「昔々あったずもな」で始まり、「どんとはれ」で終わる遠野物語は、民俗学者である柳田國男が、地元の出身者である佐々木喜善より聞いた昔話を編纂したものです。物語の中には、カッパや山姥など、たくさんのモノノケが登場します。

夜でも明るい大都会では現実離れしたお伽噺ですが、月明かりしか頼ることのできない遠野では、現実味を帯びてきます。もしかしたら今もなお、闇の中にモノノケたちが蠢いているかも知れません。レンタサイクルを借りて「遠野の不思議なスポット」を訪ねてみました。

岩手という地名自体がミステリー

悪事を働いていた鬼が神に懲らしめられ「もう悪さをしない」と約束し、盛岡市にある三ツ石神社の巨石に、約束の手形を押したことから、その名が付いたといわれる岩手県。ちょっとやそっと不思議なことがあってもおかしくないですね。

カッパが棲む川

まずは、遠野駅前で自転車をレンタルして、定番のカッパ渕に参りましょう。小さな小川に祠があるカッパ渕は、遠野を代表するミステリースポットの一つです。平坦な道なので、駅からも自転車でスーイスイと行くことができます。

すぐ近くにある常堅寺というお寺が火災に遭った際にカッパが消化活動をしたという伝説が残されています。それに感謝し、境内には全国で長崎市の諏訪神社、愛媛県明浜町の若宮神社の3か所にしかないといわれるカッパの形をした狛犬(正確には犬ではない)が祀られています。

カッパの形をした狛犬|筆者撮影

常堅寺は今から520年前の室町時代に建てられましたが、コンクリートでできているところを見ると、カッパ狛犬はそれほど古いものではありません。果たしてカッパは存在するのか。実にミステリアスです。

巨大な石神

遠野には、多くの男根の形の石神が多く祀られています。遠野物語にも登場するので、古くからの風習だと思われます。この石は「金勢様」と呼ばれ、生産の神として信仰されていたようです。昭和47年に発見された山崎の金勢様は全長1.5mもある立派なもの。

ちなみに「女性がタワシで擦ると、腰の病気に効果がある」といわれています。なぜ女性限定なのか? タワシなんかで擦ったら...などと書き続けると不謹慎になりそうなので、ここまでにしたいと思います。

山崎の金勢様|筆者撮影

重なり合う巨石は弁慶の仕業

息を切らして山道を突き進むと、摩訶不思議な続石に辿り着きます。巨石の上に、バランスよく別の巨石が乗っかっているのです。まわりにも同じような石があることから、山頂から落ちてきたのは間違いなさそうですが、自然にできたにしてはあまりにも不思議です。

伝説によると武蔵坊弁慶が作ったといわれていますが、幅7m、奥行5m、厚み2mもあるため「それ、見たのか?」と突っ込みたくなるほどムチャな話です。近くにはおいしい湧水が流れていますので、サイクリングで乾いた喉を潤してください。

武蔵坊弁慶がつくったとされる続石|筆者撮影

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