EcoFlow Delta Pro Ultra導入の背景

    第二種電気工事士の資格を取得した私が、ついに電気工事の実戦デビューを果たしました。その舞台となったのは、我が家の電力システムの大革新。古くなったパワーコンディショナーとおさらばし、EcoFlow Delta Pro Ultra を導入したのです。この導入により、我が家全体がまるでUPS(無停電電源装置)に接続されたかのような状態になりました。

    導入の背景には、いくつかの要因がありました。まず、ソーラー発電の余剰電力買取制度「FIT」を終了(卒FIT)して6年近く経過してしまい、余剰電力の買取単価が下がっていたこと。そして、設置から16年近く経過した太陽光発電のパワーコンディショナーの更新時期が迫っていたことです。さらに、近年増加傾向にあるゲリラ豪雨や落雷による地域の停電、そして将来起こりうる地震への備えとしても、蓄電池の重要性を強く感じていました。

    蓄電池の選定

      EcoFlow Delta Pro Ultra を選んだ理由は、キャンピングカーでEcoFlow Delta Pro を利用していた経験から、EcoFlow社への信頼があったからです。製品選定の際には、我が家のオール電化システムに適しているかどうかを慎重に検討しました。Delta Pro Ultraの出力は1台で6000Wと、オール電化住宅の全負荷*をカバーするには十分ではありませんでしたが、複数台を連結して出力を将来拡張できる点や、高圧PV入力と低圧PV入力の両方に対応しているため既存のソーラーパネルを無駄なく活用できる点も決め手となりました。さらに、拡張性や災害時の可搬性も考慮し、総合的に判断してDelta Pro Ultraが最適だと結論づけました。

      *ここで言う「全負荷」とは、家庭内のすべての電気機器や設備を同時に使用した場合の最大電力需要を指します。具体的には、照明、エアコン、冷蔵庫などの家電製品から、IHクッキングヒーター、電気温水器、電気自動車の充電器まで、家庭内のあらゆる電気を使用する機器が含まれます。全負荷での運用を目指すことで、停電時でも普段と変わらない生活を送ることができます。ただし、オール電化住宅の場合、全負荷の電力需要は非常に高くなる可能性があります。例えば、IHクッキングヒーターや電気温水器は瞬間的に大きな電力を必要とするため、これらをすべて同時に使用すると、一般的な家庭用蓄電システムの容量を超えてしまう可能性があります。そのため、全負荷での運用を目指す場合は、使用する電気機器の優先順位を決めたり、使用時間をずらしたりするなどの工夫が必要になることがあります。

      既存の3kWのソーラーパネルを高圧PV入力に接続し、キャンプ用に購入していた400Wのパネルを低圧PV入力に接続することで、太陽光発電を最大限に活用できる計画を立てました。また、Teslaに乗っている事もあり Tesla Powerwallも検討しましたが、ソーラーパネルからの直接接続ができない点や、定格出力が5000Wと低い(複数台接続しても容量は増えるが出力は増えない)ことから、Delta Pro Ultraの方が我が家のニーズに合っていると判断しました。ただし、Tesla Powerwallが将来的にTeslaの電気自動車から家に給電するV2H(Vehicle to Home)機能に対応すれば、選択肢として非常に魅力的になると考えています。Tesla社の方針転換に期待しつつ、次回の蓄電池更新時には再度検討したいと思います。この点は、EV所有者にとって重要な検討事項になるでしょう。

      施工計画と実施

        施工計画では、全負荷での導入を目指し、配線をシンプルにすることを心がけました。エコキュートは負荷が大きいため、通常時は商用電源から利用(我が家はB方式でした)し、停電時のみDelta Pro Ultraから給電する自動切り替えシステムを計画しました。既存のソーラーパネルはDelta Pro Ultraの高圧PV入力が15Aまでのため150V並列接続ではなく450V直列接続にし、キャンプ用パネルは庭に設置して活用することにしました。

        施工時には、電線の太さの決定に特に注意を払いました。Delta Pro UltraのAC入出力仕様が30Aであることを確認し、適切なケーブル(ラバロンVCT5.5SQx4C)を選定しました。また、実際の電流値を電流クランプメーターで測定し、安全性を確保しました。

