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キャンプ場のインバウンド対策の可能性

コロナ禍を経て、日本ではインバウンド観光客が急増しています。しかし、多くのキャンプ場ではインバウンド対応が進んでおらず、その恩恵を十分に受けられていません。キャンプ場のインバウンド戦略を見直し、今後の成長市場を取り込むことが重要です。

日本のGDPに占める観光収入は2019年で2.0%、G7の平均は4.0%と伸び代があります*。日本の観光産業は成長余地が大きく、特にキャンプ場インバウンド市場は未開拓の部分が多いということです

日本国内だと人口は1億人強のマーケットですが、海外旅行をする世界の人口は2019年時点でなんと15億人*、つまり、インバウンド向けの対応をするだけで、今の15倍の潜在的なお客様を抱えることができます。

特に、インバウンド向けを誘致するメリットは、

  • 口コミで良いレビューを書いてくれる傾向がある(日本人は割と辛口)
  • 平日の予約を埋めてもらうことができる
  • せっかくの海外旅行なので、お金を多く落としてくれる可能性が高い

の3つです。

他業界では、上記利点から完全にインバウンドに振り切っているホテルもあり、成功を収めています。

この記事では、キャンプ場の経営者やアウトドア関連事業の従事者が、インバウンド向けの対策を始められるようになることを目的としており、日本が観光立国として自立していく重要な役割を、アウトドアでも担いたい、と考えて書いています。


キャンプ場インバウンド対策の第一歩:受け入れる心構え

まず最初に、キャンプ場インバウンド対策を行う上で最も重要なのは、外国からのお客様を受け入れる心構えです。

少し考えてみて下さい、明日から急にコミュニケーションのハードルがあるお客様が来て、明確に、異なる文化やバックグラウンドを持っているお客様です。また、どのような行動をされるか、いつも使ってくれてる日本のお客様からしても、予想がつかない可能性があります。

もちろんこれは、最悪のケースの想定ですので、ある程度、場所を整えることで、リスクをコントロールすることは可能です。

そこで、改めて問います。

これは、大きな方針転換になる選択です。でも、異なる文化や言語を持つ観光客が訪れることを前提に、柔軟な対応ができるように心がけることは、あなたの施設の強い魅力の一つになりますし、今の社会がいつか必ず向かっていく方向で、今始めればまだ間に合います。

OKですね。

では、あなたの施設やスタッフは、外国からのお客様を喜んでお迎えする気持ちがある、という前提で、以下具体的なステップに移ります。

キャンプ場インバウンド対策:言語対応の基本

日本語以外の言語、つまり、英語、中国語、韓国語などの外国語対応を行なっていくことです。ベストな対応は、スタッフの研修を実施するか、外国人スタッフを雇用することですが、一足飛びすぎます。

だってそんな人、周りにそうそういないではないですか。

将来、サービスを改善するためには必要なステップかもしれませんが、ここではベター、つまりそこそこを目指し、今すぐにできそうなこと、からやっていきましょう。

キャンプ場インバウンド対策:現場での外国語化

コミュニケーションを取る

例えば、翻訳アプリを利用したコミュニケーションをやってみてください。翻訳アプリを活用して、拙くても言葉の壁を乗り越えたコミュニケーションをしてみましょう。

あなたがコミュニケーションを取ろうとしてくれている、そういう安心感をお客様に与えることが大切です。よく考えてみてください、そもそも異国の地でキャンプをしようという(今は)奇特な方です、日本人の大半が日本語しか話せないのは知っています。そこで流暢な外国語を話す必要はないんです。

あなたが海外旅行をして、拙い日本語で説明を受けて、怒ることはあるでしょうか?逆に、とても嬉しく感じますよね。それで大丈夫なんです。

場内の案内・看板の多言語対応

キャンプ場内の案内や看板も、英語や中国語、韓国語などの外国語に対応させることで、お客様が迷わずに利用できます。ただ全て別の言語が並んでいると、それはそれで景観を損ねたりしますよね。そう言う時は、記号やピクトグラムを目立つように変えてみましょう。

ユニバーサルデザインというもので、日本語だけで表記しているところを入れ替えるだけでも構いません。今一度見渡してみましょう。

手元の案内や場内説明の多言語化

もしお客様に配っているものがあれば、同じデザインにする必要はないので、外国の方向けに翻訳をして、用意しましょう。デザインデータから文章をコピー&ペーストして、Google翻訳でもDeepLでもいいので、特定の言語に翻訳をしましょう。

おそらく、英語、中国語繁体語、中国語簡体語、韓国語、強いていうならスペイン語、を用意できれば、大半の人をカバーできます。大事なのは、完璧を目指さないこと、できる範囲で構いません。

誰か、指摘する人が出てきたら、教えてもらい、修正すれば大丈夫です。

日本ではあまり馴染みがないのですが、機械翻訳が理由でWebサイトを離脱する人は少ない、という調査があります。余力が出てきたり、専門の方が現れた段階で、徐々にブラッシュアップしていきましょう。

