世界中のデジタルノマドやアウトドア愛好家の間で注目を集めるSpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」。高速かつ低遅延な通信を地球上どこでも利用できる、まさに夢のようなシステムですが、現在は複数の端末がラインナップされています。そこで今回は、新モデル「Starlink Mini」をアンボックスしながら、従来のREV3 – Standard Actuated、そしてFlat High Performanceと比較し、その違いや利用シーンをざっくり整理してみました。

3機種の特徴比較

機種Starlink MiniREV3 – Standard ActuatedFlat High Performance
重量約1.1 kg約2.9 kg約5.9 kg
視野角110°110°140°
消費電力25–40W75–100W110–150W
最大下り速度100+ Mbps350 Mbps220 Mbps
最大上り速度15 Mbps40 Mbps25 Mbps
Wi-Fi規格Wi-Fi 5Wi-Fi 6Wi-Fi 5
防水性能IP67IP54IP56

Starlink Mini

  • 携帯性と低消費電力が最大の魅力。重量はわずか1kg強で、防水防塵性能も高いIP67仕様。
  • 最大速度は他モデルより控えめですが、一般的なリモート会議や動画視聴なら十分。
  • バックパックに入れて移動可能で、バンライフや緊急時の非常用回線としても注目されています。

REV3 – Standard Actuated

  • Miniよりひと回り大きく重いため固定設置向きですが、通信速度は最大350Mbpsと高速。
  • Dishy(アンテナ)に自動調整モーターを内蔵しており、向きを勝手に最適化してくれるのが強み。
  • 消費電力は大きめなので、自宅、オフィスのメイン回線として適しています。

Flat High Performance

  • 最も重厚で視野角が広く、多数の衛星を同時追尾しやすいモデル。
  • 過酷な環境下でも安定した通信を維持できる防水・耐衝撃設計が特徴。
  • RVや船舶への常設、災害対応業務などプロユースに向いています。

こうした3機種は、それぞれ用途や設置条件に応じて選ぶのがポイントです。実際、当サイト「NATURES.」では標高1200mのブロードバンド過疎地のキャンプ場や、日本の僻地を旅するOverlandingの現場でREV3やFlat High Performanceを活用してきましたが、今回はさらに携帯性を重視するために「Starlink Mini」を導入してみることに。ここからは、そのアンボックスから初期セットアップまでを紹介します。

1. Starlink Mini 開封の儀

まずは開封です。届いたStarlink Miniの箱を手に取ると、そのコンパクトさに驚きます。パッケージの寸法は約430×334×79mmほどで、ノートPCケースくらいの大きさ。重量も従来モデルに比べ格段に軽く、これまで最小でも合計4.6kgあったStarlinkキットが約1.1kgの本体まで軽量化されています。つまり14インチのノートパソコン程度のサイズ感で、バックパックにポンと入れて持ち運べるのです。箱を開けると、薄いアンテナパネル状の本体が姿を現し、その小ささと軽さからアウトドアのお供に最適だと感じました。

2. 技適マークの確認

日本国内で安心して使うために、まず技適マーク(技術基準適合証明)の有無をチェックします。Starlinkは電波を発する機器のため、日本国内使用にはこの認証が必須です (Starlink Mini は日本で使える?実機も手にいれて調べてみた | IIJ Engineers Blog)。2024年秋頃には未認証でしたが、2025年1月にSpaceXより日本発売が発表され、現在は正式に利用可能となっています。実際に本体裏面を見ると、小さく技適マークと認証番号を確認でき、国内で合法的に使用できることがわかりました。

3. 設置の準備と仮設置

それでは実際に設置してみましょう。まずは自宅の屋根の上に仮置きして動作確認します。付属のキックスタンドを使えば平らな地面や車の上にすぐ設置可能です。重要なのは空の開けた北向きの場所を選ぶこと (FAQ | スターリンクはどこに設置できますか?設置場所が知りたいです | 高品質アンテナ工事専門会社のクラウンクラウン)。日本においてStarlink衛星は主に北側の上空を通過するため、北方向に視界を遮るものがないロケーションが理想です。Starlink公式も「空が遮られていないこと」を設置条件に挙げており (Starlink | Roam)、木々や建物で視界が狭いと通信が途切れやすくなります。

