私がよく訪れる富士山やその周辺の森では色々な方たちとの出会いがあります。
小さなお子さんを連れたハイカーや学生同士、会社の同僚同士でワイワイ楽しそうに喋りながらの登山者さん達、色々な言語が飛び交う外国の登山者さん達、ただひたすら黙々と頂上を目指す単独行の登山者さんなど様々です。
そんな色々な登山者さん達の中でも、私にとって特に印象的なシニアエイジの方々をこのシリーズではご紹介したいと思います。
最初は、山の中を自転車で駆け巡り、富士山にスキーを担いで登る!? 静岡県富士宮市在住の小岱(こぬた)正男さん(69)です。
若い頃から何にでも興味を持ってのめり込んできた…
小岱さんは18歳の頃から山登りをはじめたそうですが、当時入会した山岳会の先輩達から登山技術や安全管理、緊急時の対応方法など多くの登山に関するノウハウを学び、その後全国各地の山々を踏破した経験の持ち主です。
そんな登山に関して百戦錬磨の小岱さんですが、いつしか山登りだけでは飽き足らず、今度はスキー板を担いで冬山に登り、そこからスキーで滑降してくるようになりました。
さらに、飽くなき冒険心はとどまるところを知らず、とうとう山から飛び降りることに興味を持ってしまったのだとか。
そして行きつくところ、なんと「日本で初めて富士山や穂高岳からパラグライダーで降下した人」になってしまったのです!
その後も登山や山スキー、パラグライダーだけでは飽き足らず、現在までにスノボやウインドサーフィンやトライアル自転車など、ありとあらゆるアウトドアスポーツにのめり込んでいったそうです。
最近では、トライアル自転車を担いで山を登り下山時にその自転車に乗って下ってきたり、冬の富士山にスキーを担いで登り下山時にスキーで滑降してきたりと、年間250日近くも山へ行き、アウトドアライフを楽しんでいるのだそうです。
もう行き着くところまで行ってしまった感があります…
200人に一人の健康体!
そんな小岱さんですから「体の悪いところなんてないんでしょうね?」と聞いてみました。
すると、「先日の健康診断で血圧が低いと指摘されたんだよ」とのこと。
さらに、精密検査を受けるよう医者から指導されたそうです。
特別体調が悪い所は無いけれど医者からそういわれるとチョット心配になったようで、後日しっかりと精密検査を受けられたとのことです。
その結果、医者から告げられたのは意外な一言でした。 「200人に一人の健康体ですよ!」とのことだったのです。
どうやら低血圧になった原因は、毎日山登りや自転車こぎをすることにより、小岱さんの心臓が鍛えられたアスリートのごとく、いわゆるスポーツ心臓になっていたからなのでした。
ここまでのめり込み持続できる秘訣とは?
そんな小岱さんですが、なぜここまで集中でき、このような活力が生まれてくるのでしょうか?
人間は自分が好きなことや好奇心のあることをすると、脳内の「ドーパミン」という神経伝達物質が活発に分泌されることが分かっています。
このドーパミンですが、脳を覚醒させ集中力を高めることが知られており、一方で嫌なことや興味のないことをしている時にはあまり分泌されなくなってしまう物質なのです。
また、同じように興味があることをすると脳内に分泌される物質に「TRH(サイロトロピン放出ホルモン)」というものがあります。
このTRHは別名〝やる気ホルモン″とも言われており、その所以は、人間の元気の源となる「FT3」や「FT4」といった甲状腺ホルモンを産生する際に脳下垂体から分泌される「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」の分泌を促進する物質だからなのです。
このホルモンのいいところは、先程のドーパミンとは違って、好きなことや好奇心のあることをしている時だけに分泌されるのではなく、興味がないことをしている時でも分泌される… という点です。興味のないことやあまり気分が乗らない時でも、〝取りあえず始める″ことによりTRHの分泌が促進されるのだそうです。
さすがの小岱さんも人間です。時には山に行くのが嫌な日もあるのではないでしょうか。
しかしここまでのめり込むことができる抜群の集中力、そしてこの行動力みなぎるパワーが生まれてくる背景には、そんな日でも「取りあえず行ってみる、やってみる」があるからなのかもしれません。
この小岱さんのように、毎日、しかも、自転車やスキーを担いで山や森へ行かないまでも、みなさんもお近くの里山や森に「取りあえず行ってみる」のはいかがでしょうか?
自然の中へ身をゆだねることで、心身ともにリフレッシュでき、何か新しい自分を発見できるかもしれませんよ!
▼今回ご紹介した小岱さんのブログはコチラから▼
友峰ブログ
登山ガイドサービス自遊舎 代表・日本山岳ガイド協会認定登山ガイド・臨床検査技師
夏は富士山や南アルプス、八ヶ岳等のガイドを、また、オフシーズンには富士山麓や伊豆、箱根などをガイドしております。単なる道案内にとどまらず、その地域の歴史や文化などに触れて頂けるガイディングを目指して日々活動しております。