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キャンプ場が平日に売上を上げる方法:サマリー
本記事では、キャンプ場経営者が抱える「平日の集客と売上向上」という課題に対する具体的な解決策を紹介します。ターゲット顧客の見直し、施設の新たな活用法、料金体系の工夫など、すぐに実践できる方法から中長期的な戦略まで幅広く解説。
特に「ソロキャンパー向けプラン」「インバウンド対応」「企業利用の促進」などの具体的施策に焦点を当て、キャンプ場経営の安定化と収益向上を目指します。また、最新のトレンドや市場動向も踏まえながら、持続可能な経営のためのヒントを提供していきます。
キャンプ場が平日に売上を上げる方法:はじめに
キャンプは余暇・レジャーとして人気ですが、キャンプ場経営者にとって「繁忙期と閑散期の売上格差」は大きな課題です。特に平日の稼働率向上は多くのキャンプ場が直面している問題です。
この記事では、平日の売上や利益を向上させるための具体的な方法と実践手順を詳しく解説します。実際の成功事例や失敗事例も交えながら、実用的なアドバイスを提供します。
大きく分けて以下の3つの視点から対策を考えていきましょう。それぞれの方法には、即効性のあるものから長期的な準備が必要なものまで様々ありますが、自施設の状況に合わせて最適な組み合わせを見つけることが重要です。

キャンプ場が平日に売上を上げる方法:ターゲットの変更
平日にキャンプ場を訪れる可能性のあるゲストは誰でしょうか?
まず考えられるのは「平日が休みの人たち」です。具体的には、シフト制で働く方々、サービス業従事者、大学生などが主なターゲットになります。また、最近増加している「ワーケーション」実践者や、フリーランスの方々も有望なターゲットです。
これらの方々にキャンプを楽しんでもらうための戦略を考えていきましょう。ターゲットごとに異なるニーズや期待値があるため、それぞれに合わせた施策が重要です。
1. いつも呼んでないお客様を呼び込む
難易度 ★★☆☆☆
例えば、あなたのキャンプ場が週末や夏休みにファミリー層で賑わう場所だとしたら、平日の集客は現状のままでは難しいでしょう。ファミリー層(子供がいる家庭)は学校のスケジュールに縛られるため、平日の来場は困難だからです。
そこで、ソロキャンパーやデュオ(2人組)キャンパーをターゲットにすることを検討してみましょう。近年、これらの層は着実に増加しており、特に平日の利用が多い傾向にあります。具体的には以下のような施策が考えられます:
(1) 新規ソロキャンパーの開拓
ソロキャンパーが喜ぶサービスやプランを考え、積極的に宣伝しましょう。例えば:
- 横並び2サイトを1サイト分の料金で提供
- サイト間のプライバシーを確保するための植栽の設置
- フリーサイトの場合、平日は定員を通常の半分に制限
- コンパクトなレンタルギアの充実
- 平日限定で薪を一束サービス
- 女性ソロキャンパー向けの安心・安全対策の強化
- ソロキャンパー同士の交流スペースの設置(希望者のみ)
(2) 既存客のソロ利用促進
常連のお客様向けに特別なサービスやプランを提供しましょう。ファミリーキャンパーも、ライフステージによって参加人数が変わることがあります。リピーター向けの割引や特典を設けることで、「いつもの場所に平日も来る」という選択肢を提案できます。また、平日限定のポイント還元や、会員ステータスに応じた特典なども効果的です。
これらの施策を効果的に伝えるためには、SNSでの発信が重要です。適切なハッシュタグを使用したり、ソロキャンプの様子を動画で紹介したりすることで、新たなターゲット層にリーチしましょう。特に、InstagramやYouTubeでの情報発信は、若い世代へのアプローチに効果的です。
もし普段からソロキャンパーが多い施設であれば、これらの施策の効果は薄くなる可能性があります。新しいお客様の流入によって既存客が離れてしまうというジレンマもあるでしょう。しかし、リピーター向けの平日限定サービスは試してみる価値があります。
また、近隣に大学がある場合は、学生をターゲットにするのも一案です。デイキャンププランなどが効果的かもしれません。大学は毎年新入生が入学するため、一度人気が出れば口コミで広がり、長期的な集客につながる可能性があります。
ただし、若い層向けのサービスを提供する場合は、ある程度柔軟なルール設定を検討する必要があるでしょう。学生向けの割引制度や、学生証提示での特典なども検討に値します。

2. 価格やプランを変える
難易度 ★★☆☆☆
これは多くの施設がすでに実施していますが、効果的な方法です:
- 週末料金と平日割引料金の設定
- 平日限定の料金体系の導入
- 長期滞在割引の設定
- 早期予約割引の導入
宿泊業界全般で見られるように、需要の高い時期(週末・祝日・繁忙期)は料金を上げ、需要の低い時期(平日・閑散期)は料金を抑えることで、集客力を高めることができます。ダイナミックプライシングの導入も、将来的な選択肢として検討に値するでしょう。
ここで一度、あなたのキャンプ場の料金体系を見直してみましょう。一般的には以下のような分類があります:
- 1泊あたり
- 1区画(サイト)あたり
- 1幕(テント・タープ)あたり
- 1人あたり
- 設備利用料(共有設備利用のみ)
- 1月あたり(サブスクリプション)
- デイタイム利用料金(日帰り利用)
- 時間単位料金(短時間利用)
将来的には、時間あたりや平米あたりの料金体系も登場する可能性があります。また、AIを活用した需要予測に基づく変動料金制なども、技術の進歩とともに実現可能になるかもしれません。
これらの料金体系は、キャンプスタイルによって有利・不利が分かれることをご存知でしょうか?