キャンプ場インバウンド対策:集客面での外国語化

現場側の準備はこれでできたと思います。ここからは、お客様が来る手前の、集客や販促をどう行うか、になります。

ウェブサイトの多言語対応

自社のウェブサイトを英語や中国語、韓国語などに対応させましょう、情報が伝わりやすくなります。

ただ、ご自身でできない場合は、コストがかかる対応になります。

最近では、ブラウザで自動的に翻訳をしてくれる機能も出てきていますので、その場合は、テキストがちゃんと選択できるわかりやすい文章やレイアウト、サイトにすることや、写真を増やすなど、文字情報以外にもイメージできるものを増やしましょう。画像などに入り込んでいるものは自動翻訳では翻訳されない可能性がありますので要注意です。

理想的には、各言語向けに、別ページを作ることではありますが、今から始めるあなたの外国語ページに人が飛んでくるにはまだ少し時間がかかりますので、後回しでいいでしょう。

OTAへの登録

残念ながら、日本のキャンプ場に特化している各種予約サービスは、まだ多言語化対応ができていません。

そこで、キャンプ場のインバウンド集客の拡大には、Booking.comAgodaExpediaなどのOTA(オンライン旅行代理店)への登録が重要です。特に、外国人観光客は日本のローカルな予約サイトよりも国際的なプラットフォームを利用する傾向が強いため、OTAを活用することで海外市場へアプローチしやすくなります。

問題は予約枠の管理になりますが、これは、例えば、あなたが外国の方に来て欲しい日だけ、枠を開放し、普段使っている予約システムの枠を一部減らしておく、という対応を行えば、対処できます。

例えば、日本の夏休みや大型連休は、もしかしたら、いつも使っているサービスだけで十分かもしれません。そういう意味では閑散期の平日だけ、例えば5サイトだけ外国の方向けに開放して様子を見る、なども一手ですし、あるいは、海外旅行は国内旅行よりも前から計画する傾向があるので、1ヶ月前に予約を打ち切る、なども一つの方策です。

もちろん、ポリシーに反しない限り、一般予約との価格差もつけてかまわないと思います。為替の問題で、日々変動しますし、ある意味で日本に住む人たちが感じるよりも、高い付加価値を感じてくれる可能性が高いからです。

外国人観光客向けの情報提供

同時に、近隣の観光名所や食事、交通などの情報を提供し、外国人観光客が快適に過ごせるようにサポートしましょう。キャンプにいらっしゃるお客様も様々で、周囲にアクテビティがあるからキャンプ場を利用してくれる方、もこの先出てくると思います。現場の情報提供の紙を作っておく、Webサイトにも書いておく、などが大事です。

特に、Webサイトでは交通アクセスの問題が、一番大きくなります。車でしか行けない、という場所も多いはずですので、特定の国からの人は国際免許があればレンタカーで運転してくることができる*、ということは覚えておいて下さい。

▶︎警視庁サイト: 外国で取得した国際運転免許証で日本国内を運転するには

その他にも、旅ブログや日本への旅行向けサイトなどの媒体はあります。例えば、株式会社Okibiではインバウンド向けの記事の執筆代行なども行なっています。ぜひお気軽にお問い合わせください。

このように、キャンプ場のインバウンド対応は、これからの観光市場を成長させる重要な戦略のひとつです。

キャンプ場インバウンド対策:サービス面での充実

レンタル備品の充実

キャンプ場のインバウンド対策では、外国人観光客が手ぶらで快適に利用できる環境を整えることが重要です。キャンプ場では、ホテルや旅館とは異なり、テントや寝袋、焚き火セットなどのキャンプ用品が必須となるため、レンタル備品の充実が求められます。

外国人観光客にも利用しやすいように、テントや寝袋、焚き火セットなどのレンタル備品を充実させましょう。もしかしたら、プランとして提供する場合は、フルセットを事前につけてあげてもいいかもしれません。(手ぶらキャンプ)

例えば、レンタル事業者の方々と連携しても良いですが、Campifyなどの設営から片付けまで一括して対応してくれる事業者さんなども良い連携相手です。

また、もしお客様自身でやっていただく場合は、備品の使い方やテントの立て方などの説明も、英語や他言語で提供できると良いですが、やってみせるのでも構いません。最近では、設営方法のYoutube動画などもあるので、自分でやってみたいお客様には、そちらを案内するのも親切ですね。

この点は、多少の現場側の努力が必要となってくる部分です。

(本当はキャンプグッズのメーカーさんに、ユニバーサルに理解できる説明書に全て入れ替えてもらいたいですね、、、誰かこの声を届けてほしい!)