        材料はモノタロウAmazonから購入しましたが、プラグの種類が多く、僕のように間違った部材(写真は最初に買ってしまった間違ったプラグ)は買わないようにご注意ください。正しいのは「アメリカン電機 引掛形 ナイロンプラグ 接地3P30A125/250V 4312NL14」と「アメリカン電機 引掛形 ナイロンコネクタボディ 接地3P30A125/250V 4314NL14」です。

        既設分電盤の電流測定と設置場所の選定

        ここで重要なポイントとして、既設電線の電流測定があります。特にオール電化住宅の場合、エアコンを付けた状態で夕食の準備時間帯に電流クランプメーターを用いて測定すると、最もリアルな数値が得られます。分電盤でL1とL2の最大電流を測定することで、実際の電力使用状況を正確に把握できます。これは安全性の確保だけでなく、効率的なシステム設計にも役立ちます。

        Delta Pro Ultraの設置場所は、将来車椅子を使う場合も想定して廊下などで妨げにならないよう慎重に選びました。1階のデッドスペース(採光スペース)に設置し、床下を経由してケーブルを敷設しました。既存のソーラーパネルからの配線は、パワーコンディショナーから取り外し、端子台を用いて直列に接続しました。当初の計画では450Vを想定していましたが、実際は472Vとなったため、Delta Pro Ultraの上限電圧を超えたため並列接続で利用することにしました。これにより、最大出力が約2.25kWhに制限されてしまったのは少し残念でしたが、安全性を優先しました。

        重要なDelta Pro Ultraの設定として、アプリの設定から「AC充電スピード」を6000W以下にして電流を30A以下になるように念の為設定をしてください。また、この数値を1000Wなど少なくし過ぎるとパススルー運転の出力が足りなくなりエラー(一瞬停電)になるのでご注意ください。

        新築時の蓄電池設置に関するアドバイス

          将来的に家の新築を考えている方へのアドバイスとして、設計段階から蓄電池の設置場所と配線計画を考慮することをおすすめします。Delta Pro Ultraには、オンラインUPS(0ミリ秒で切替)のAC出力(100V 20A)ソケットが2つあるので、ルーターやサーバーを別の場所に設置する場合は、蓄電池の設置場所からそれらの機器がある場所まで専用回路を設けるのも良いでしょう。災害時の利用を考慮すると、ある程度の強度がある小部屋で、かつ外に直ぐに出せるような物置のような場所が最適です。また、排熱計画も忘れずに考慮しましょう。これらの事前計画により、より効率的で安全なシステムを構築することができます。

          安全対策と施工後の感想

            地震対策として、Delta Pro Ultraを床にアンカーを用いてベルトで固定し、転倒防止措置を講じました。また、古いパワーコンディショナーの操作盤を取り外し、PowerInsightを設置しました。

            施工後は、クランプメーターを使用して電流を慎重にモニタリングし、ケーブルの許容範囲内であることを確認しました。EcoFlowのアプリのラボ機能も活用し、全ての入出力をチェックしています。

            この導入により、我が家の電力システムは大きく進化しました。深夜電力で蓄電し、日中は蓄電された電力のみで生活を送ることが可能になりました。確かに、IHコンロや電子レンジの同時使用には制限がありますが、それがかえって家族全員の節電意識を高める結果となりました。無駄なクーラーの使用も減り、6kWを超えないよう電力の需給バランスを取ることが家族の新しいゲームのようになっています。EcoFlow Delta Pro Ultraの導入は、単なる蓄電池の設置にとどまらず、我が家のエコな暮らしへのさらなる転換点となりました。災害への備えとしても心強く、日々の生活に新たな価値をもたらしてくれています。

            次回は、実際にEcoFlow Delta Pro Ultraを数ヶ月試用してみて、電気代などに実際にどのような変化があるのかや、「TOUモード」などのセーブモードやバックアップリザーブなどの設定詳細をレポートしたいと思います。

            コメントを残す