【旅の出発】
三宅島、御蔵島、八丈島を経由して青ヶ島を巡る今回の渡航。もちろん今回の出発も東京・竹芝桟橋から。JR浜松町駅から10分も海に向かって歩けば、そこは伊豆諸島への入り口。都心のど真ん中から出発できるという、この気軽な感じがいい。いつものように東海汽船の窓口でチケットを引き換え、チケットに名前を書いたら(乗船前に記入しておく)、のんびり出航を待つ。
伊豆諸島への船に関する情報やチケットの予約は、「東海汽船」Webサイトから。
秋の観光シーズンに突入したということで、若者のグループや、自転車を輪行袋に入れるサイクリスト、大きなクーラーバッグを持った釣り師たちで、ターミナルは賑やか。そんな様子を見ていると、こちらの気持ちも昂ぶる。そんなわけで、いつものようにビールが進むw
最初の寄港地・三宅島に向けて22:30に橘丸出港。デッキで受ける風は随分涼しくなったが、早速飲み会を始めるグループがいたり、多くの乗客が東京湾の夜景を楽しんだり、デッキは賑やか。
黄色と緑のカラーリングが印象的な『橘丸』は、2014年に就航を開始した新しい船。今回の目的地、三宅島、御蔵島、そして八丈島を結ぶ大型船(橘丸乗船レポート)。遠くに発生したという台風の情報が多少心配ではあったが、東京湾をスムーズに進む船旅をしばし楽しむ。
【火山の島・三宅島】
三宅島の到着は早朝5:00(!)。降りる乗客のために、消灯していた船内の明かりがつく。取材班はいそいそと下船の準備(その後の寄港地、御蔵島や八丈島まで寝ていたい場合は、アイマスク・耳栓などの用意を)。
下船タラップから風景を見ると、あたりは真っ暗。ここがどこかもよく分からない。5時だからね、そりゃそうだw(取材日は10月の後半)多くの釣り客やダイビング客が下船していく。三宅島到着は早いので、夏はまだいいが、陽が出るまでどうするか準備しておいた方がいい。宿予約時に「迎えにきてもらえるか?」「仮眠ができるか?」などは念のため確認しておくことをオススメ。
陽が出るまで宿で仮眠。さて活動開始! 明るくなった三宅島は、ちょっと雲の多い天候。島の中心にそびえる『雄山』は、灰色の雲の中。今回の伊豆諸島全島制覇企画ではおなじみの天候。でもそんなことではひるまない、いつもの取材班(慣れたw)。
三宅島は、全島民が避難した2000年の噴火も記憶に新しい、約20年周期で噴火を繰り返す島。各所に火山によりできた風景が見られ、火山性ガスのため立ち位置禁止の箇所もまだあるような、現在も火山活動ランクAの活火山として、常時観測対象になっている。
雄山を中心とした島の周囲に周回道路があり、その道が各集落や観光スポットを結んでいる。この道を使って各所を移動することになるが、移動手段はやはり車がいいだろう。さすがに徒歩での移動は難しい。レンタカーや村内バスなどの検討を(三宅島観光協会:島内交通・観光バス)。
【海へ:ひょうたん山】
三宅島は「火山の脅威と共に生きる島」という印象がやはり強い。まずはと火山関連のスポットを巡る。
『ひょうたん山』は、島の北東部の海岸近くで、1940年(昭和15年)に噴火してできた山。海に向かって赤黒い砂漠が岬のように突き出している一帯。上空から見ると噴火口が2つ連なり、ひょうたんのように見えたことから名前がついたとのこと。
自由に入ることができるスポットなので、火口跡まで行ってみる。赤黒い噴石でできた砂漠が海へと広がっているのは、同じ火山島の伊豆大島にある裏砂漠を思い出す(赤黒い噴石は「スコリア」と言う。マグマが吹き上げられてできるしぶきのこと。スコリアでできたひょうたん山のような山を「スコリア丘」という)。
進むにつれて赤いスコリアが増えてくる。これは火口近くに多く見られるそうで、「赤くなってきたら火口が近い」ということだそうだ。雄大な景色の迫力に圧倒される。
次第に海が見えてくる。その向こうは海に削られた海食崖。その赤い断崖絶壁の下に綺麗な青い海が広がる。
ふと下を見ると海面に何かが浮かんでいる。良く見るとウミガメ! それも多数! 写真では見にくいが、ざっと数えただけでも5頭はいる。ここまで多くのウミガメを見たのは、水族館以外では初めて。よく現れるスポットらしい。
かなりの崖なので足元には注意を。
そんな景色の中で一杯!