例えば、「1泊あたり」や「1サイトあたり」の料金体系は、人数が多くなりがちなファミリーキャンプには有利ですが、ソロキャンプには不利です。逆に「1人あたり」や「1幕あたり」の料金はソロキャンプに有利で、ファミリーキャンプには不利になります。
そこで、平日限定で料金体系を変更するという戦略が効果的です。例えば、週末は「1サイト4人で8,000円」の場所を、平日は「1人あたり2,000円」に変更するといった方法です。実質的な値下げになりますが、予約のハードルが大幅に下がり、特にソロキャンパーにとって魅力的なプランになります。
ぜひ検討してみてください!

3. 海外のお客様を呼び込む
難易度 ★★★★★
平日のターゲットとして非常に魅力的なのが、海外からの旅行客(インバウンド)です。これは業界全体で最もポテンシャルを秘めているターゲット層であり、日本とは異なる祝祭日カレンダーで訪日するため、日本の平日に来場してもらいやすいという大きなメリットがあります。また、一般的に滞在期間が長く、消費単価も高い傾向にあります。
ただし、インバウンド客を呼び込むには多くのハードルがあります:
(1) 言語の壁
日本語のみ対応のスタッフではコミュニケーションが難しいですが、最近はポケトークなどの翻訳アプリを活用することで対応可能です。スタッフ全員が外国語を話せる必要はなく、基本的な英語フレーズと翻訳ツールを組み合わせることで、十分なおもてなしが可能になります。また、主要な外国語での案内表示や、ピクトグラムの活用も効果的です。
(2) 場内表記の多言語化
トイレ、シャワー、水道などの利用方法を多言語で案内する必要があります。機械翻訳を活用して専用の案内を作成するのも良いでしょう。特に安全に関わる注意事項や禁止事項は、ピクトグラム(絵文字)と組み合わせることで、言語に依存しない直感的な理解を促すことができます。また、スマートフォンで読み取れるQRコードを活用し、詳細な説明を多言語で提供することも検討に値します。
(3) キャンプ道具の提供
海外からキャンプ道具を持ち込むことは現実的ではないため、レンタル設備が必須です。コテージやキャビンがあるキャンプ場は有利であり、最初のハードルも低いでしょう。また、グランピング施設があれば、キャンプ初心者の外国人旅行者にも安心して利用してもらえます。レンタル品のラインナップを充実させることで、手ぶらで来場できる環境を整えましょう。特に、海外では一般的ではない日本独自のキャンプギアは、体験の目玉として活用できる可能性があります。
(4) アクセス手段の確保
日本で自国の運転免許を使用できる国は限られています(スイス、ドイツ、フランス、ベルギー、モナコ、台湾など)。それ以外の国からの訪問者は国際免許が必要です。公共交通機関と接続しているキャンプ場は大きなアドバンテージがあります。最寄り駅からの送迎サービスを提供したり、レンタカー会社と提携したりすることで、アクセスの障壁を下げることができます。また、近隣の観光スポットと連携したシャトルバスの運行なども検討に値します。
(5) 予約システムの多言語対応
残念ながら、多言語対応のキャンプ専門予約サイトは現時点では少ないようです。当面は、Booking.comなどのOTA(オンライントラベルエージェント)の活用が現実的な選択肢となります。自社サイトでの予約システムを導入する場合は、少なくとも英語対応は必須です。予約確認メールのテンプレートも多言語で用意しておくと安心です。また、キャンセルポリシーや利用規約なども、明確に多言語化しておく必要があります。
(6) 効果的な宣伝
まず認知されることが重要です。SNSや広告、OTAでの販促を通じてアピールしましょう。自社Webサイトの多言語対応も重要です。特に、外国人旅行者が利用するガイドブックやトラベルブログへの掲載を目指すことも効果的です。インフルエンサーを招待して体験してもらうことで、SNSでの拡散効果も期待できます。また、海外の旅行会社やツアーオペレーターとの連携も検討に値します。
(7) 明確な魅力の発信
「なぜあなたのキャンプ場に来るべきか」を明確に言語化する必要があります。単に「日本式のキャンプ」を売りにするのではなく、素晴らしい景観や特色あるアクティビティなど、強いアピールポイントを作りましょう。日本ならではの四季の変化や、地域の文化体験、地元の食材を使ったBBQなど、その土地でしか味わえない体験を強調することが重要です。また、インスタ映えするスポットの設置や、日本の伝統文化を体験できるプログラムの提供なども効果的です。
