「自然と畏怖」と書くと、違和感のある組み合わせだと思うかもしれませんが、実はこの両者、とっても相性が良いのです!
今回は「畏怖」という感情が私たちに及ぼす影響と自然との関係性について「How Awe-Inspiring Experiences Can Make You Happier, Less Stressed And More Creative」を参考に考えてみましょう。
畏怖とは?
「畏怖」というと、何か恐ろしいものを見た時の怖さを表現する際の言葉、という印象をお持ちの人もいるかもしれませんが、自分の想像や体験を超越した素晴らしい何かに出会ったときに感じる「神聖な気持ち」や「謙虚な気持ち」「崇高で尊いさま」を表す際にも使います。
人間が創り出したものに感じることもありますが、多くの人は大自然の美しさや壮大さなどに畏怖の念を抱くことがあると言われています。滝や山、オーロラや砂漠など、まるで夢でも見ているかのような壮大な自然景観や、奇跡としか思えないような景色を目にしたときなどに、畏怖の念を抱いた経験をお持ちの方もいらっしゃることと思います。
関連記事:青ヶ島、断崖絶壁が作り出す絶景の島
畏怖と時間の感覚
2012年のスタンフォード大学の研究によると、畏怖を感じた人は、時間の感覚が広がるそうなのです。どういうことかと言うと、畏怖の念を抱くよう設計したテレビCM(滝、クジラ、宇宙空間を含む)を被験者に見せるという実験を行ったところ、被験者は「物事を成し遂げるだけの時間がたっぷりある。」「時間が広がった。」という感覚を強く得たそうです。
つまり、畏怖の念を抱くと、「時間が足りない!」という感覚から、「時間はたっぷりあるんだ!」という感覚へと変化するのだそうです。時間に余裕があるという感覚を覚えることで、日々時間に追われてプレッシャーを感じる生活やそのプレッシャーからくる体調不良に変化をもたらし、改善へと導いてくれる可能性があると言います。
人は自分に余裕がないと、他人を助ける気持ちを忘れてしまいがちですが、畏怖を感じて時間的感覚に余裕ができると他人に手を差し伸べる優しさが生まれ、結果として生活の質や幸福感の向上につながるのだそうです。「畏怖」効果、何だかスゴイですね!
畏怖と自然
さて、それでは畏怖の念を抱くにはどうしたら良いのか、ということになりますが、最適なのはやはり自然の中だと言われています。山の頂から見る壮大な眺めや、広大な海や砂漠、爆音を轟かせながら落ちる滝etc……挙げればきりがないほどさまざまな形の自然が存在し、私たちに感動や驚きを与えてくれます。
そして、想像を絶するスケールの大自然は、私たち一人ひとりがどれだけちっぽけな存在なのかを知らしめるがごとく、圧倒的な存在感を放ちます。その強大さや崇高さを目で見、体で感じ、畏怖の念を抱くことで、己が抱えている悩みや不安などはどこかへ吹っ飛んでしまうような感覚さえ覚えます。
関連記事:滝の驚きの癒やし効果!そばでじっとしているだけで効果あり
人は悩みや不安から解放されると、より幸福感を得るようになり、生活の質は自然と向上します。また、自然に対する感謝の念を持つようにもなっていくのです。自然はまさに、畏怖の念を呼び起こすのにぴったりな場所であり、なおかつ人を幸せへと導いてくれる場所、というわけなのです。
さらに、畏怖の経験は、物事を別の視点から見られる柔軟な考え方を促進し、創造性までもアップしてくれるそうですよ!
畏怖の念を抱くほどに心を震わせる大自然、そんな出会いを目指して旅をしてみませんか?
《参考URL》
How Awe-Inspiring Experiences Can Make You Happier, Less Stressed And More Creative|The Huffington Post
Carolyn Gregoire(意訳:菊地薫)
Nature Serviceのウェブメディア NATURES. 副編集長。
自然が持つ癒やしの力を”なんとなく”ではなく”エビデンスベース”で発信し、読者の方に「そんな良い効果があるのなら自然の中へ入ろう!」と思ってもらえる情報をお届けしたいと考えています。休日はスコップ片手に花を愛でるのが趣味ですが、最近は庭に出ても視界いっぱいに雑草が広がり、こんなはずじゃなかったとつぶやくのが毎年恒例となっています。