先日、「キャンプやハイキング時のクマ対策、考えたことありますか?」と題して、クマ対策に関する記事をご紹介しました。もちろん、ハイキングやキャンプを安全に楽しむことがクマ対策の目的の1つではありますが、もう一つ大切なことを忘れてはいけません。それはクマの命です。今回は「WE KILLED A BEAR」より、クマの命の観点からクマ対策の必要性を考えてみたいと思います。
人間のちょっとした行動が引き金
この記事には、カナダ、ブリティッシュコロンビア州にあるとても美しい湖、ガリバルディ湖における出来事が書かれています。人間がキャンプ場やハイキングコースなどでとった行動が、クマの命を奪う引き金となってしまったそうです。
その行動が具体的に何だったのかと言いますと、
- 湖やトレイル周辺にゴミを放置した。
- 地面に食べ物を落としてしまったが、拾わずそのままにした。
- 食べ物をテント内に持ち込んで夜を過ごした。
といったことなのです。皆さまも、心当たりありませんか?
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食べ物の匂いはクマを寄せ付ける
ある時、一頭の子熊がガリバルディ湖のキャンプサイトに迷い込みました。恐らく母親から独り立ちした初めてのシーズンではないかと思われ、お腹が空いていたようです。子熊はキャンプサイトにいる人間を恐れている様子でしたが、空腹のあまり、人が残したゴミや地面に落ちた食べ物の匂いにつられて、ついつい来てしまったのです。
湖周辺のレンジャーたちは子熊を追い払い、クマ出没注意の看板を立てて、遊びに来る人たちに食べ物の取り扱いに注意するよう促しました。しかしそれでも、ゴミや食べ残しなどが放置される、といった状況が続いたそうです。本来は人を怖がるクマですが、人の集まるキャンプサイトに行けば食べ物にありつける、ということを学習させてしまいました。
レンジャーたちの悲しき決断
ある晴れた日のガリバルディ湖。何百人ものハイカーやキャンパーが景色を楽しみ、写真をとり、ランチを楽しんでいました。人のいるところに行けば食べ物にありつける、そう認識した子熊は、もはや人間を恐れる様子もなく、またもやキャンプサイトへ戻ってきてしまったのです。
子熊がハイカーを襲ったり、テントのなかに入ってきたりするのは時間の問題でした。それゆえ、レンジャーはクマの殺処分という悲しい決断をし、一頭の子熊の命が奪われました。
ゴミや食べ物を放置したり、食べ物をテント内に持ち込んだりした人たちは、ただキャンプに行っただけ、ハイキングに行っただけと思ったかもしれません。しかし、その行為がクマを引き寄せ、人を襲う可能性を高め、それがクマの殺処分を引き起こしました。この子熊が本当に殺される必要があったのかを私たち人間は考えなくてはいけません。
川や湖、森や山などの自然に足を踏み入れるのであれば、そこに住む生き物たちのことも考え、何をして良いのか悪いのか、想像力を働かせる必要があります。
前回の記事で、クマ対策を考えて欲しいとお伝えしましたが、それは自分のため、他人のため、そしてクマのためでもあるのです。マナーを守り、自然やそこに住む生き物のことも考えつつ、アウトドアを楽しむ習慣作りを皆で心がけるようにしていきましょう!
《参考URL》
YOU KILLED A BEAR|HAPPIEST OUTDOORS
(意訳:菊地薫)
Nature Serviceのウェブメディア NATURES. 副編集長。
自然が持つ癒やしの力を”なんとなく”ではなく”エビデンスベース”で発信し、読者の方に「そんな良い効果があるのなら自然の中へ入ろう!」と思ってもらえる情報をお届けしたいと考えています。休日はスコップ片手に花を愛でるのが趣味ですが、最近は庭に出ても視界いっぱいに雑草が広がり、こんなはずじゃなかったとつぶやくのが毎年恒例となっています。