歩くことが健康に良いことは知られていますが、歩くことで創造力や問題解決力も高まるということをご存じでしょうか。さまざまな実験や研究により自然の中を歩くことと創造力とのつながりが明らかになってきています。今回は「Why Walking Helps Us Think」の記事を参考に、自然・歩く・創造力のつながりをご紹介します。
歩くことで創造力が上がる
「歩く」ことと「創造力」との関係について、スタンフォード大学では次のような実験を行っています。176人の大学生を座ったままのグループと歩くことを取り入れたグループとに分け、創造的な思考力が必要ないくつかのテストを行いました。例えば、「ドアを開ける以外の鍵の使い方はなんですか」のようなものです。
その結果、座ったままのグループよりも歩くことを取り入れたグループの方がより多くのクリエイティブなアイデアを考え出し、平均で60%も創造力が高まっていることがわかりました。また、歩いた後で座ってもその創造力はしばらく維持されることがわかったのです。
自然が注意力を回復させる
スタンフォード大学の実験では、ルームランナーを使って屋内で歩くという方法が取られましたが、サウスカロライナ大学のマーク・バーマン教授は、どこを歩くのかという環境にも注目しました。
教授は、都会の町中と緑あふれる果樹園を歩いた場合の認知能力への影響を調べ、注意力に違いがあることを明らかにしました。都会を歩くときには、車や歩行者に気を付けなければならず、看板や信号などさまざまな情報が飛び込んできます。そのため注意力は消耗していく一方です。
しかし、自然の中を歩くと、森の緑、鳥の鳴き声、風の冷たさなど、頭というよりも五感を使いながら過ごすことになります。視覚から聴覚、聴覚から触覚へと漂うように五感を使うことは、脳を休ませ注意力を回復させることがわかったのです。
課題や問題に取り組むときに、注意力は欠かせません。自然の中を歩いて注意力を回復させることは新しいアイデアや解決策を見つける糸口につながります。
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自然の中を歩くと思考が自由になる
「歩く」という行為は、無意識に行っていることが多いと思います。「まず右足を出して、次は左足を出す」のように考えてはいないはずです。ましてや自然の中では車や信号に意識を向ける必要もありません。それでも、体はきちんと行きたい方向に向かって歩いていきます。
このような過度な集中力を必要としない無意識の状態は、思考を自由にします。さまざまな考えが浮かんできて、革新的なアイデアや鋭い気付きを見出すことができる状態なのです。
自然の中を何も気にせず自分のペースで歩くことで体と脳が調和し、より良いアイデアが浮かんできます。
まとめ
自然の中を歩くことは、単なる気晴らしではありません。創造的な思考を後押しする積極的な活動です。「アイデアに行きづまった」「課題の解決策がわからない」、そんなときは自然の中を歩いてみてはいかがでしょうか。一歩一歩進んでいくうちに、新たな光が見えてくると思います。
(参考)
Why Walking Helps Us Think
法人向け貸し切り型リモートオフィス施設の「信濃町ノマドワークセンター」(長野県)には、「やすらぎの森」と呼ばれる整備された遊歩道があります。360度森に囲まれたノマドワークセンターで都会と変わらない仕事をしながら、時折、創造力を高めるお散歩を体験してみてはいかがでしょうか。
田舎育ち18年、都会暮らし28年、海外暮らし5年。どこにいても緑と土が必要で、ときどき「山が見たい」と駄々をこねます。老後はヨット好きの主人と海と山の両方が見える場所に住みながら、世界各地を旅したい欲張り50代です。