美しい夕日をゆっくりと静かに眺めたのはいつですか?忙しくて最近はそんなことはしていないという人も多いのではないでしょうか。でも、忙しい現代人ほど夕日を眺めたほうがよいと言えるさまざまな研究結果が報告されています。

今回は、「5 Reasons Why Sunsets Are Good for Your Health」と「How Admiring the Sunset Changes You for the Better」の記事を参考に、夕日を眺めることの効果をいくつかご紹介します。

夕日を見ると気分が良くなる

疲れ果てた移動中にふと目に入ってきた夕日。でも、その夕日を見ていたら心が落ち着いてきたり気分が良くなったりという経験はありませんか。これは気持ちの問題だけではなく、根拠があるんです。その仕組みは、こうです。

まず夕日を見ると直射日光が目に当たります。その光は網膜視床下部路という神経を通って脳に届けられます。そして、脳内の松果体(しょうかたい)という器官を刺激します。松果体はメラトニンやセロトニンといった、いわゆる幸せホルモンを分泌する器官なので、そこに夕日の光が届くことでホルモンの分泌が促され、幸せが感じられるというわけです。

夕日を見ると元気が出る

仕事や家事に追われる生活をしていると、一日の中で一度も自然を感じなかったという日も多いのではないでしょうか。しかし、米国ロチェスター大学のリチャード・ライアン博士は「自然は魂の燃料だ」と言い、その重要性を指摘しています。ライアン博士は、「自然の中にいる」ことが人にどのような影響を与えるのかをさまざまな実験を行って研究しています。そして、1日に20分間自然とつながりを持つだけで活力が湧いてくるという結論を導き出しています。

都会で生活していると1日に20分間ですら自然の中にいることは難しいと感じるかもしれませんが、ライアン博士の考える自然とのつながりとは、ハイキングをしたり公園を散歩したりということではありません。ただ自然を感じるだけでいいのです。

その良い方法の一つが、夕日を眺めることです。ビルの向こうに夕日が沈むころ、まだ帰宅することはできないかもしれませんが、夕日を眺めに屋上に出てみましょう。そして、ただぼんやりと眺めるのです。それだけでも十分自然を感じる時間になります。そして、その時間はオフィスでコーヒーを飲むよりもよほど多くの活力を回復させてくれます。

夕日を見ると人生の満足感が増す

スタンフォード大学の研究によると、「美」への関心が高いほど人生への満足度が上がり、将来の見通しも良いと感じられることがわかっています。「美」には、絵画や音楽などの「芸術的な美」、慈善活動や親切心といった「道徳的な美」、そして森林や星空といった「自然の美」がありますが、その中でも「自然の美」との関りが最も人生の満足度を上げると報告しています。これは、自然の美に対する感情の動きは学習して身に着けるものではなく、本能的なものであるためではないかと考えられています。

息をのむような夕日を見ると、思わず立ち止まって眺めてしまうということがあると思います。このように本能的にその瞬間に夢中になることで、過去や将来への不安から解放され、気持ちがリフレッシュし、人生が少し良くなったように思えるのです。

しかし、忙しい現代人は「急いで物事を成し遂げなければならない」ということを学習してしまったために、美しさを前に立ち止まるという本能が失われてきています。ゆっくりと沈む夕日を静かに眺めるという体験は、この本能を呼び覚ます大切な時間でもあります。

(参考)
5 Reasons Why Sunsets Are Good for Your Health
How Admiring the Sunset Changes You for the Better

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