(8) その他の検討事項
保険、決済方法、緊急時対応なども重要な検討事項です。クレジットカード決済やモバイル決済(PayPal、Alipay、WeChatPayなど)に対応することで、外国人旅行者の利便性が大幅に向上します。また、緊急時の多言語対応マニュアルを準備し、スタッフ全員が基本的な対応ができるようにしておくことも大切です。さらに、食事の提供がある場合は、ベジタリアンやハラール対応なども検討が必要です。
これらを一つずつ進めていくには相当な労力と忍耐が必要ですが、まだ日本で十分に対応できている施設は少ないため、先駆者利益を得られる可能性があります。「海外からキャンプのために日本を訪れる」という文化はまだ確立されていませんが、世界的なキャンプブームを考えると、将来的には大きな市場になる可能性があります。ぜひ一度検討してみてください。また、地域の観光協会や自治体と連携することで、補助金や支援を受けられる可能性もあります。
こちらの記事とあわせてご覧ください。
キャンプ場のインバウンド対策

キャンプ場が平日に売上を上げる方法:使い方の変更
平日にほとんどお客様が来ない場合、施設の使い方自体を変えて売上を確保する方法もあります。以下にいくつかのアイデアをご紹介します。これらは、必ずしも従来のキャンプ場としての利用にこだわらない、柔軟な発想に基づく活用方法です。
1. ロケ地として使ってもらう
難易度 ★☆☆☆☆
テレビや動画撮影、商品の撮影場所としてキャンプ場を提供するという方法です。近年のアウトドアブームにより、様々なメディアが屋外ロケーションを求めています。自然の中での撮影は、商品やサービスに対して「自由」「開放感」「リラックス」といったイメージを付与できるため、多くの企業が求めているロケーションです。また、YouTuberやインフルエンサーによる動画撮影の需要も増加傾向にあります。
具体的なアプローチ方法としては:
(1) 人脈を活用した誘致
残念ながら、ロケ地選定は人伝いに行われることが多いのが現状です。できることとしては、貸切利用が可能であることを日頃からアピールし、人脈を広げることが重要です。すぐにできる対策としては、貸切利用の料金設定を明確にし、宣伝を始めることでしょう。地元の広告代理店や制作会社とのコネクションを作ることも有効です。また、過去に利用してくれた撮影クルーには、感謝の気持ちを伝え、良好な関係を維持することで、リピート利用や紹介につながる可能性が高まります。撮影実績をポートフォリオとしてまとめ、新規の問い合わせ時に提示できるようにしておくのも効果的です。
(2) ロケ地登録サイトの活用
こちらの方が手軽に始められます。「地域名 ロケ地登録」で検索すると、地域のフィルムコミッション(自治体の観光課が運営)や、ロケナビ(有料掲載)、ロケフィット(無料掲載)などのサービスが見つかります。これらのサイトに登録することで、映画やドラマ、CM、雑誌の撮影などの機会を得ることができます。登録の際は、施設の特徴や魅力を詳細に記載し、季節ごとの写真を複数アップロードすることで、イメージが伝わりやすくなります。また、ドローン撮影の可否や、電源設備の有無など、撮影に必要な情報も明記しておくと良いでしょう。
まずは自治体や無料掲載サービスに施設情報を登録しましょう。必ずしも即効性はありませんが、認知度を高める機会になります。また、登録後も定期的に情報を更新し、新しい写真を追加することで、検索上位に表示される可能性が高まります。さらに、撮影に適した時期や天候条件、アクセス方法なども詳しく記載しておくと、問い合わせの質が向上します。
ロケ地として使用される際は、施設名の露出や、SNSでの宣伝許可など、条件面での交渉も忘れないようにしましょう。撮影内容によっては、キャンプ場の名前がクレジットされたり、SNSで紹介されたりする可能性があります。これは無料の宣伝効果となり、新たな顧客層の開拓につながります。また、撮影の様子をSNSで発信することで、「あのドラマのロケ地になった」という付加価値を生み出すこともできます。ロケ地としての実績を積み重ねることで、施設の知名度向上にもつながるでしょう。

2. 地域の学校などに使ってもらう
