SDGs、ネイチャーポジティブ…ここ数年だけでも、このような言葉を耳にすることが格段に多くなりました。
お子さんにも環境や自然に関して教えてあげたい、と思いつつ都市部に住んでいるとなかなか難しいと感じている親御さんも少なくはないのではないでしょうか。
今回は、様々な自治体が紹介しているコンポストの作り方などを参考に、その仕組みについてもご紹介します。
夏休みの自由研究やご自宅での環境教育に、ぜひお役立てくださいね。
コンポストとは?
コンポストとは、家庭から出る生ごみや落ち葉などの有機物を微生物の働きによって発酵・分解させ、堆肥化する仕組みや、そのための入れ物のことを指します。
主な特徴として、
- 有機廃棄物を有用な堆肥に変換する
- 環境に優しい廃棄物処理方法
- 家庭菜園や園芸に活用できる肥料を生成
- ごみの量を減らし、循環型社会の構築に貢献
等があります。
コンポスト自体は日本でも昔から利用されてきた知恵の一つですが、近年環境問題への関心の高まりとともに再注目されています。
なぜコンポストが注目されているのか
コンポストの利用は、私達が食べた食品の一部でもある生ごみなどを、微生物が持つ分解の力を利用して土に戻し、その栄養がまた新しく育つ植物や動物へ還元されていく、自然のサイクルをとりいれたライフスタイルです。
一般的に、燃えるゴミとして収集に出された生ごみは、回収された後清掃工場において焼却処理され、埋め立てられます。
参考:一般社団法人産業環境管理協会
生ごみを焼却せずにコンポストで処理することで、
- 焼却時に排出されるCO2量の削減
- できた堆肥を庭や畑で再利用できる
- ごみの量が減ってごみ袋の利用を削減(プラ利用も削減)できる
等のメリットがあります。
このことから環境に優しいごみ処理方法として注目を集めているんですね。
ごみを処理してくれる微生物ってどんな生き物?
「微生物がごみを処理してくれてとってもエコ!」とはいいますが、じゃあその微生物ってどんな存在なの?と気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
目には見えない微生物、彼らはどんな生き物なのでしょう?
「微生物」と呼ばれる生き物に明確な定義は有りませんが、一般的には目に見えない小さな生き物のことを指します。
普段からその存在を実感することは少ないですが、ヒトの皮膚の表面にも1平方センチあたり 10 万個以上の微生物が付着している、とも言われています。
参考:東北大学大学院農学研究科先端農学センター コンポスト(堆肥)の中の微生物たち
人間は、食物や水分、酸素を材料に体の中で化学反応を起こし、それをエネルギーに変えて生命を維持しています。
微生物の細胞内でも私達と同じ様に、外部から摂取した物質を材料に化学反応による有機物の分解や吸収が行われ、生命を維持しています。
私達人間と微生物が違うのは、微生物は人間と比べ「たくさんの種類の物質を」「ずっと細かく分解」できるところです。
つまり微生物たちも、人間と同じで外から摂取したものをエネルギーに変えて、排出して生きていますが、その過程で、また大きな生き物が栄養として利用できるような物質になるまで変化させてくれているんですね。
参考:独立行政法人製品評価技術基盤機構 分解者としての微生物
コンポストの中で何が起きている?
では微生物についてわかったところで、コンポストの中でなにが起こっているのか、覗いてみましょう。
自然界における物質の分解は大きく分けて3段階に分かれています。前の説明の通り微生物はたくさんの種類の物質を分解することができますが、それは1つの微生物がすべて対応できるわけではありません。
微生物にもたくさんの種類がいて、それぞれの段階で専門家になる微生物がいると考えるとわかりやすいかもしれませんね。
第1段階:
残飯のように消化・吸収しやすいもの (炭水化物・タンパク質・脂質など) を分解します。分解の対象は人が消化吸収できるものとイメージすると分かりやすいと思います。
ここで活躍する微生物として代表的なのが、馴染の深い乳酸菌(ヨーグルト)、酵母菌(ドライイースト)などです。
コンポストを作るときは、身近な発酵食品に使われる微生物を利用すると、悪臭を感じにくくなる等のメリットもあります。
第2段階:
植物の繊維を分解します。先述の通り、人間には分解することができないもの、例えば植物の繊維(セルロース)もここで活躍する微生物なら分解することができます。
森の中で、落ち葉の下の土がふかふかになっているのに気がついたことがありませんか?
