山々が呼んでいるので、わたしは行かなければならない。
ージョン・ミューア
森や山、川や海で遊んだあとは、心地よい疲労感とともに何だかすっきりとした気分になるという人も多いのではないだろうか。それだけ自然の力は偉大なのである。しかし、ふと考えてみると、すぐそこにある自然も、遠出によって出会える自然も、写真や映像を通して目にすることができる自然も、誰かが保全してくれるからこそ、そこに存在し続けているのである。
冒頭でご紹介した「山々が呼んでいるので、わたしは行かなければならない。」というのは、”自然保護の父”と呼ばれたジョン・ミューア(1838年-1914年)の名言である。自然保護よりも経済の発展や開拓に皆が力を注いでいた時代、アメリカのヨセミテの保全に尽力するなど、彼は生涯を通して自然保護活動を率先して行ってきた。今回は自然を心の底から愛し、守ってきた、ジョン・ミューアの名言集をADVENTURE JOURNALの記事からいくつかご紹介したい。
自然のなかを歩くたび、探し求めているものよりずっと多くのものを得られる。
何か目的を持って自然の中へと入ったものの、目的とは全く別のものもそこにはあるということ。たとえば、運動不足解消のために公園に出かけたら、予想だにしない美しい夕焼けに出会った。写真を撮りに山に入ったら、自然から心の安らぎを得られた、等々。得られるものは美しい景色だったり、精神的な安らぎだったり、その時によって色々だが、自然が与えてくれるものは無数にあるということだろう。
旅人の大半は、見るように仕向けられた場所ばかりに目を向ける。
ばかげたガイドブックの影響力は計り知れない。
これにはちょっと耳が痛い人も多いかもしれない。ジョン・ミューアがアラスカを旅した時のこと。明らかに旅行者向けに作られたお粗末なお土産を買いあさる人々を見て感じたことのようだ。アラスカという大自然を前にして、もっと目を向けるべきところが山ほどあるはずだというミューアの嘆きのように聞こえる。
山に行くことは家に帰ることである。
ジョン・ミューアが生きた今から100年以上も前の時代にも、精神的にも肉体的にも疲れ切った人々が存在した。そんな人たちに向けて、山こそが帰るべき場所であり、人々を生き返らせてくれる場所だと言っている。
自然の存在意義を誰よりも知っている男からのメッセージだと思うと、一つ一つが心に響く。
もっと自然へ入ることを促されているような気がしないだろうか。
《参考URL》
20 Inspiring Quotes from John Muir|ADVENTURE JOURNAL
BRENDAN LEONARD
Travels in Alaska|Sierra Club
John Muir
(意訳:菊地薫)
Nature Serviceのウェブメディア NATURES. 副編集長。
自然が持つ癒やしの力を”なんとなく”ではなく”エビデンスベース”で発信し、読者の方に「そんな良い効果があるのなら自然の中へ入ろう!」と思ってもらえる情報をお届けしたいと考えています。休日はスコップ片手に花を愛でるのが趣味ですが、最近は庭に出ても視界いっぱいに雑草が広がり、こんなはずじゃなかったとつぶやくのが毎年恒例となっています。