自然と接点のない生活。慣れてしまえばどうってことないと思っている人もいるかもしれませんが、気が付けばストレスやら疲労やらで心や体からSOS信号が発せられているなんてことも。そんな状況に陥る前に、ぜひとも「週に1回、30分」、緑地へ出かけて欲しいのです。今回は、自然を楽しみながら心と体の健康を促進しましょう、というお話しです。
「頻度」と「時間」に着目した研究
Nature World Newsの記事によると、週に1回30分以上、公園などの緑地に行くと気分の落ち込みや高血圧を抑えることができることを、オーストラリアのクイーンズランド大学とCEED(オーストラリアの研究機関)が発表したそうです。
これまでの研究でも、緑地近くに住んでいることと長生きには関連性があることがある程度わかっており、自然により近い生活をしていると健康には良いとされていました。しかし、具体的にどの程度自然と触れ合えば心や体がその恩恵にあずかれるのかという点が明確ではなかったそうです。
オーストラリアのブリスベンに住む18歳から70歳までの1,538人を対象にした今回の研究では、緑地に行く「頻度」と「時間」に着目し、どのくらいの頻度で、どのくらいの時間、緑地に行くと効果が得られやすいのかということを調べました。その結果、週に1回、30分以上緑地にいることで、気分の落ち込みや高血圧を抑える効果が確認できたといいます。
4つの「health」を促進
研究のなかでは、「週に1回、30分の緑地訪問」がもたらす効果として、気分の落ち込みや高血圧の抑制も含め4つの「health(健康)」に効果があるとしています。
-mental health(メンタルヘルス):心の健康。気分の落ち込みを和らげる。
-physical health(フィジカルヘルス):身体の健康。高血圧を改善する。
-social health(ソーシャルヘルス):地域社会との接点を増やし、社会的なつながりを増やす。
-health behavior(ヘルス・ビヘイビア):健康につながる活動(例:ランニング、ウォーキング、サイクリングなど)が増え、糖尿病、心臓病、肥満などの予防につながる。(※1)
「週に1回、30分」というのは最低でも確保して欲しい回数と時間で、頻度や時間が増えれば心や体が受ける恩恵が増加する場合もあるとしています。たとえば、緑地にいる時間が長くなれば(=時間の増加)、メンタルヘルス(=気分の落ち込み)やフィジカルヘルス(=高血圧)の改善に役立ち、また、週に何度も緑地へ行けば(=頻度の増加)、ソーシャルヘルス(=社会的なつながり)は高くなるとしています。
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「週に1回、30分」と、目安がはっきりと示されたことやそんなに負担になるような頻度や時間ではないことを踏まえると、そのぐらいならやってみようかなと思い始める人もいるような気がします。いつも頑張っている心や体をいたわってあげよう!そんな気持ちで公園や緑地へとお出かけしてみてはいかがでしょうか?
《参考URL》
Study: Visiting Parks for 30 Minutes Each Week Could Reduce Risk of High Blood Pressure, Poor Mental Health|Nature World News
(意訳:菊地薫)
Nature Serviceのウェブメディア NATURES. 副編集長。
自然が持つ癒やしの力を”なんとなく”ではなく”エビデンスベース”で発信し、読者の方に「そんな良い効果があるのなら自然の中へ入ろう!」と思ってもらえる情報をお届けしたいと考えています。休日はスコップ片手に花を愛でるのが趣味ですが、最近は庭に出ても視界いっぱいに雑草が広がり、こんなはずじゃなかったとつぶやくのが毎年恒例となっています。