今回のテーマは「エシカル消費」です。SDGsの12番目の目標「つくる責任つかう責任」に関係する話題です。
日々私たちの消費している「もの」は「どこで」「どのように」「どのようなひとによって」つくられ、私たちの手元に届くのでしょうか。
そして私たちはどのようなものを選択し消費すべきなのでしょうか。
エシカル消費とは日本語に訳すと「倫理的な消費」です。
簡単に説明すると「人権や環境に十分配慮された『もの』を選んで買いましょう」という考え方ですが、日本ではまだ関心が高い人の割合は欧米諸国ほど高くないようです。
今回はこのエシカル消費について解説していきます。
サプライチェーン問題と「つくる責任」
まずは私たちが消費しているものがどういった過程を経て今目の前にあるのかを見ていきましょう。
エシカル消費の理解にはサプライチェーン問題を知っておく必要があります。
サプライチェーンとは「もの」がつくられ、私たちの手に届くまでの一連の流れのことで、原材料の調達に始まり、製造、物流、販売という過程が含まれます。これを「ものが供給される流れの連鎖」と表現しSupply(供給)chain(連鎖)と呼ばれています。
そしてこのサプライチェーン上ではさまざまな人権侵害と環境破壊が起こっており社会問題となっているのです。
サプライチェーン問題とは
サプライチェーンは川の流れに例えられ原材料の調達や製造など消費者から遠い部分を川上産業といい、販売など消費者に近い部分を川下産業、そのどちら寄りでもない部分は川中産業と呼ばれています。上流から下流に流れてきて消費者の手元に届くというイメージです。
サプライチェーン上にある企業は対等な関係でないことが多く、川下産業の企業が川上産業の企業に対して横暴なふるまいや無理強いをすることもあります。川上産業の労働者は劣悪な労働環境や低賃金での労働、さらに違法伐採や乱獲まで強いられるケースまであるのです。
サプライチェーン問題とはこのような人権侵害や環境破壊の問題のことを指します。
このサプライチェーン問題が浮き彫りになった事故を紹介します。
事故概要をまとめると
- 日時 2013年4月24日
- 場所 バングラデシュの首都ダッカ近郊の縫製工場の入った8階建ての商業ビル
- 内容 ビルが崩壊し中にいた人が巻き込まれ多くの人が犠牲となった
事故前日、建物の柱や壁に亀裂が発見されました。報告をうけた警察は退去命令を出していたのですが、工場側はそれを無視し従業員に対し「仕事に戻らないと解雇する」と脅し解雇を恐れた従業員たちは次の日も出勤し事故に巻き込まれたのです。
この事故により死者1000名以上、負傷者2500人以上の大惨事となりました。
事故の原因は、違法建築物であったこのビルに大型発電機や数千台のミシンの振動が伝わりダメージを与え崩壊に至ったということでした。当時ニュースでも大きく取り上げられた事故なので、知っている方も多いのではないでしょうか。
この事故の背景には劣悪な労働環境や安価な労働力に依存した、サプライチェーン問題の川下産業企業による利益至上主義がありました。サプライチェーン問題が浮き彫りになった分かりやすい例のひとつです。
この事故があって以来、衣料アパレル業界だけでなく他の産業でも「サプライチェーンの川上産業の実態を明らかにし、川下産業も『もの』をつくるという責任を負い、川上産業の課題解決にも対処する」という意識が強くなりました。
信じられないことに、こうした「つくる責任」という意識の変化はほんの数年前のことなのです。
エシカル消費と「つかう責任」
上記のようなサプライチェーンの川を流れてきた「もの」ですが、私たちはそれらを積極的に買うべきなのでしょうか。
ここからがエシカル消費の本題です。
冒頭で一言エシカル消費に触れましたが上記のサプライチェーン問題を踏まえて改めてエシカル消費とは何かを考えていきます。
私たちが買う「もの」には「どこで」「どのように」「どのようなひとによって」つくられたという背景があり、そこにはサプライチェーン上で人権侵害や環境破壊の可能性があることが分かりました。
そしてエシカル消費とは、そういった「もの」は買わずに「人権と環境に十分に配慮されてつくられた『もの』を買うこと」「買うことによってサプライチェーン上の問題や課題を解決する手助けとなるような『もの』を選択し買うこと」です。
エシカル消費すべき理由
私たちはなぜエシカル消費をしなければならないのでしょうか。
何も考えずにただ消費を続けるとどうなってしまうのでしょうか。
あふれるほどの「もの」に囲まれている今日の私たちの生活ですが、ここまで発展してきた過程の裏側には環境破壊や人権侵害があったことは上記の通りです。
発展を続けるために環境破壊が進めば、地球に取り返しのつかない程のダメージを与え自然の恵みを享受できなくなります。
また発展途上国の貧しい人々を低賃金で劣悪な労働環境で働かせると、その人々の貧困は固定化され、その国や人々を消費者とした新たなマーケットを開拓することができなくなってしまいます。
めぐりめぐって企業は売り上げと利益を拡大する機会をなくしてしまうことになるのです。
その結果世界全体の経済発展も頭打ちになってしまいます。
「つかう責任」を考える必要が私たちの前に迫ってきているのです。
関連記事:やってみよう!エシカル消費 日本におけるエシカル消費の現状とは
まとめ
今回はエシカル消費について解説しましたがいかがでしょうか。
SDGsの12番目の目標「つくる責任つかう責任」を
- サプライチェーン問題を「つくる責任」
- エシカル消費を「つかう責任」
とそれぞれに当てはめ概要を述べてきました。
本記事をまとめます。
エシカル消費の理解にはサプライチェーン問題を知ることが不可欠
サプライチェーンとは
- 「もの」がつくられ、私たちの手に届くまでの一連の流れのことで原材料の調達に始まり、製造、物流、販売という過程が含まれる
- 「ものが供給される流れの連鎖」と表現しSupply(供給)chain(連鎖)と呼ばれている
- サプライチェーン上ではさまざまな人権侵害と環境破壊が起こっている
エシカル消費とは
- エシカル消費は日本語で「倫理的な消費」
- サプライチェーン上で人権侵害や環境破壊があった「もの」は買わない
- 人権と環境に十分に配慮されてつくられた「もの」を買うこと
- 買うことによってサプライチェーン上の問題や課題を解決する手助けとなるような「もの」を選択し買うこと
エシカル消費すべき理由
- 環境破壊が進むと地球に取り返しのつかないダメージを与え自然の恵みを享受できなくなる
- 発展途上国の貧しい人々を低賃金で劣悪な労働環境で働かせると、その人々の貧困は固定化。その国や人々を消費者とした新たなマーケットを開拓できなくなる
- めぐりめぐって、企業は売り上げと利益を拡大する機会をなくし、世界全体の経済発展も頭打ちになる
私たちは「つかう責任」を考える必要に迫られているということなのです。
福島県内の除染作業に関わり福島の自然が好きになりました。趣味はクラシックギターとアロマで香りや灯りに癒されつつギターを弾いています。