なんだか気持ちいい、なんだか心地いい。

最近、そんな気持ちになったことはありますか?
忙しい毎日のなかで自分の心身をケアする方法を、森林と東洋医学の両面から考えていきたいと思います。

森林セラピストを目指したきっかけ

鍼灸師、カウンセラーの兼松と申します。数年前から森林の魅力にとりつかれ、森林セラピストを目指すようになりました。まずは、私がなぜ森林に魅力を感じるようになったのか、お伝えしていきたいと思います。

きっかけは登山でした。ただひたすら山に登り無心になれこと、登頂により「自分でも登りきれた」という達成感と自信を得られたことで、よりハードなトレイルランにも挑戦しました。そんな自分を追い込むことへの快感と同時に、山の自然にも惹かれるようになりました。

山へ行くのが難しいときは自宅近くにある小さな森へ行き、毎週のように通ううちに、森林の癒しの力を肌で感じるようになったのです。森の香り、緑の色合い、鳥のさえずり、なぜこんなにも安らぐのだろう、もっと森の癒しについて知識を深めたい、そう思い、森林セラピーを学ぶことを決めました。

森林セラピー

メンタルケアにおける共通点

鍼灸師は身体を診るのと同時に、心を診る仕事でもあると感じています。身体の不調は心の不調に、心の不調は身体の不調につながると考えるからです。森林浴などの森林療法がメンタルケアに効果的なことが分かってきていますが [李卿, 川田智之,2014]、東洋医学の考え方に基づく鍼灸治療もまた、メンタルの不調に効果を示すことがいくつかの研究で明らかになりつつあります [中井麻衣, 2014]。

心を癒やす森林と東洋医学、この2つのつながりをもう少し深く考えてみたいと思います。

自然療法としての共通点

現代医学と対照的なものとして、「自然療法」があげられます。「自然療法」とは、「薬や手術を用いない」代替医療のことを指します。自然療法には、アロマセラピー、カイロプラクティック、漢方などが含まれ、鍼灸と森林療法もここに入ります [今西二郎, 2008]。

自然療法には、人間に元々備わっている「自然治癒力」を引き出す力があります。アロマの香り、漢方に含まれる植物などの生薬、鍼やお灸の刺激、森林の中の浄化された空気、生き物の声、目に優しい景色。これらの要素が私たちの五感に働きかけ、感覚を呼び覚ますのです。

しかし、自然療法単体だけでは良い結果を生みません。自然療法は現代医学の存在があってこそ、力を発揮するものでもあります。自然療法と現代医学を掛け合わせた統合医療が今後主流になってくると言われています [今西二郎, 2008]。

森のなかの木々

未病を治す点でも共通点が

「未病」という言葉があります。これは、未だ(いまだ)病(やまい)に至らないが、その可能性を秘めている段階のことを指す言葉で、東洋医学では基本的な概念となっています。日常生活に支障を来すわけでもなく、病院で治療や投薬をしてもらう程ではないけれども、完全に健康状態であるとも言えないことを言います [岩崎寛, 2007]。

なんとなくだるい、頭がぼーっとする、肩が凝る、眠れない。現代を生きる多くの方が、未病の状態にあるのではないかと私は思います。「健常者」というくくり方がありますが、健常者と呼ばれる人たちは本当に健康と言えるのか、そもそも健康とは何なのか、深く考えてみる必要があると思います。

実は、この東洋医学の基本的概念である「未病」に対するアプローチが森林療法にもあてはまります。自然環境に癒されることでストレスを軽減させ、未病を防ぐことが期待できると考えられています[岩崎寛, 2007]。現代医学だけでは対応が難しい未病という見えない病を、森林療法などの自然療法により、自分自身の力を引き出し予防することができるのです。

調子が悪ければ病院へ行けばいい、薬を飲めばいい。それもひとつの考え方ではありますが、それだけでは改善が難しい場合もあります。自分の身体を人任せにしない、自分でできることを探してみる、こういったことが、私たちが今を生きる上で大切なことではないかと思います。

さて、今回は鍼灸師、カウンセラーの立場から、森林と東洋医学に共通する癒しの力についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。次回は、この癒しの力をどのように享受したら良いのか、具体的な方法についてご紹介したいと思います。

(参照文献)
岩崎寛. (2007). 緑地福祉学の構想と実践
今西二郎. (2008). 緑の環境と統合医療.
中井麻衣. (2014). ストレスと精神的健康に対する鍼灸医学.
李卿,川田智之. (2014). 森林医学の臨床応用の可能性.

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