これももともと落ち葉だったのを微生物が分解して土になったものです。
落ち葉をめくると白いかたまりがあることがありますが、これが放線菌と言われるこの段階での分解者の正体です。
第3段階:
家庭の生ごみで含まれることは少ないですが、自然の中では第3段階で植物のリグニンを分解します。リグニンは植物の硬い成分で、木が硬くてしっかりしているのはリグニンが多いため。
ここでの特徴的な菌は担子菌(キノコ)です。
きのこが生えている木が脆いのは、リグニンが分解されている証拠です。
コンポストでは、このようにして分解がすすみ、生ごみなどが自然へ帰っていきます。
先の説明の通り、1 種類の微生物だけではコンポストづくりは完結しません。
各段階に応じて、専門家となる微生物に変化が生じるため、必要な微生物を揃えてスムーズな分解をサポートしましょう。
参考:北九州国際技術協力協会 第 4 章 コンポスト化技術の基本理論 重要項目
コンポストを作ってみよう!
仕組みがわかったところで、早速コンポストを作ってみましょう。
畑などにセットするものやコンポストバッグ、ダンボールコンポストなどいろいろな種類がありますが、今回は段ボールでできる方法をご紹介します。
必要なもの:
- 段ボール
- 補強用段ボール(下に敷きます)
- ピートモス
- くん炭
- すのこや角材などコンポストを置く台
あればより良いもの:
- 米ぬか
- 腐葉土
- カバー(虫の侵入防止)
作成手順:
- 段ボールの底をガムテープで塞ぎます
- 底に補強用の段ボールを敷いて2重にします
- ピートモスとくん炭を3:2の割合で箱に入れ、よく混ぜます
使い方:
- 基材の中心に穴を堀り、掘った穴に生ごみを投入します。
- 投入した生ごみと基材がよく混ざるように全体をかき混ぜます。基材の表面に生ごみが出ないようにします。
- かき混ぜ終わったら蓋をしめます。あれば防虫カバーをかぶせます。
- 空気を取り込むため毎日(生ごみを投入しない日も)、全体をよくかき混ぜてください。
*みかん箱ほどの大きさで作った場合、1日の投入量は、500グラムを目安としてください。約3ヶ月投入できます。
注意点:
- 油っぽいものは入れないようにしましょう。
- 悪臭の原因になりますので、水気はよく切ってから入れてください
- 角材やすのこの上において、風通しの良いところで保管しましょう
- 骨、卵の殻、玉ねぎの皮、トウモロコシ(皮・芯)は分解にかなりの時間がかかるため入れないことをおすすめします。
貝類(殻)は分解されないので入れてはいけません。
参考:むつ市 ダンボールコンポストで生ごみの堆肥化を!
筑紫野市 生ごみを自家製肥料に!ダンボールコンポストを始めてみませんか?
最後に
エコなごみ処理のコンポスト。生き物の力を借りながら暮らす昔ながらの素敵な知恵です。
おうちのベランダでも堆肥を作って、家庭菜園やプランターでのガーデニングに有効活用することができます。
お子さんと一緒に作ってみながら、食べたものがどうなっていくのか、ごみがどうやって処理されていくのか、そんなお話をしてみてはいかがでしょうか。
私たちNature Serviceが管理・運営しているキャンプ場でも、段ボールを利用したコンポストづくりを体験できるキッズプログラムを実施しています。
作ったコンポストもお持ち帰りいただけますので、ぜひこちらもご覧ください。
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