近年、日本で「森のようちえん」が注目されており、テレビでも特集されるのを目にします。

森のようちえんとは、自然体験活動を通してバランスよく精神面と体の発達を促すことを目的とした教育プログラムです。自然を感じることで好奇心や豊かな感情を育むねらいがあります。

このような自然と触れ合い成長していく教育方法は、北欧諸国で始まったとされています。

今回は、スウェーデンでの環境教育について「森のムッレ教室」を参考にしてご紹介します。

森のムッレ教室とは

「森のムッレ教室」とは、スウェーデン発祥の野外教育手法で、主に5~6歳の児童が対象です。

ムッレの語源はスウェーデン語の「Mullen(土壌)」にあり、「土は命の根源である。人間もまた土とつながっている」というメッセージが込められています。

日本の森のようちえんと活動内容は似ていますが、スウェーデンでは「人間も自然の一部である」という考えを軸に、自然に対する考え方を学ぶのが特徴です。

森のムッレ教室で体感する自然からのめぐみ

森のムッレ教室では、天候に関わらず子どもたちは元気に外で過ごします。

晴れた日の太陽の光も、雨のしずくも、真っ白な雪も、全てが自然から与えられる遊び道具です。五感を使った自然体験では、子どもたちはより健康的に、ストレスも少なく活動できるのです。

自然の中では室内と違い、地面がでこぼこしていたり、水たまりをよけたりしなければなりません。石を拾ったり、虫を捕まえたりする、この活動が運動神経を発達させるのにも役立ちます。

北欧の森には妖精が住んでいるという神話があります。
子どもたちは森で遊ぶことで、絵本や童話で親しんだ妖精に出会えます。
自然の中では想像性が豊かになり、こうしたファンタジーがどんどん生み出されるのです。

子ども目線でエコロジー(生態学)を学ぶ

大人が「エコロジー(生態学)」について考えようとすると、大学の授業のように感じてしまうことでしょう。
しかし、自然の中で過ごす子どもにとってエコロジーを学ぶ目的とは、生活する環境の中で「自然を身近に感じる」ことにあります。
彼らにとってエコロジーとは「木には平たい葉っぱ(広葉樹)や、細長い葉っぱ(針葉樹)がある」ことや、「自然の中の空気は新鮮でおいしい」ということなのです。

自然感覚とは自分も自然の一部だということ

森のムッレ教室では「自然感覚を身につけること」が目標とされています。
「自然感覚」のはっきりとした定義はありませんが、「自然と、自然の中で生きる全ての生き物への感情」という解釈があります。

自然感覚を持つことで、自分は自然の中で生きるものであると認識し、一緒に生きる他の生物や環境にも気を使い、責任を感じる気持ちが育ちます。

幼いころから自然の中で学び、成長することで、自然は彼らの「家」も同然です。
誰もが家は大切な場所で居心地のよい環境であってほしいと願います。

まとめ

平成30年に「幼稚園教育要領」が改正されました。
その中には「持続可能な社会の創り手となることができるようにするための基礎を培うこと」とあります。

SDGs(持続可能な開発目標)の中にも環境に関する目標が多く掲げられています。
この目標を達成するために、まず私たち自身が自然の一部であると認識し、自然の存在を当たり前としない気持ちで向き合うことが大切なのではないでしょうか。

参考:スウェーデンの「森のムッレ教室」の思想的基盤
   森のようちえんとは
   森のムッレ教室とは
   幼稚園教育要領

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