森の中を歩くと、すがすがしい気持ちになって、疲れ切っていたはずの心が不思議と前向きになれた。
そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。実際、人の心の問題が叫ばれるようになったここ数年、森林浴と健康についての研究は世界中で大きな注目を浴びるようになりました。ただし、それらの研究の多くは、主に血圧や心拍数などの心臓血管系の生理学的指標への影響が調べられるだけにとどまっていました。

こうした現状に対し、浙江省老年医学研究所MAO Gen Xiangらは、質問紙調査による心理学的指標に加えて、血中の酸化ストレス指標、免疫指標、内分泌指標など、より多角的な視点から森林浴の効果を実証しようと試みました。この研究では、20名の実験参加者(男、20.79±0.54歳)を、

  1. 午前・午後それぞれ1時間半ずつ計3時間森の中の決められたコースを歩く群
  2. 1.同様計3時間市街地の決められたコースを歩く群

にランダムに振り分けました。そして、上記の運動を2日間行った後、3日目の朝に質問紙調査を行うとともに実験参加者の血液を採取し、酸化ストレスの指標となるマロンジアルデヒドレベル、免疫指標(インターロイキン-6、TNF-αなどの炎症性サイトカインレベル)、内分泌指標(コルチゾール、テストステロン)などを分析しました。結果、森でのウォーキングを行った群の方が市街地でのウォーキングを行った群と比べて、酸化ストレスの指標となるマロンジアルデヒドレベルの低減、炎症性サイトカインレベルの低減、ストレス反応の指標となるコルチゾールレベルの低減、ネガティブ感情(緊張、うつ、疲れなど)の低減・ポジティブ感情(活力)の上昇などが観察されました。これらの結果は生体内の様々なレベルで森林浴が健康増進に寄与することを示しています。

今後さらに研究が進めば、森林浴が健康に及ぼす影響についてのメカニズム解明が期待されるでしょう。

私たちの暮らす日本は、国土のおよそ7割が豊かな森林によって覆われています。すぐそばに疲れ切った心をやさしく癒してくれる場所があるのに、私たちはその素敵な力に気づいていませんでした。
次の週末、少し足を伸ばして森にでかけてみてはいかがでしょうか。

【紹介した論文】
Effects of Short-Term Forest Bathing on Human Health in a Broad-Leaved Evergreen Forest in Zhejiang Province, China
Biomedical and Environmental Sciences, 25, 317–324.

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