仮設置では屋根の上に北側の空を見通せる位置にStarlink Miniを仮置きしました。標準タイプのDishy(自動で角度調整する丸型アンテナ)とは異なり、Miniはモーター非搭載で手動設置です。しかし視野角は110°と広く設定されており、自動で衛星を探知してビームフォーミングしてくれるため (Starlink | Specifications)、おおまかに空に向けて北側が開けていれば問題なく動作します。強風で飛ばされないよう安定した場所に置けば、特別な工事なしでどこでもインターネット環境を準備できる手軽さを実感しました。

4. アプリ設定と初期セットアップ

設置ができたら、専用スマホアプリ「Starlink」を使って初期セットアップを行います。まずスマホのWi-Fi設定でStarlink端末の初期ネットワークに接続し、アプリから案内に従ってWi-FiのSSID名やパスワードを設定しました(初回起動時はデフォルトのネットワーク名に接続する流れです)。設定後、アンテナが起動して衛星を探し始めます。

この段階でStarlink Mini本体のファームウェアアップデートが自動的に行われました。アプリ画面上に進行状況が表示され、約10分ほどでアップデート完了。その間はインターネット未接続状態でしたが、アップデート完了後に衛星ネットワークへの接続が確立されました。公式ヘルプによれば初回オンラインまで最大で30分ほど要する場合もあるとのこと (I cannot get online during initial setup. – Starlink Help Center)。今回は設置場所の視界が良好だったためか、電源投入から約15分程度でステータスが「オンライン」となり、通信が安定しました。Starlinkアプリには接続状況や衛星捕捉状況がリアルタイム表示されるため、アンテナの向き調整や問題切り分けも直感的に行えます。

5. 通信速度テスト

セットアップが完了したら、さっそく通信速度をテストしてみます。Starlinkアプリ内蔵のスピードテスト機能を実行したところ、下り(ダウンロード)約194 Mbps、上り(アップロード)約23 Mbpsという結果が得られました。公式仕様上は「下り最大100Mbps超」とされていますが 、実測ではその数値を大きく上回る高速通信が確認できました。一般的なStarlinkユーザの速度レンジ(下り約50~200Mbps程度 (Starlink Specifications))から見ても、この結果は上限に近い好成績です。天空が広く開けた環境でテストしたこともあり、衛星との直通リンクが良好だったのでしょう。

次に、StarlinkのWi-Fi経由でPCからGoogleのスピードテストを実施しました。結果は下り約180Mbps台、上り約20Mbps台と、アプリ計測と同等の数値が出ました。内蔵のWi-Fiルーター(IEEE 802.11ac, 3×3 MIMO対応)は最大128台のデバイス接続に対応する性能があり ( SpaceXが小型衛星アンテナStarlink Miniを日本で販売開始、3万4800円で高速インターネットアクセスが可能に – / XEXEQ(ゼゼック))、今回のように1台のPCが発揮する程度の通信ではボトルネックにならないようです。衛星通信ながらこの速度が出ている点は特筆すべきで、リモート会議や大容量ファイルの送受信もストレスなく行えるレベルと言えます。実際、テスト中の体感でもウェブ閲覧やHD動画視聴が地上回線と遜色なく快適に行えました。

6. Starlink Mini の拡張性

Starlink Miniは本体サイズや軽量性だけでなく、周辺機器との接続オプションも充実しています。たとえば、USB-C変換電源ケーブルを用いることで、PD(Power Delivery)対応のモバイルバッテリーから直接給電することが可能です。一般的なAC電源が確保できない車中泊やアウトドア環境でも、比較的低消費電力で稼働するため、場所を選ばず衛星インターネットに接続できる利便性が高まります。