アクティビティの提案

キャンプ場のインバウンド対応を成功させるには、宿泊だけでなく、周辺アクティビティの充実も重要です。多くの外国人観光客は、日本ならではの自然体験やアウトドアアクティビティを求めています。

釣り、カヤック、ハイキング、地元文化を体験できるワークショップなどを組み込むことで、キャンプ場の魅力を高めることができます。

もし自社で用意ができない場合は、事前にアクテビティを行う事業者さんと一緒に、どうしたら伝えられるか、を考えてみて下さい。

コミュニケーションは簡単です、頑張る、伝えようとする、その気持ちと姿勢を示せば、正しく流暢な言葉でなくても、伝えられます。ただ、危険を伴うものに関しては、提供しないことも視野に入れて考えてみてください。

キャンプ場インバウンド対策:注意すべきポイント

お食事を提供する場合

キャンプ場でインバウンド対策を進める際、食事提供は特に配慮が必要な重要なポイントです。

インバウンド観光客の中には、単なる食材アレルギーだけでなく、ハラル食やコーシャなど宗教上の理由から食べられないものがある方も多いため、事前にアレルギー情報や食事制限を確認することが不可欠です。

また、近年増加しているベジタリアンやビーガンのお客様向けに、肉や魚を使わない料理も用意しておくと喜ばれるでしょう。ベジタリアン対応の際は、カツオ出汁などの魚由来の調味料も避ける必要があることを覚えておきましょう。

基本的には、お客様が伝えてくれた食の嗜好に寄り添うことが最も大切です。そのため、料理の説明を英語や他言語で記載した紙を用意しておくだけでも、外国人観光客にとって非常に親切な対応となります。

さらに、食事環境の整備も忘れてはなりません。箸だけでなく、フォークやスプーンなどのカトラリーも用意しておくことで、快適な食事体験を提供できます。

また、日本独自の食文化や地元の食材を取り入れたメニューは、インバウンド観光客にとって新たな体験となり、高い満足度につながります。ただし、辛い食材や珍しい食材については好みが分かれることもあるため、複数の選択肢を用意しておくことをおすすめします。

ルールは明確にし、常にアップデートすることで、他のお客様との軋轢を防止

キャンプ場でのインバウンド対応において、最も重要なポイントの一つがルールの明確化です。多くの外国人観光客は決してルールを破りたいわけではなく、単に知らないだけであることを理解しておくことが大切です。

そのため、禁止事項やゴミの分別方法などを明確に伝え、外国人観光客だけでなくすべてのお客様に徹底することが重要です。例えば、消灯時間が現状緩やかに運用されている場合は、定期的な見回りを実施するなど、規律を保つ取り組みをエリア全体で示していくことが効果的です。

文化の違いから、日本人なら当然行わないことを無意識にしてしまうケースもあります。例えば、洋式トイレの便座に足を乗せてしまうなどの行為です。ただし、キャンプを楽しむほど日本文化に親しんでいる外国人観光客は、基本的なマナーを理解している可能性が高いでしょう。

もし一度トラブルが発生した場合は、それを改善のチャンスと捉え、ルールをアップデートしていきましょう。なお、国内・国外のお客様によって滞在エリアを分けることは、現代社会では差別と捉えられる可能性があるため、推奨できません。すべてのお客様が快適に過ごせる環境づくりを心がけましょう。

自分たちの施設の魅力を言語化しておく

これは、インバウンドに限りませんが、キャンプ場インバウンド対策に取り組む前に、自らのキャンプ場の魅力を再確認しておきましょう。例えばこのような質問に答えていくことで、徐々に輪郭が見えてくるかもしれません。

  1. どんな自然がキャンプ場の周りにありますか?
  2. キャンプ場でできるおもしろい遊びや体験は何ですか?
  3. キャンプ場にある便利な設備やサービスは何ですか?
  4. キャンプ場の近くで学べる地元の文化や歴史は何ですか?
  5. キャンプ場で楽しめる美味しい食べ物は何ですか?
  6. キャンプ場での自然にやさしい取り組みは何ですか?
  7. キャンプ場の近くにある観光スポットや楽しい場所は何ですか?
  8. 他のキャンプ場と比べて、どんな特別なところがありますか?

その他に、お知り合いやお客様にフィードバックをもらうことも大切です。あなたが普通、と思っていることが、他の人には価値である可能性があります。もし外国のお客様がいらしてくれて、直接の会話が難しい場合は、Google Mapでの口コミをお願いすれば、自動的に翻訳されたものを読むことができます。


キャンプ場インバウンド対策:まとめ

インバウンド向けのキャンプ場は、まだあまり多くのキャンプ場が取り組んでいないチャンスです。早期に対策を行い、外国からのお客様を呼び込むことで、ビジネスを拡大することができます。

これから、グランピングの形態からインバウンドが流入してくる未来は、あり得ると考えています。もう少し本格的なキャンプを自分でしてみたい、となったお客様を将来獲得するために、近隣のグランピング場と組んでみることも一つの戦略ですので、ぜひ連携してみましょう。

また、インバウンドの方々向けに、オーバーランディングというジャンルも面白い切り口ですので、ぜひご覧ください。

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