企業がワーケーションの導入を検討する際、「ワーケーション=パソコンワークをする人向け」と考える傾向があります。しかし、ワーケーションはフィールドワークを伴う仕事でも活用できることをご存じでしょうか。

本記事では、2021年7月下旬に長野県信濃町にあるノマドワークセンターをフィールドワークで活用した、信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社のワーケーション事例をご紹介します。

ワーケーションプラン

パソコンワークもフィールドワークも可能な施設

信濃町ノマドワークセンターは、長野県にある「法人向けレンタルオフィススペース」。 パソコン作業はもちろんのこと、フィールドワークが必要な場合にも適しています。

2階は開放感あふれるワークスペースとなっており、森に包まれているような感覚のなかでパソコン作業やディスカッションなどを行えます。

一方、1階のピロティ(注1)部分は、ロボットなどのテストを行うのに十分な広さがあり、フィールドワークに活用できます。(注1:壁がなく柱だけの構造部分のこと)

また、同じ敷地内にあるキャンプ場の広大な敷地を存分に利用したドローンの実証実験も可能ですし、近隣の農地に出向いて農業に関わるフィールドワークを実施するといった使い方もできます。

朝日を浴びるノマドワークセンター
2階がPC作業やディスカッションなどを行えるワークスペース。フィールドワークを行う際は、ピロティ部分やキャンプ場内を使える。

信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社とは

信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社(以下「SRI」)は、ノマドワークセンターを拠点にし、IoT・Robotics・AIといった最新技術の活用により、地域の社会課題の解決を目的として設立されました。

人口の減少と高齢化に直面している地域住民の方々の課題に貢献するために、たとえば、

  • 自動畦畔(けいはん)草刈り機の開発
  • 雪下野菜の保冷環境のリアルタイムセンシング
  • 山小屋へ食料などを運搬する大型ドローンの開発

など、さまざまな実証実験やプロトタイピングのプロジェクトを行っています。

現在、SRIが集中的に取り組んでいるのは、田んぼのあぜ道に生える雑草を自動で刈り取る「自動草刈り機」の開発です。

ところで、「ノマドワークセンターを拠点にしているSRIが、同センターでワーケーションをするというのはどういうこと?」と、疑問をお持ちになった方もいらっしゃると思います。

実はSRIのスタッフにはテクニカルボランティアも多く参画しています。普段は大手自動車メーカーや通信機器メーカーなどに勤務しており、週末や連休になるとノマドワークセンターに「Work」(仕事)+「Vacation」(休暇)感覚、つまりはワーケーションをしに集結するのです。

技術面の知識を持ち寄り、英知を結集して自動草刈り機をスタッフの一員として作り上げつつ、キャンプ場で休暇を楽しんでいます。ボランティアの方がなぜそんなに頑張れるの?とお思いになるかもしれませんが、これがなんとも楽しいのだそうです。

それぞれが勤務する会社では決して触ることのないツールやプログラム、このテクニカルボランティアという機会がなければ決して出会うことがなかった仲間たち。そして、自分の知識が役立ったときの充足感。こういったすべての過程を通して得られる経験や達成感がたまらなく楽しいのです。

ノマドワークセンターと田んぼでフィールドワークの日々

さて、実際のフィールドワークですが、どのように行われてきたのでしょうか。これまでノマドワークセンターのピロティをフル活用し、自動草刈り機の開発を行ってきました。試行錯誤を繰り返しながら試作品を作り込み、プログラムの調整や動作環境などのテストを継続的に実施します。

自動草刈り機の試運転中
ノマドワークセンターのピロティで自動草刈り機の試運転中。夏の暑い日は日陰がありがたい。


そして今回、車を少し走らせ、近隣の農家さんの田んぼで試作機のテスト走行へ。

田んぼでフィールドワークするスタッフ
足元しか写っていませんが、皆、目をキラキラさせて草刈り機の動きに注目。

全国的に少子高齢化で後継者や人手不足に悩むなか、ここ長野県信濃町も農業の担い手が減少しています。こういった地域課題の解決支援をすべく、最新技術を駆使して自動草刈り機を開発しています。