難易度 ★★★☆☆
アウトドア事業では地域との連携が不可欠です。特に「学校」は平日の重要な顧客になり得ます。教育機関との連携は、社会貢献の側面もあり、地域における施設の価値を高める効果も期待できます。また、環境教育や体験学習の場としての活用も注目されています。
考えられる用途としては:
(1) 学校行事での利用
遠足や林間学校の目的地、アクティビティ実施場所としての貸切利用が考えられます。地域の学校をリサーチし、伝手があれば紹介してもらうか、直接コンタクトを取りましょう。宿泊が難しい場合は、日帰り利用プランを提案するのも良いでしょう。私立学校は予算の自由度が高い傾向があります。また、修学旅行の行程に組み込んでもらえるよう、旅行会社へのアプローチも検討に値します。
学校行事向けには、自然観察や環境学習、チームビルディングなどの教育プログラムを用意すると採用されやすくなります。教育的な要素を盛り込むことで、学校側も保護者に対して行事の意義を説明しやすくなります。また、安全面への配慮や、雨天時の代替プランなども事前に準備しておくことが重要です。SDGsの観点から、環境保全や持続可能性についての学習プログラムを提供するのも効果的です。
保育園が近隣にある場合は、日常の散歩コースとして利用してもらったり、保護者の集いの場として提供したりすることも考えられます。直接の収益にはならなくても、地域の憩いの場としての価値を高めることができます。定期的に自然体験プログラムを実施することで、子どもたちの成長を支援する場としての認知度も高まります。また、幼児向けの自然教育プログラムを開発することで、新たな収益源を創出できる可能性もあります。
学校向けの取り組みは、将来的な販促効果も期待できます。子どもたちが学校行事で訪れた場所が良かったという体験は、家族での再訪につながる可能性があります。「あのとき行ったキャンプ場にまた行きたい」という子どもの声がきっかけで、家族キャンプが実現することも少なくありません。地域に開かれた運営を目指す方にはおすすめの取り組みです。また、教育旅行市場へのアプローチとして、教育関連の展示会や商談会への参加も検討に値します。
(2) 第三の学習空間としての活用
コロナ禍の影響で、リモート学習が一般化しました。特に大学生は柔軟に講義を受けるケースが増えています。そこで、自宅でも大学でもない「第三の場所」としてキャンプ場を提供するという発想です。屋根、電源、Wi-Fiなどの基本設備に加え、講義後にBBQができるなど、大学にはない魅力が必要です。また、グループ学習やプロジェクトワークの場としても活用できる可能性があります。
この「第三の学習空間」というコンセプトは、大学生だけでなく、リモートワーカーや個人事業主にも拡張できる可能性があります。自然の中で集中して作業できる環境は、クリエイティブな発想を促進するとも言われています。平日の日中に限定した「ワーキングデイパス」のような料金プランを設定し、Wi-Fi環境と電源、作業スペースを提供することで、新たな顧客層を開拓できるかもしれません。また、コワーキングスペースとしての機能を持たせることで、地域の起業家や創造的な仕事をする人々の集まる場所になる可能性もあります。
これは実験的なアイデアですが、誰かがこの発想を発展させれば、新しい市場を開拓できる可能性があります。働き方や学び方の多様化が進む現代社会において、自然環境を活かした新しい空間利用の形は、大きな可能性を秘めています。特に、都市部から程よい距離にあるキャンプ場では、このような新しい使い方が受け入れられやすいかもしれません。

3. 企業に使ってもらう
難易度 ★★★★☆
平日の企業向けにキャンプ場利用を提案する方法です。従来から存在していましたが、営業の手間などから、アウトドア業界ではあまり積極的に取り組まれていない分野です。しかし、近年のワークスタイルの変化やチームビルディングの重要性の高まりから、企業研修や合宿の場としてのキャンプ場の価値が再評価されています。また、SDGsへの関心の高まりから、環境教育の場としても注目されています。大きく分けて2つのアプローチがあります:
(1) 企業研修・合宿での利用
企業の公式行事や社員合宿での利用を提案します。車で1〜2時間圏内の企業にメールやDMで連絡するのが地道ながら確実な方法です。特に、創造性やチームワークを重視するIT企業やクリエイティブ産業は、従来の会議室とは異なる環境での研修を好む傾向があります。また、スタートアップ企業やベンチャー企業も、柔軟な発想で新しい研修場所を探している可能性があります。
