昨今の公共施設の管理運営は、人件費や物価の上昇、施設の老朽化などにより運営費が増大し、マネジメントを請け負う指定管理者が苦境に立たされています。このような現状を打破すべく私たちNature Serviceは、現代の課題に対応する新たな経営思想『事業再生型指定管理「Uplift」』を提唱いたします。

公共施設管理運営の実情

現在の公共施設の多くは、2003年に地方自治法が改正され指定管理者制度が導入されて以降、各自治体でノウハウのある民間事業者に、積極的に管理を任せてきました。例えば、美術館や博物館、道の駅、公園など、指定管理者制度を導入して管理している公共施設は、わたしたちの身の回りに溢れています。しかし、指定管理者制度が導入されてから20年経った今、指定管理者は現地で悲鳴をあげています。

要因として、昨今の物価上昇による資材や原価高の高騰、人件費の高騰、労働衛生関連法の改定に伴う就業環境整備費用の高騰、光熱費の高騰、施設老朽化に伴う修繕費の増加が挙げられます。また、これらに対する行政側の措置が追いついておらず、指定管理料の増額や施設の一時利用停止などが十分になされていないことも問題視されています。

本当に必要とされている公共施設の管理運営手法とは

上記でみてきたように、数十年前に作った公共施設、いわゆる”箱物”の維持管理費が年々膨張し、現地では指定管理者が苦慮しており、各地方行政においても財政を圧迫しています。

本当にこのまま従来どおりの管理運営手法を続けててもいいのでしょうか?今はなんとか耐えていても、従来の手法を維持している限り”持続可能性”があるとは言えず、数年〜数十年後には、各指定管理者の事業破綻や撤退となり、さらに税金を投じて自治体による直接管理(直営)となる事も考えられます。本当に必要されている管理運営手法とは、”持続可能な”管理運営手法だと考えます。

したがって、赤字が続いているにも関わらず、従来の方法を無理して維持していくことは得策ではなく、今こそ「行政・事業者・地域」の三方良しの「持続可能な管理運営手法」に移行するべきではないでしょうか。

新たな経営思想:『事業再生型指定管理「Uplift」』の導入

そこでNature Service が導入する新たなコンセプトが『事業再生型指定管理「Uplift」』です。これは、現状維持による事業破綻を根本的に見直すため、大幅なコスト削減や収入(主に利用料など)を見直し、必要に応じて条例の改定の提案やDX対応を積極的に行い、IoT・ロボットやAI導入など、時代に即した経営モデルに刷新する運営方針です。

人口減少や経済の成熟段階を受け入れ、とにかく事業成長(経済、利用者数、収入が右肩上がりの状態)を前提とした楽観的なシナリオを描かず、現実的で着実なシナリオに基づき事業再生を行います。結果的に指定管理料を下げていくことを目指し、施設の持続可能性を高め、地域住民や関わる人々を前向き(Uplift)に変えていきます。

つまり、「Uplift」は、時代に即したIT技術を最大限利用したコスト削減や収入改善、さらには必要に応じた法的な変更の提案により、地域の公共施設運営を効果的に再生させる経営思想です。「公共事業の再生」をする上で、新たな方向性を示すものであり、市民生活の質を向上する一方、恒久的な財政負担の軽減も見込むことができます。

事業再生への視点転換

「Uplift」では「現状維持」を「事業再生」へと視点転換することを提案しています。「根本的な事業再生」を掲げることにより、大胆に必要な場所に必要なリソースを集中させることが可能になります。これによってデジタル化や自治体の負担軽減など、より質の高い公共サービスを提供することができるようになるのです。

事業再生により住民の利便性を損なっている?

「事業縮小(サービスを削る)・事業再生なんて住民として反対だ!」という声が出てくるかもしれません。「住民としての直感的な反感」だけでなく、「自身が利用しているサービスが失われるかもしれない」という不安が含まれているからです。

しかし、「Uplift」は「地方自治体の財政負担を下げる」という大きな目的に向けて、現状の課題を改善し、施設に設定された本来の目的に沿ってより多くの市民にとって有益な公共施設を継続的に提供するための新たな運営モデルを提案していきます。長期的な視点で、持続可能な行政サービスを提供し続けるための節目を作り、さまざまな利害関係者とのバランスを取り直す役割もあります。

まとめ

公共施設の管理運営について考える際、赤字が続き厳しさを増している地方財政の問題から目を背けることはできません。「行政・事業者・地域」三方良しの「持続可能な管理運営手法」への移行が必要であり、その解決策として新たなコンセプト『事業再生型指定管理「Uplift」』を説明しました。

「Uplift」は、「現状維持」から「事業再生」への視点転換を提案し、デジタル化や自治体負担軽減による質の高い公共サービス提供を目指します。このような新たな管理運営手法への転換が、地方自治体の財政状況改善、そして市民生活の質向上につながると考えられます。

最終的には、市民一人ひとりが感じる「地域の魅力」や「生活の質」がUplift(向上)することを期待しています。

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