また、アンテナにルーターが内蔵されているためアンテナに搭載されている有線LANポートを介して外部有線ネットワーク機器を追加できる点も特徴です。LANケーブルを接続し、そこからコンピュータやLANハブに繋ぐと複数台のPCや機器を有線で同時にインターネットに接続できます。Wi-Fiと有線LANを併用することで、リモート会議や大容量データのアップロードを行いながら、他の端末で動画ストリーミングやクラウド同期を並行して処理するなど、ネットワーク負荷の高い作業にも柔軟に対応が可能です。

さらに、バッテリー運用時に気をつけたいのが、アプリから「融雪機能(ヒーター)をオフ」にしておくこと。これは極寒地でアンテナ表面の雪を溶かすための機能ですが、常にオンになっていると消費電力が大きく増えてしまいます。気温や使用環境に応じて手動でオン・オフを切り替えれば、モバイルバッテリーや限られた電源での節電対策として効果的です。

7. 実際にどこで使う?活用シーンの想像

これだけの性能を持ち運べるStarlink Mini、どんなシーンで活躍するでしょうか。アウトドア好きのエンジニアとして想像が膨らみます。いくつか活用シーンを挙げてみましょう。

  • キャンプ場やオーバーランディング: 人里離れた秘境のキャンプ場でも、Starlink Miniがあれば高帯域インターネットに接続可能です。星空の下、焚き火を前にしながらビデオ会議に参加したり、撮影した4K動画をその場でクラウドにアップロードしたりといったことも夢ではありません。50GBまで使えるモバイル向けの「Roam」プランや無制限プランも提供されており、移動中や海外でも利用できるので車中泊やキャンピングカー旅行でも大活躍するでしょう。
     
  • 林業や土木作業の現場: 山奥の作業現場やインフラ工事現場など、携帯の電波すら届かないような場所でも、北側の空が開けていればStarlinkが通信手段を提供します。これにより、例えば林業の作業小屋から本部への映像中継や、隣地境界明確化での現場でのGPS補正データの取得、山間部の工事現場での図面データ共有もリアルタイムで可能になります。堅牢な設計で防水防塵(IP67)かつ-30℃~50℃の環境に耐えるため 、過酷なアウトドア環境でも安心して使えます。
     
  • 移動しながらのリモートワーク(デジタルノマド): 車やバイクで旅をしつつ各地でリモートワークをこなすデジタルノマドにもStarlink Miniは強い味方です。これまでモバイル回線に頼って圏外にヒヤヒヤしていた山間部や離島でも、空さえ見えれば高速インターネットが手に入ります。平均消費電力が約25Wと低めなのでポータブル電源や車のバッテリーでも駆動でき、文字通り「どこでもオフィス」を実現できます。世界100か国以上でローミング対応しているので、国境を越えた旅先でも通信手段を確保できるのは心強いですね。

想像しただけでもワクワクしてきませんか? テントの中から衛星経由でブログを更新したり、山小屋でコードを書きながら即GitHubにプッシュしたりと、Starlink Miniがあればこれまで諦めていた場所でのネット活用が現実味を帯びてきます。

7. 次回のフィールドテスト予告

今回は開封から自宅での試運転までをレポートしましたが、次回はいよいよ本格的なフィールドテストに挑戦します! 実際に山奥や海辺など電波のない環境へStarlink Miniを持ち出し、そのパフォーマンスを検証する計画です。移動中の接続にも対応しているとのことなので、車に積んで走行しながら通信できるか、といったダイナミックなテストも検討中です。

次回の記事では、どんな場所でどのようにStarlink Miniを使うのがベストか、実地で試した結果をお届けする予定です。果たして山頂のテント場でNetflixは観られるのか? 砂漠の真ん中でオンライン会議に参加できるのか? 今後のチャレンジにぜひご期待ください!

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