【伝えるものへ:旧阿古小学校・阿古中学校】
1983年に噴火が起きた阿古地区へ。10月の昼過ぎに起きた噴火。バスの輸送で避難が進み、最後のバスを見送った後、都道が溶岩に埋まったらしい。その溶岩が地域の小学校・中学校を飲み込む。噴火当日は運動会の振替休日だったそうで、生徒の被害はゼロ(この噴火の死傷者ゼロ)。その溶岩に埋まってしまった学校が、現在『火山体験遊歩道』として残され、火山の脅威を伝えている。学校が溶岩の流れをせき止めたことで、ここから下の被害はなかったらしい。
二階建ての中学校は屋上まで、三階建の小学校は二階までが溶岩に埋まった(三階の音楽室に残されたグランドピアノは、溶岩が冷えた後に運びだされ、その後も使われたんだとか)。
自然の脅威をそのまま残すスポット。今は冷え固まった溶岩だが、噴火当時のことを少しだけだが感じることができる。自然の力を見せつけられるが、溶岩の流れを食い止めるために、消防団が水をかけ続けたという話も聞いた。ただ受け入れるだけではない、火山とともに生きるという姿の一つ。
【いよいよ雄山へ】
今なお活動する火山『雄山』へ。現在の標高は774m。2000年の噴火前は815mあったが噴火で崩落したそうだ。山頂は火山性のガスのため、現在も立ち入りが禁止されている。
登るにつれて、そのガスにより立ち枯れてしまった、白骨のような木々が目立ってくる。桜と思われる木が多い場所もあり、春には美しい姿を見せていたんだろうと思いをはせる。それらの木々の周囲には、2000年の噴火後新たに育ってきた新しい植物が生い茂る。一見寂しくも感じるが、自然の力強さも感じる風景。噴火と再生を繰り返す三宅島。
山頂付近の元牧場があった一帯は、一面黒々とした地面に覆われている。建物跡や残されたサイロが以前の状況を知らせる。
時折雨も混じる天候だったが、雲が途切れたタイミングでドローン隊がチャレンジ! 現在も立ち入り禁止となっている山頂のカルデラに向けて飛ばす。雲の合間にカルデラ内の鮮やかな色を放つ池も見える。脅威ではあるが、美しさが見られる景色。上空から狙った動画は近日公開予定!
【火山とともに生きる島】
黒潮がぶつかることから北限のサンゴが見られるなど、絶好のダイビングスポットだったり、同様に釣り客にも人気のスポットでもある三宅島。自然を満喫できる島ではあるが、やはり火山とは切り離せない。島の各所にある流れ出た荒々しい溶岩、埋まってしまった建物、立ち枯れた木々、今なお立ち入り禁止となっている山頂、そして約20年周期で噴火をしているという歴史。厳しい自然を目の当たりにする島。
でもその自然を受け入れている島でもある。噴火という厳しい自然を受け入れ、そしてその自然とともに再び生活をしている印象。それは立ち枯れた木々の周囲から、新たに生い茂る植物のような…。
『強い自然の島。強い島民の島・三宅島』
三宅島の観光情報は「三宅島観光協会」Webサイトから。
次回「三宅島編2」。三宅島の『森』という自然に入り込む!
Nature Service 正会員 島事業リーダー
酒と音楽をこよなく愛する自由な情報設計者。島での楽しみ方は素潜り。綺麗な海を見ると潜りたくなって仕方ないらしい。潜った後のビールと、民宿のご飯が大好物。ビールおじさん。