歩いてしかたどり着けないような山の奥深く、脱衣所などの小屋さえもない知る人ぞ知る秘密の温泉。辺りに漂う湯けむりや硫黄の匂い、ちょろちょろと流れるお湯の音。自然が作り出した湯船につかりながら美しい景色を独り占め…

「秘湯」この言葉だけで想像がふくらみワクワクするのは私だけではないはずです。

こういった「秘湯」は日本全国にあり自治体や愛好家たちにより保護され情報共有もされています。

秘湯

秘湯という言葉は1975年頃に作られた造語で本来は、

「山歩きしなくてはたどりつけない奥地や陸の孤島だったような交通の便の悪い場所にある温泉宿、山奥の湯治場、豪雪などで半年しか営業できない山の温泉、修験者やかつての藩主の隠し湯など、『ひっそりとして素朴で人に知られていない、秘められてきたような、秘境に湧出する温泉(湯)』を略して命名したものである。」

(Wikipediaから引用)

このような意味合いでした。
しかし何をもって「秘湯」であるとするかの明確な基準はありません。
その後に起こった秘湯ブームにより温泉宿として旅館やホテルが立ち並ぶ観光地も「秘湯」を名乗るようになり、1980年代以降「秘湯」は少し広い意味で使われるようになりました。

本記事では秘湯の「施設や屋根もない自然の中に湧出(ゆうしゅつ)する温泉」という部分について、その楽しみ方について解説していきます。

秘湯の楽しみ方

目的地の秘湯まで自分の足で行ったという達成感や湯につかり自然の熱を全身で感じること、目的地までの登山やハイキングも丸ごと楽しめます。

達成感がある

自身で情報を集め時間と労力をかけて山を登りたどり着いた先の湯。そう考えるとすごく特別な感じがするものです。
単純に料金を支払って入浴する、という場合とは違い達成感もひとしお。自分の力でここまで来たという自信や経験にもなります。

自然が作り出した熱を全身で感じることができる

湯に入ると自然が作り出した熱を全身で感じることができます。
温泉だから温かいのは当たり前、と普段の生活の中で入るお風呂と同じように感じるのはもったいないです。
「これが自然の作り出した熱か」とかみしめながら入浴しましょう。
普段とは違う自然の景色を眺めながらの入浴は格別なものです。

自然を存分に満喫できる

目的地の秘湯に到着するまでの計画を立て登山やハイキングも楽しみましょう。
登山道やハイキングコースを歩きながら美しい景色を眺めたり心地良い川のせせらぎを聞いたりしながら目的地を目指します。慌ただしい日常から離れて自然の中をゆっくり歩くだけでも気持ちが落ち着きます。
余すところなく自然を満喫できる一日にしたいものです。

エクストリーム温泉

先日2021年9月下旬に私が行ってきた秘湯を紹介します。
「エクストリーム温泉」と呼ばれる山奥の秘湯で誰でも入れます。
場所は福島県耶麻郡猪苗代町にある沼尻温泉街から車で15分、さらに登山道を50分ほど歩いた先です。
安達太良山(あだたらやま)の中腹にあり標高は約1300メートル。今回私は、仕事でこのエクストリーム温泉のガイドもこなしている友人に案内してもらいました。

エクストリーム温泉 温泉が川となって流れています。

ここで入浴しました。旅館の露天風呂のような場所です。

登山道からの風景も最高でした。

登山道からの風景

登山道の途中で見ることができる美しい滝「白糸の滝」

白糸の滝

注意点

相手は自然そのもの。ケガや遭難を防止するために注意すべき点をあげておきます。

滑る

湯に入る際、足元には藻(も)や苔(こけ)が生えており滑りやすいです。
岩や石がごろごろしている場所で転ぶと大けがにつながる可能性もありますので慎重に歩きましょう。

極端に熱い・冷たい

場所によっては温泉卵が作れるほど熱い部分、足がつってしまうような冷たい部分があります。徐々に温かさを確かめながらちょうど良いポイントを見つけてください。
訪れる時期によっても温度は変わることがあるので確認は毎回必要です。

硫化水素などの危険なガス

温泉街でほとんどの人が嗅いだことがある硫黄臭の正体は「硫化水素」です。
空気より重い気体で足元や湯の水面近くにたまりやすいという特徴があり無風状態は危険と言われています。秘湯では硫化水素中毒による事故も起こっているので注意が必要です。
この写真はエクストリーム温泉のものです。硫化水素が出て危険ということもありここから先の上流へは進めませんでした。

急流に流される・足のつかない深い部分もある

川のように流れがある場合、湾曲(カーブ)している部分は川底が水流にえぐられ急に水深が深くなっていることが多いです。また湯が濁っていて底がよく見えない場合も注意が必要です。

秘湯に行く際は、ほとんどの場合、熊の生息域である山の中を歩くことになります。
熊にこちらの存在を知らせる熊よけの鈴やラジオなどを準備しましょう。熊も人間との遭遇は基本的には避けると言われています。
また万が一遭遇してしまった場合の熊撃退スプレーも持っているとさらに安心です。

まとめ

今回は秘湯の「施設や屋根もない自然の中に湧出する温泉」という部分について解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
以下にまとめます。

秘湯の楽しみ方

  • 目的地の秘湯まで自分の足で行ったという達成感がある
  • 湯につかり自然の熱を全身で感じることができる
  • 目的地までの登山やハイキングも楽しめる

秘湯を楽しむ際の注意点

  • 滑る 
    藻(も)や苔(こけ)が生えており滑りやすいので注意
  • 極端に熱い・冷たい 
    温かさを確かめながら入浴
  • 硫化水素などの危険なガス 
    無風状態は危険
  • 急流に流される・足のつかない深い部分もある 
    急流や濁って底が見えない部分は注意
  • 熊 
    熊よけの鈴やラジオ、熊撃退スプレーも推奨

一カ所でも行ってみると「知る人ぞ知る場所」を知ったようで楽しくなりさらに興味が出てくるかもしれません。登山やハイキングと一緒に温泉も楽しめると考えるとぜいたくな一日になりそうですね。

とは言えやはり自然が相手ということも忘れてはなりません。実際に温泉宿で硫化水素中毒による死亡事故も起きています。人の手の加わっていない場所であればなおさら注意が必要です。

初めは地元のガイドさんが案内してくれるような秘湯やたくさんのレビュー情報が収集できる場所だと安心して行くことができると思います。

冬季は閉鎖となっている場所も多いので事前にしっかりと情報を集めて計画を立ててくださいね。
一度自然の熱を体で感じに秘湯へ出かけてみてはいかがでしょうか。

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