実証実験の途中から、田んぼのオーナーさんも交えて草刈り機の課題などについて語ります。

トラクターで登場したオーナー
田んぼのオーナーさんと議論中。途中、農業に従事している通りすがりの方も試作機を興味深げに眺めていきました。

オーナーさん曰く、「夏は1~2週間に1回は草むしりをしなければならないが、この時期はトウモロコシの収穫が忙しく、田んぼの雑草に手をかける時間が取れない。」とのこと。定期的に草刈りを行うことで、イネ科の雑草から、芝系の雑草に変わっていくなど、理想的なあぜ道に変化させていくことが期待できます。そのためにも自動草刈り機が必要なのです。

田んぼのあぜ道
試作機の動作を目視で確認
プログラムを車内で調整中
適宜プログラムを調整中。田んぼにいるメンバーとの連携が重要。

あぜ道には傾斜があるためロボットが田んぼにダイブする可能性も。それを制御するための緊急停止プログラムを組むなど、課題を一つずつ潰していく必要があります。

筆者もあぜ道を実際に歩きましたが、雑草が生えていると平坦な道だと錯覚を起こします。平らな場所はむしろ少なく、特に端の方は傾斜もきつい。

田んぼと草刈り機

田んぼでの実証実験から見えてきた課題を持ち帰り、ノマドワークセンターの敷地内の傾斜地を使いテストを繰り返します。

パソコンでプログラムの調整
完成を目指して大真面目に取り組む。でも、作業は実に楽しい!
傾斜地で実証実験
さまざまな状況を想定する必要があるため、キャンプ場の傾斜地は実験に役立つ。

時には夜まで頑張った日も。

日が暮れた後のピロティ
目標までもうひと頑張り!

非日常を味わいながらの仕事と宿泊

田んぼでフィールドワークを行った日、少年に帰ったかのような目の輝きで作業をしているSRIのスタッフに「楽しそうですね」と声をかけたところ、「楽しそう、ではなく、楽しいんだよ!」という返答がかえってきました。

普段は都市部で仕事をしているスタッフも多くいます。それゆえ、長野県信濃町という自然の恵みに囲まれた土地そのものを楽しんでいる様子でした。自然豊かな場所で太陽の光を浴び、風に吹かれ、名前もわからない虫や鳥の声を聞く。地域の課題解決のために仕事もするのですが、圧倒的な自然を味わえるだけで明るい気分になれるのではないでしょうか。

カエルに夢中になる大人たち
小さなカエルがぴょんぴょんと跳ねる。しばしカエル探しに夢中!

日中、体をめいっぱい自然の中で動かした一行は、仕事が終われば、それぞれのテントやキャンピングカーに”帰宅”。ご家族で来ている方もいましたので、子どもと遊ぶ、森を散策する、キャンプ飯を楽しむ、温泉に行く、たき火をする、花火をするなど、大人も子どもも何かから解き放たれたかのようなリラックスした表情を浮かべ、余暇時間を満喫していました。

SRIのスタッフが大真面目に、しかし時には心の底からはじけるような笑顔で仕事をし、それが終われば家族とともにキャンプを楽しむ。こういう働き方、普段はできないですよね。あまりにも楽しそうな様子を見て、正直うらやましいとさえ思いました。

働き方改革が進み、柔軟な働き方を選択できる人が以前に比べて増えてきました。それでも、今回ご紹介したフィールドワークが必須の職種の方々のなかには、ワーケーションなど絶対に無理と考えているケースもあることと思います。

より多くの人たちに、多様な働き方の機会を提供したい。そんな思いを抱き、信濃町ノマドワークセンターはワーケーション施設として存在しています。

「自由な場所で、いつもと同じように働く」

そんな働き方を皆さまも考えてみてはいかがでしょうか。

Natures.編集部より

Nature Serviceは自然と融合した法人向けレンタルオフィススペース、信濃町ノマドワークセンターを運営しています。30人強を収容できるワークスペースを有し、近年大きな注目を集めているリモートワークやワーケーションを実践できる施設です。また、起業家や経営者の方々が落ち着いて働けるように、1~3人程度の少人数でご利用できるエグゼクティブ向けのワークスペースもご用意しております。さらに、ノマドワークセンターのある敷地内にはやすらぎの森オートキャンプ場が併設されています。ワーケーションのなかにキャンプを取り入れ、ぜひ、皆さまには新しい働き方の1つとしてご利用していただけることを願っております。都会と変わらない作業やネット会議を行いながら、時折施設周辺を散歩し、木々や葉っぱの擦れる音、鳥たちの鳴く声に耳を傾け、生産性や創造性などの知的労働生産性の高まりを肌で感じ取ってみてはいかがでしょうか。

信濃町ノマドワークセンター

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