「世界各国の研究機関が報告した生物多様性と健康に関する科学的知見」全5回シリーズ

現代社会に生きる人々は様々なストレスにさらされています。その中にはお酒に依存してしまう人も多く、うつ病を併発することも少なくありません。そのような人々がもし森の中でのキャンプを経験すればうつ状態が改善されるのでしょうか?

チュンブク大学校のWon Sop Shinらはアルコール依存症患者92名(45.26±3.89歳、男 N=84、女 N=8)を対象に、

  1. 森でのキャンプを9日間行う群
  2. 通常生活を送る群

にランダムに振り分け、質問紙を用いてうつレベルについて調査しました。介入を行う前は両群間でうつレベルに差がなく、臨床的基準に照らし合わせれば両群ともうつレベルが高い状態にあることが分かりました。
調査の結果、9日間の森でのキャンプにより、うつレベルが低減し、通常レベルまで改善されることが明らかになりました。具体的には、うつ病自己評価尺度(Beck Depression Inventory、BDI:うつレベルを測る21項目からなる自己評価表)のスコアが約15(軽度のうつレベル)から約5(正常レベル)に減少したことが、本調査により分かりました。

この調査により、アルコール依存症やそれと併発するうつ病に対する治療に森でのキャンプが有効である可能性が報告されました。アルコール依存やうつなどの精神疾患に対して従来は専門家によるカウンセリングやその後の精神・行動療法あるいは薬物療法が一般的ですが、将来的には森でのキャンプを始めとした活動も治療方法の選択肢の一つに加わるかもしれません。

心を癒やす手段は人それぞれかもしれませんが、その中の一つとして森でのキャンプをしてみてはいかがでしょうか?

【紹介した論文】
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3258312/pdf/12199_2011_Article_215.pdf
Environmental Health and Preventive Medicine, 17, 73–76.

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