2月14日、池袋のサンシャインシティで開催された「いいね!地方の暮らしフェア」に行ってきました。これは、日本創生のための将来世代応援知事同盟と国土緑化推進機構が主催するイベントで、「地方移住」がメインテーマとなっています。
そして、地方移住のひとつの切り口でもある「森のようちえん」については、トークショーが企画され、長野県の阿部守一知事や鳥取県の平井伸治知事、そして元モーニング娘。の藤本美貴さん他、専門家も登壇し、森のようちえんの魅力や今後の展望が紹介されました。さらにショーの後、阿部知事と藤本さんにもインタビューしてきましたので、レポートします。
行政が関わることの重大性
今では耳にすることも増えた森のようちえんですが、その誕生からこれまでは、紆余曲折がありました。例えば園舎がないなど様々な条件が不足しているために、国による幼稚園の認可に至らず、園に対する補助金がなく、その負担は先生や親御さんたちが背負わなければなりませんでした。
それでも森のようちえんが広がっていったのは、そこで伸び伸びと育つ子どもの姿や心の成長を目の当たりにし、自然との関わりの重要性を肌で感じ、多くの人が支えてきたからです。
これを受け、鳥取県や長野県は、全国に先駆けて森のようちえんを積極的にサポートし、認証・認定制度を実施するようになりました。阿部知事の「森のようちえん(のサポート)は、民間の皆さんの自主的な取り組みからスタートしているものを行政が応援しますという動きです。これがこれからの日本社会にとって重要」という言葉が印象的でした。
長野県は、自然豊かな環境を生かし、森のようちえんのすそ野を広げるべく、「信州型自然保育」という独自の基準を作成し、県内の幼稚園や保育園を「特化型」と「普及型」に分けて認定する制度をスタート。すでに72の園が認定を受けています。
また、いち早く実施に踏み切っていた鳥取県は、「子育て王国」を目指し、さまざまな施策に取り組んでいます。その中で、第三子以降の保育料の無償化(低所得世帯には、第二子が第一子と同時在園する際には無償)を全県で実施しており、森のようちえんもこの対象としています。
平井知事は、「脳は生まれた時からどんどん大きくなる。(中略)小学校に上がる頃には大人の8割まで大きくなる、この間にどうゆう社会性を育てていくのか、知恵をつけていくのかが大切で、その可能性を引き出すのが、自然と触れ合いながら仲間と触れ合って行ける森のようちえんだと思います」と熱く語っていました。鳥取県が、さまざまな方策で森のようちえんに補助を出してきた理由がここにあったんだと、深く納得しました。
「認証・認定」することによる2つの安心感
これらの認証・認定制度には2つの安心が伴います。ひとつめの安心は、親御さんのものです。
子どもが通う園を探す際、認可外保育施設として届け出ているだけでは不安を感じ、森のようちえんの選択に踏み出せない人も多いと思われます。その点、認証や認可は行政が下すもので、一定の基準をクリアしている証明といえます。いわば、“お墨付き”ですから、親御さんにとっては大きな安心感につながります。
園が自然保育に積極的に取り組める
2つめの安心は、森のようちえんを運営する側によるものです。
幼児期に自然との関わりを持つことの重要性は、もはや常識。すでに多くの園がいろいろなカタチで積極的にカリキュラムに取り入れています。ところが根拠があいまいなために取り組み時間が限られたり、親御さんへの十分な説明ができていないことがあります。
今回は行政が動き出し、森のようちえんを後押しすることで、より積極的な活動がしやすくなったのはもちろん、各専門家の意見を集約する機会が増えています。学識者による自然保育学会も設立されたようで、すでに海外では明らかになっている森のようちえんの中長期的な効果の解明も進んでいくでしょう。
上原貴夫氏(日本自然保育学会 会長)/阿部守一氏(長野県知事)/内田幸一氏 (森のようちえん全国ネットワーク 運営委員長)/前田直登氏((公社)国土緑化推進機構 副理事長)/平井伸治氏(鳥取県知事)
自然の中で行う子どもの教育は学齢期にも
地方ならではの個性的な子育てや教育の実施は、森のようちえんに限ったことではありません。鳥取県智頭町では、雄大な自然の中で、子どもたちの主体性を最大限に生かした「サドベリースクール」があります。長野県では山村留学が促進され、山間部で自然体験をしながら、質の高い教育が受けられるようになっています。これらに共通するのは、一貫して“子どもが主体となった学びの場”だということ。豊かな心と体が育つのに欠かせない雄大な自然というフィールドがあるからこそできる取り組みだと言えます。
今回のトークショーは、森のようちえんの社会化に向けて、官学民(日本創生のための将来世代応援知事同盟、森のようちえん全国ネットワーク、日本自然保育学会)が連携して行う、最初の取り組みでした。これは、本格化し始めた森のようちえんの普及が、スピーディに、そして確実であるため体制が整ったということです。
トークショーの最後には、平井知事より「知事同盟まるごと、森のようちえんを応援する知事同盟になります!」との宣言も飛出し、これをきっかけに、さらに多くの自治体が森のようちえんの普及に取り組み、日本全国に広がっていくことは間違いないようです。
子どもはもちろん、大人も、心豊かに生きるには、自然との関わりは欠かせません。それを手にする環境が、地方で着実に整いつつあることを感じた貴重な取材となりました。日本全国に森のようちえんがますます広がることを願います!
NATURES. 編集部 キュレーター
自然の中で自由に遊ぶ息子を見たくて、週末キャンプに出かけていたのは遠い昔。キャンプでは食事と酒にこだわり、動けなくなるほどに食べてしまいますが、楽しければそれでいい。虫がいなけりゃもっといい。コンクリートだらけの世界で生きながら、自然の偉大さを想っています。