世界各地で土地の劣化が進んでいます。宅地や工業用地の増加、地球温暖化等の気候変動による砂漠化、化学肥料の使用や過剰耕作などによる農地の劣化などさまざまですが、その原因はどれも人間活動に起因しています。こうした状況はますます進み、2050年までに地球上の土地の95%が劣化すると予想されています。

「母なる大地」とも言われる土地の危機は、世界と人類の存続に大きく関わっています。今回は「Four reasons why restoring nature is the most important endeavour of our time」と「Biodiversity loss could be making us sick – here’s why」の記事を参考に、土地の劣化が招く深刻な危機について考えてみたいと思います。

地球上の生命の危機

人間が生きていくための食料の確保は、健康な土地があってこそです。米、野菜、肉など、どれも肥沃な土壌がなければ育むことはできません。私たちの食料は健康な土地に依存しているのです。しかし、科学者たちは、年間240億トンの肥沃な土壌が失われており、この傾向が続けば2050年までに地球上の土地の95%が劣化すると警告しています。

さらに、世界の人口は2050年には35%増加して97億人になるという予測があり、食料の需給バランスが崩れることは必至です。土地の劣化の先に、世界的な食糧危機が待ち受けているのです。

関連記事:映画「地球の限界:”私たちの地球”の科学」から教わった地球のためにすべきこと

先住民族の文化の危機

祖先からの土地で伝統を引き継ぎながら暮らしている先住民族の文化は、土地と密接に結びついています。しかし、森林や土地が失われると、そこにあるコミュニティが失われ、伝統的な文化や知識、言語なども消失していきます。世界にある文化の多様性が失われていくのです。

また、先住民族の暮らしは何千年もの間その土地に合わせて進化してきたもので、土地と人間が共に暮らしていくための高度な知識の宝庫です。しかし、土地が失われることで、そういった貴重な知見も失われてしまうのです。

免疫システムの危機

土地の劣化は、人間の免疫システムにも深刻な影響を与えます。私たちの体はさまざまな微生物と共生することで健康が保たれています。内臓や皮膚、脳などに生息する微生物が病原菌の侵入を防いだり、消化を助けたりしてくれているのです。

土壌にもさまざまな微生物が生息していますが、人類が進化した環境に近い場所で見つかった微生物は、一部の微生物学者に「古い友人」と呼ばれています。これらの微生物は哺乳類の進化の過程に関わり、人間の免疫システムの発達に複雑に関与していたと考えられています。

「古い友人」は人間の免疫を教育する役割を持っており、体内に入ってきた病原菌に過剰な攻撃をするのを規制したり、無害な物質を攻撃するのを防いだりしてくれます。しかし、土地の劣化により微生物が減少すれば、体内に教育担当の微生物が不足し、人間の免疫システムが暴走を始める可能性もあるのです。

(参考)
Four reasons why restoring nature is the most important endeavour of our time
Biodiversity loss could be making us sick – here’s why

コメントを残す