冬の森には、たくさんの生き物たちの息吹が聞こえます。葉は枯れ落ち、草花は雪に埋もれ、一見何もないように見えますが、しっかりと春に備えて準備が始まっているのです。今回は札幌市・江別市・北広島市の3市にまたがり、開拓以前からの原生林を残す「道立自然公園野幌森林公園」を散策してきました。

原始の森を散策

道立自然公園野幌森林公園は1968(昭和43年)に、北海道開基100周年を記念して道立公園に指定されました。総面積は2,053ha。8割が国有林であり鳥獣保護区になっています。江別市で幼少を過ごした私にはまさにホームグランド。通称「野幌原始林」と呼ばれ、小学校や中学校、高校の校歌の歌詞には必ず「原始の森」という言葉が入っていました。

ボランティアさんに導かれて

今回は自然ふれあい交流館主催の「冬の観察会」に参加。平日だというのに40名近くの方が集まりました。もちろん公園内の散策は個人でも行えますが、ボランティアさんがガイドしてくれるので、これまで知らなかった知識を得ることができます。一組4人程度のグループに分かれてスタート。これから2時間半程度の散策が始まります。

(筆者撮影)

動植物の宝庫

野幌森林公園は都市の近くにありながら自然が豊富に残されている貴重なエリアで、樹木約110種、野草400種以上、キノコ200種以上、野鳥140種以上、昆虫1300種以上のほか、キタキツネ、エゾシカ、エゾリス、ユキウサギなどのほか、外来種であるアライグマも生息しています。

ヤドリギのお話

大空にそびえる木に「ヤドリギ」を見つけました。葉が落ちた冬は、ヤドリギの姿をはっきりと観察できます。一見鳥の巣にも見えるヤドリギは、「半寄生植物」と呼ばれています。自ら光合成をしますが、それだけでは足りず、寄生している木から養分と水分を貰って生きています。鳥が食べた実が木の上でフンに混じって種を落とし、そこから発芽して「ヤドリギ」として寄生します。

ヤドリギ(筆者撮影)

ツル類のお話

他の木を見ると山ぶどうなどのツルを巻く植物も多いことに気づきます。これらは寄生しているのではなく、自ら根を張り光合成をするものの自立できないため、いわば「肩を貸してもらう」状態で生息しているそうです。幹に何やら苔のようなものが見えます。これは「地衣類」と呼ばれる植物です。実際には苔ではなく菌類で、内部に藻類が共生しているため光合成します。

アカゲラも一生懸命

動物たちの足跡は無数に残るものの、多くの人が森を訪れているので姿を現してくれません。「動物には会えないかな」と、足跡の方向や木の上に注意を払っていると、アカゲラを発見。頭部が黒いのでメスなようです。命をつなぐために懸命に木の中の虫をついばんでいました。

アカゲラ(筆者撮影)

春が近づいています

2月初旬でありながら、春に向かっての準備が進められています。木の枝には3つの蕾ができ、それぞれ花や葉になる運命を背負い、その時を待ちます。蝶や蜂を惹きつける魅力が足りない小さな花には、受粉するために疑似の花びらが備わります。森の中ではたくさんの生物が助け助けられ、騙し騙され、共生していることを痛感しました。

(筆者撮影)

何気なく通り過ぎている森の中には、たくさんの営みがあり、それを知ることで楽しさは無限に広がります。今まで知らなかったことや、気づかなかったことに触れられる楽しい一日でした。ウキウキして家路に向かう私の頭上を、オジロワシが飛び回っていました。

住宅街から一歩踏み出しただけで野幌森林公園には<これほどの自然が残されています。ふらりと、“ドアを開けたらすぐに始まる探検”に出かけてみませんか?

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