企業向けには、単なる場所貸しではなく、チームビルディングプログラムやアウトドア研修などの付加価値を提供することで差別化できます。例えば、「自然の中での問題解決」「アウトドアクッキングを通じた協調性の育成」「環境保全活動を通じたCSR体験」など、企業の目的に合わせたプログラムを開発することで、採用されやすくなります。また、SDGsの観点から、環境教育や持続可能性についての研修プログラムを提供するのも効果的です。
最近では、ビジネス合宿や研修を専門とする「コミット」や「コワーケーション」などのサービスも登場しています。温泉施設専門のサービスもあるので、ぜひ検索してみてください。これらのプラットフォームに登録することで、企業からの問い合わせが増える可能性があります。また、地域の商工会議所や経済団体との連携も、企業利用の促進に効果的です。
ただし、最低限のビジネス環境(電源やWi-Fi)が必要であることに注意が必要です。プロジェクターやスクリーン、ホワイトボードなどの会議設備も用意できると良いでしょう。設備が不十分な場合は、キャンプをテーマにした独自のプログラムを開発することも検討しましょう。例えば、「デジタルデトックス研修」として、あえてテクノロジーから離れた環境で行う研修プログラムなども考えられます。
(2) 企業の福利厚生としての提案
人材確保が課題となる中、企業は福利厚生の充実に力を入れています。平日利用の回数券を企業に販売し、社員に使ってもらうという方法も効果的です。社員のリフレッシュやワークライフバランスの向上に貢献できるサービスとして提案することで、企業側も導入しやすくなります。
具体的には、「社員特別割引券」や「企業会員制度」などの形で、平日限定の特別料金を設定し、企業に提案します。利用実績に応じたボリュームディスカウントや、社員の誕生月特典なども喜ばれるでしょう。また、社員のファミリーキャンプを支援する「家族サービスデー」のような企画も、企業の福利厚生担当者にアピールできるポイントです。
企業だけでなく、労働組合や福利厚生サービス事業者にアプローチするのも一案です。組合員向けの会報誌などに掲載してもらえる可能性があります。「施設の地域名 労働組合 福利厚生」などで調査してみましょう。福利厚生代行サービス(ベネフィット・ワン、リロクラブなど)に登録することで、多くの企業の社員に認知してもらえる機会も増えます。

4. ヘリコプターの発着場にする
難易度 ★★★★★
施設が開けた平地である場合、ヘリコプターの離発着場として活用する可能性もあります。現在、日本では次世代の移動手段としてヘリコプターが注目されています。主に観光チャーターですが、富裕層の間ではタクシー利用も一般的になりつつあります。
キャンプ目的でヘリコプターを利用するケースは稀ですが、周辺に高級宿泊施設がある場合はチャンスかもしれません。その宿のゲスト向けヘリ発着場として提供し、発着料金を受け取るというビジネスモデルが考えられます。また、ヘリコプター観光ツアーの発着地点として活用することで、キャンプ場自体の知名度向上にもつながる可能性があります。
ヘリコプターの発着場として認定されるためには、一定の条件を満たす必要があります。主な要件としては、十分な広さの平坦地(最低でも直径30メートル程度)、障害物のない進入経路、消火設備、風向指示器などが挙げられます。また、地元自治体や航空局との協議も必要になります。
ただし、平日や閑散期にしか使えない可能性があることや、ヘリコプターの離発着場登録、運行事業者との協議、騒音問題など、多くの課題があります。特に騒音については、周辺住民や他のキャンプ客への配慮が必要です。運用時間の制限や、防音対策などを検討する必要があるでしょう。
難易度は高いものの、検討する価値はあるでしょう。特に、富裕層向けのグランピング施設を運営している場合や、アクセスが不便な立地にあるキャンプ場では、差別化要素として大きなアピールポイントになる可能性があります。「ヘリコプターでしか行けないキャンプ場」という希少性は、特別な体験を求める層に強く訴求できるでしょう。
5. 売り方を変える(サブスクリプション)
難易度 ★★★★★
