生態系サービスに関する国際学会大会であるESP Conferenceのアジア大会に、Nature Serviceの共同代表理事である赤堀とともに基調講演者として出席しました。Nature Serviceの活動の一環として、基調講演とパネルディスカッションの概要をご報告します。
Nature Serviceに求められた役割
大会テーマは「エコヘルスと生態系サービス」。
自然の恵み(=生態系サービス)に関する基調講演が、研究者、政策立案者、実践者のそれぞれの立場から予定されており、Nature Serviceはこのうち「実践者」、つまり、自然を利活用したビジネスモデルに関して講演をしてもらえないか、ということでした。
ESP(Ecosystem Services Partnership)は、基本的に研究者のコミュニティーです。研究者の集まりに、講演者としてなぜNature Serviceに白羽の矢が立ったのかと当初不思議に感じました。ですが、自然の中で仕事をする・遊ぶことなどを通し、人のメンタルヘルスに及ぼすプラスの影響を考えて活動していることから、わたしたちの活動に興味をもっていただいたそうです。そういうことならばと、講演をありがたく引き受けました。
日程は2021年12月14~17日の4日間。全日程オンライン形式かつ英語での参加となりました。
実践者の立場からビジネスモデルを余すところなく
せっかくいただいた国際交流の機会。Nature Serviceのミッション・ビジョン・バリューをベースに、自然をどのように利活用して社会の役に立とうとしているのか、以下の事業を中心にご説明しました。
- B to G (Business to Government):
政府系の事業から依頼される特殊な撮影など(動画:国立科学博物館「国立公園 -その自然には、物語がある-」等) - B to B (Business to Business):
法人向けリモートワーク施設(信濃町ノマドワークセンター) - B to C (Business to Consumer):
個人向けのキャンプ場(やすらぎの森オートキャンプ場)
その上で、これらを実現可能にしているNature Serviceの強みを以下4つの観点からご説明し、ビジネスモデルとあわせてプレゼンを行いました。
- オウンドメディア
- マーケティング手法
- 独自のスタイル
- IT・DX化
そして最後に、ソーシャルエンタープライズを目指しながら活動を行っていること、より良い未来のために、バリューサイクルモデルの確立を目指している旨を付け加え締めくくらせていただきました。
関連記事:わたしたちを突き動かすモノー Nature Service のビジネスモデル ー 第1回
研究者に囲まれながらのパネルディスカッション
基調講演と同日の午後、Nature Serviceを含む計9名のパネリストにてパネルディスカッションも行われました。わたしたち以外のパネリストは、全員研究者や政府関係者など。こちらもまた、せっかくのチャンス!とばかりに、日頃からわたしたちが自然の良さを伝えたい時に困っていることを率直にお話ししました。
3つの議題に対し、Nature Serviceは以下のようにお伝えしました。
【議題1】 健全な地球環境を実現するための課題は何だと考えられるか?(Nature Serviceの視点から) | 【回答】 ・どれだけ自然に助けられ生かされ、自然がどれだけプラスの影響をわたしたちに与えてくれているのかを認識する機会が少ない。 ・自然と触れ合う機会が失われ、地球環境を守る重要性を自分ごととして捉えられない人が多い。 |
【議題2】 解決策とエコシステム・サービスの役割とは? | 【回答】 ・Nature Serviceにできることは、SDGsに力を入れ、自然に興味を持ってもらう情報などをウェブメディアを通して発信すること。 ・自然のおかげで人間が心身ともに健康になることを体感してもらう機会を創出すること。 ・自然の中で、遊んだり、働いたりする環境を増やし、楽しさや癒やしを体感してもらう。それにより自然を大切にしようとする意識付けを行うのが自分たちにできることだと認識している。 |
【議題3】 解決策を実現するために、ESPはどのような手助けができるか? | 【回答】 ・研究者や専門家の皆さまには、自然が人に与えるプラスの影響などについて、より多くの研究を行っていただき、エビデンスを作ってほしい。 ・それを一般人でもわかるレベルにかみ砕き、記事もしくは情報として提供してほしい。 ・そうすればNature Serviceは、キャンプ場やリモートワーク施設を利用する個人や企業に対し、自然の良さをより深く伝えることができる。 ・これを機に、わたしたちのようなNPOを含む、さまざまなバックグラウンドの人たちと連携してほしい。 |
今回のESP Conferenceはアジア地区限定の大会ではあったものの、さまざまな国籍の方が参加し、研究者の方々が日頃どのような研究を行っているのか、その一端を知ることができました。パネルディスカッションでは、多くのパネリストが地球環境の健全化だけに注力するのではなく、人との共存を同時に考えながら、地球も人も健やかでいられる施策を目指すべきだとの声が多く聞かれました。
基調講演ならびにパネルディスカッションに参加する機会をいただいたことは、Nature Serviceのこれまでの10年間の活動を振返り、そして将来に向けて何をしていきたいのかをあらためて考えるきっかけとなりました。今後も、自然の中へ入り、自然の癒やす力を通して健全な心を保つ、もしくは取り戻してもらう機会を、わたしたちは創出しながら活動を続けていきたいと思います。
最後に、多くのサポートをいただいた長崎大学の太田貴大准教授ならびにESP Asia Conferenceのオーガナイザーの一人であるDolf de Grootさんに、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
Nature Serviceのウェブメディア NATURES. 副編集長。
自然が持つ癒やしの力を”なんとなく”ではなく”エビデンスベース”で発信し、読者の方に「そんな良い効果があるのなら自然の中へ入ろう!」と思ってもらえる情報をお届けしたいと考えています。休日はスコップ片手に花を愛でるのが趣味ですが、最近は庭に出ても視界いっぱいに雑草が広がり、こんなはずじゃなかったとつぶやくのが毎年恒例となっています。
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