竹製の自転車があることをご存じでしょうか。成長力が強すぎて厄介者扱いされることもある竹ですが、昨今は環境に優しく持続可能な素材として見直されてきています。その竹で自転車を作るという画期的なアイデアがガーナで生まれました。
思いついたのは、学校に通うために毎日3時間半歩くことを強いられていた女子学生。今、竹製自転車は環境だけでなく、女性のエンパワーメントや若者の支援などさまざまな点で注目されています。今回は「Riding Towards Sustainable Development, on Bamboo」と「Meet the woman making cycling even more sustainable in Ghana」の記事を参考に、竹製自転車の開発の背景や特徴を紹介します。
竹製自転車開発の背景
竹製自転車の開発者であるバーニス・ダパー氏は、森林を管理する技術者である祖父と森の中で暮らしていました。そのため学校へ行くために毎日3時間半も歩かなければなりませんでした。後に自転車を買ってもらえたことで通学が楽になり、この経験から彼女は「子どもたちが勉強したり本を読んだりする十分な時間が持てるように自転車を寄付したい」と思うようになりました。森林で育ったダパー氏は、竹の強さや成長の速さといった特性をよく知っていたので、竹で自転車を作るというアイデアを考え出し、大学を卒業するとともに「ガーナ・バンブー・バイク・イニシアティブ(以下、イニシアティブ)」を立ち上げました。
イニシアティブでは、ロードバイク、マウンテンバイク、子ども用自転車などさまざまな種類の竹製自転車を製造しています。そして、一台販売するごとに一台の自転車を子どもたちに寄付するという活動を続けています。イニシアティブの取り組みは、以下のウェブサイトで詳しく紹介されています。
Bamboo Bikes Initiative: Ghana from UN Global Climate Action Awards on Vimeo.
竹製自転車の特徴
竹製の自転車は壊れやすいのではないかと不安に思うかもしれませんが、金属製に劣らぬ強度とメリットがあります。竹の引張強度(上下から引っ張った時の強さ)は鋼よりもはるかに高いことは証明済みですし、しなやかさも兼ね備えているので衝撃を吸収することもできます。そのため竹製の自転車フレームには走行時の衝撃を減らす金属製のスプリングは必要ありません。重さは金属で作った場合の十分の一、価格も安く抑えられます。しかも、リサイクルも可能です。
環境への貢献
竹を使って自転車を作ることは、環境にとってもメリットがあります。ガーナには竹が豊富にあるので材料を輸入する必要がありません。そのため輸入や輸送に関わるコストや、輸送の際に生じる炭素の排出量を減らすことができます。また、竹の加工では金属加工ほどの電力エネルギーも必要としません。また、イニシアティブでは一本の竹を切る場合は少なくとも三~五本の竹を植えることで、竹と竹のある環境を保護することにも取り組んでいます。
参考記事:地球に優しい素材「竹」の特徴とメリット
女性や若者への貢献
イニシアティブは、女性や仕事が不足している農村地域の人々に自転車を作ることを教え、仕事を提供しています。これにより失業率が減り、貧困の改善につながっています。今後は、NGOと提携して母親が働き続けられるように保育施設を建設することも検討されています。
竹製自転車は、2009年にクリントングローバルイニシアチブ賞を受賞、2010年には国連環境計画シードイニシアチブ賞を受賞しました。また、2012年にリオデジャネイロで開催された地球サミットで世界ビジネス開発賞を受賞するなどし、国際的な注目を集めました。
(参考)
Riding Towards Sustainable Development, on Bamboo
Meet the woman making cycling even more sustainable in Ghana
田舎育ち18年、都会暮らし28年、海外暮らし5年。どこにいても緑と土が必要で、ときどき「山が見たい」と駄々をこねます。老後はヨット好きの主人と海と山の両方が見える場所に住みながら、世界各地を旅したい欲張り50代です。