根本的に収益モデルを変更する方法として、サブスクリプション(定額制)の導入が考えられます。従来の「一泊いくら」から「一月いくら(○回使い放題)」などの形態に変更することで、平日・週末を問わず安定した収益を確保できます。
サブスクリプションモデルの最大のメリットは、安定した収入源の確保と顧客との長期的な関係構築です。会員は定額料金を支払うことで、より頻繁に施設を利用するようになり、結果として施設への愛着も深まります。また、事前に収入が予測できるため、経営の安定化にもつながります。
具体的なサブスクリプションプランとしては、以下のようなものが考えられます:
- 月額会員制:月に数回の利用権を含む基本プラン
- シーズンパス:特定のシーズン(春夏など)限定の利用権
- 平日パス:平日のみ利用可能な割安プラン
- プレミアム会員:優先予約権や専用サイト、特典付きの上位プラン
キャンパーの中には一つの場所に繰り返し訪れる人もいれば、様々な場所を巡りたい人もいます。近隣の他のキャンプ場と連携して始めるのも面白いアイデアかもしれません。

キャンプ場が平日に売上を上げる方法:その他のアイデア
ターゲットや使い方の変更にとらわれない、別角度からの利益向上策も考えてみましょう。
1. そもそも閉じてしまう
難易度 ★☆☆☆☆
売上向上が難しい場合、平日は営業しないという選択肢も合理的な場合があります。これまでの平日売上と経費(人件費、光熱費など)を比較し、閉鎖によって赤字が縮小するのであれば、平日休業も有効な戦略です。全日ではなく、火曜〜木曜のみ閉鎖するなどの部分的な対応も検討する価値があります。
事業リソースは有限ですので、浮いた時間を他の取り組みに充てることで、事業全体の価値を高められる可能性があります。
例えば、休業日を活用して以下のような取り組みが考えられます:
- 施設の美観管理や整備
- スタッフ研修やチームビルディング
- 新サービスの開発や検討
- マーケティング活動の強化
これらの取り組みが、間接的に集客力向上につながることもあります。
2. 人の使い方を変える
難易度 ★★★☆☆
平日の空き時間を活用して、別の収益源を創出する発想です。
最も親和性が高いのは「モノづくり」でしょう。キャンプ場から出る資材やゴミに価値を見出し、リメイクして販売することを検討してみてください。スタッフの遊休時間を活用して、美観維持だけでなく、販売可能な商品開発に取り組むのも重要です。
また、Webに関連する仕事も検討の余地があります。一定のスキルが必要になりますが、空き時間を活用した副業的な取り組みとして考えられます。
ただし、アウトドア事業は自然や天候との闘いでもあり、余裕がないケースも多いでしょう。無理な取り組みは長続きしないため、適切な休息日を設けてリフレッシュする体制づくりも重要です。

まとめ
ここまで、キャンプ場が平日に売上を上げるための具体的な方法を紹介してきました。まだ試していない施策があれば、ぜひチャレンジしてみてください。また、「こんな方法もある」というアイデアがあれば、ぜひ共有いただければ幸いです。
キャンプ場経営において、平日と週末、閑散期と繁忙期の売上格差は非常に大きな課題です。これに加え、天候リスクや災害リスクもあり、事業としては不安定な側面があります。
この売上の変動を可能な限り平準化することが、事業の安定化につながります。安定的な利益体制が構築できれば、スタッフへの還元や設備投資の拡充など、できることが増え、結果としてお客様により良い体験を提供できるようになります。
今回紹介した施策は、大きく以下の3つの視点から構成されています:
ターゲットの変更:売上構造はそのままに、顧客ターゲットを変える
使い方の変更:売上構造と顧客ターゲットの両方を変える
その他のアイデア:利益に着目し、費用削減やリソース再配分を行う
これらの考え方は、キャンプ場だけでなく、アウトドア関連の他の業態にも応用できる可能性があります。
皆様のキャンプ場経営がより安定し、発展することを心より願っています。


株式会社Okibi代表。
アウトドア業界のDX推進や事業支援を手がけ、キャンプ場運営やWebメディア 「OUTSIDE WORKS」 を運営。さらに、キャンプ場のデジタルツイン化を実現する 「キャンビュー」 を開発し、アウトドア体験の革新に取り組む。
業界の発展と新しい価値創出を目指し、挑戦を続けている。