オーバーランディングを楽しむ人々が年々増加し、市場全体が熱気に包まれていることは、前回の記事で解説しました。

世界を駆けるオーバーランディング ー データから読み解く新たなアウトドアブームの可能性 ー
世界に広がるオーバーランディングビジネスと経済へのインパクト

必要な装備を車に積み込み、自然を探索するこのアクティビティは、単なる旅を超えた、人生を豊かにするイベントになり得ます。しかし、その魅力の陰には、必ず守るべき本質が存在します。安全を担保するための装備や技術の習得はもちろん、自然環境への配慮も含めた責任ある行動が求められます。

オーバーランディングの本質とは

オーバーランディングの本質は、自然と向き合い、自己を試し、未知の世界を探索することにあります。このアクティビティが「目的地に到着すること」ではなく、「旅そのもの」に価値を見いだす理由がここにあります。オーバーランディングは深い自然体験、その地ならではの文化や人との出会いを通じて、日常では得られない発見や自己成長をもたらします。

オーストラリアを発祥とするオーバーランディングの基本概念は、長距離移動をし、数週間、時には数カ月にわたる旅をすることにありました。しかし、現代では、従来型の長期旅と、短距離かつ数日間の旅が混在する形で進化し、個々のニーズに応じて変化しているようです。

ただし、変わらないものもあります。基本となる装備と準備です。未舗装の道や荒れた地形にも対応できる四輪駆動車、調理器具や寝泊まりのための装備、運転技術やリカバリーテクニックは、オーバーランディングに必須要素です。これらすべてがそろって初めて、オーバーランディングを体験する準備が整います。

オーバーランディングにおける学びの重要性

オーバーランディングに関する知識はどこで得ることができるのでしょうか?「世界を駆けるオーバーランディング ー データから読み解く新たなアウトドアブームの可能性 ー」でご紹介したようなWebサイトやSNSなどのコミュニティーを通して知識を深めることができます。学びなくして、安全なオーバーランディングの旅は実現しません。知識の習得は不可欠です。

実際にOverland EXPO®では、毎回学びを得るための多様なセミナーや実演などが行われ、初心者からベテランまで幅広い学びの機会が提供されています。例えば、2024年のOverland EXPO® WESTでは、実に330時間以上の教育や講習の時間が設けられていました。

安全なオーバーランディングの旅には、高価な装備や多数のリカバリーツールをそろえることよりも、必要な機能に絞った装備と運転技術、リカバリーテクニックの習得が重要であり、それがオーバーランダー(=オーバーランディングをする人々)の責任でもあります。

環境保護と責任ある旅の推進

また、業界全体でも責任ある旅の姿勢が積極的に提唱されています。「Leave No Trace(痕跡を残さない)」の原則は、多くのオーバーランダーに支持され、自然環境への配慮を促しています。

オーバーランダーのグローバル コミュニティーであるOverland Bound社は基本理念として「Leave it better than you found it(来た時よりも良い状態で去る)」を掲げ、環境保護への積極的な貢献を呼びかけています。同社はGreenspark社のカーボンオフセットプログラムにも参加しており、オーバーランディングが単なる冒険や娯楽ではなく、自然との共生と環境保護の意識を高める機会になることを目指しています。

オーバーランディングの本質は自然との調和、自己成長、そして未知の探索にあります。しかし、この魅力的なアクティビティを楽しむためには、適切な装備と技術の習得、そして環境への配慮が不可欠です。オーバーランダーには、自然を尊重し、責任ある行動をとる義務があります。

業界全体でも環境保護への意識は高く、オーバーランディングは自然との共生意識を高める機会となっています。適切な準備と責任ある姿勢を持って臨むことで、オーバーランディングは豊かな経験と深い満足をもたらす、かけがえのない冒険となるでしょう。

参考)
Overland Expo West 2024
https://www.overlandbound.com/founding-principles/
Overland Bound Inc

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