、ピジョン、ファンティルなど。すべてを近くで観察はできませんでしたが、まさに野鳥の楽園。茂みの中から麗しい声、にぎやかな声、いろいろな鳴き声が聞こえてきました。これらは「飛べる」鳥ですが、やはり多くは森林破壊、沼地の埋め立てなどの生息地の環境変化により、絶滅の危機に瀕している種類です。
大陸時代時代の生き残り、トゥアタラ
そして現地で知って驚いたことがあります。大陸時代から生き続けているというムカシトカゲ、現地名で「トゥアタラ」が生息しているというのです。トゥアタラは夜行性のため観察できませんでしたが、湿地帯にうっそうと茂る生息地をしっかり観てきました。爬虫類好きではありませんが、ジーランディアから続く命の営みがまさにこの場所で……と考えただけで、興奮を隠せませんでした。
肝心のタカヘですが、出合えるはずの場所にはいませんでした。残念でしたが、熱心なボランティアさんのガイドツアーは、非常に素晴らしい思い出となりました。
自然はもちろん大切ですが、経済活動も大切です。人間と自然の共生について考えさせられるティリティリマタンギ島。ニュージーランドがエコツーリズムの先進地と言われていることに納得しました。オークランドまで行ったら、おすすめの離島です。
ちょっと元気がなくなったときにはひとり夏山に登ってパワーをもらっています。さまざまな地形を観、どうやって出来たのかを想像するうちにワクワクしてきて「また頑張ろう!」と思えます。そんな気持ちを皆さんとシェアできることを楽しみにしています。