「世界各国の研究機関が報告した生物多様性と健康に関する科学的知見」全5回シリーズ

仕事で溜め込んだストレスを、体を動かして発散しようと思い立ったとき、皆さんはスポーツジムと緑のある公園、どちらに行きますか?
適度な運動が、日々のストレスをコントロールする上で有益であることは、きっと皆さんも身をもって体感されていることでしょう。それでは、私たちにも身近な体を動かす環境として、スポーツジムと緑のある公園、どちらがよりストレスを軽減させたのか。今回は、心理学・生理学的側面においてストレス軽減に効果的な運動環境に関する論文をご紹介します。

ノルウェー生命科学大学の Giovanna Calogiuri らが行った研究では実験参加者(男女 7 名 ずつ、49±8 歳)を、

  1. 職場近くの森林がある公園内において自転車やエクササイズゴムなどを用いて 1 日 45 分×週 2 日×10 週間にわたって運動を行わせる群
  2. フィットネスジム 内で同程度の運動を行わせる群

の 2 群にランダムに振り分けました。質問紙調査による心理学的指標や血圧・唾液中コルチゾールなどの生理学的指標を分析した結果、心理学的指標・ 生理学的指標ともに公園内で運動を行った群の方がジム内で運動を行った群よりもストレスレベルが低減することが示されました。彼らは論文中以下のように結論付けています。

“緑環境下での運動は従業員たちのストレスをうまくコントロールし、疲労回復を促すのに役立つ可能性があります。”
“本研究は、職場における緑環境下での運動介入の方法論について有益な知見となるでしょ う。さらに、「従来型の」室内環境下での運動よりも緑環境下での運動の方が特に心理学的・ 生理学的ストレスを軽減することを通して、従業員たちの健康により貢献することが示されました。”

体を動かすこと、特に森林などの緑のある環境下での運動は心身の健康に対してポジティ ブな効果をもたらすようです。実験参加者数が少ないという課題はありますが、本研究は自然環境が持つ健康への効果についての実験的証拠となるでしょう。

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いかがでしたでしょうか。ストレス軽減という側面だけを考えれば、会費を払って通うスポーツジムよりも、緑あふれる公園で運動した方が、より高い効果を得ることができるのです。もし、日々の仕事のストレスに悩まされるようなことがあれば、ぜひ緑あふれる公園で思い切り体を動かしてみてください。

【紹介した論文】
Green exercise as a workplace intervention to reduce job stress. Results from a pilot study.
Work, 53, 99‒111.

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