Nature Serviceが管理・運営するキャンプ場では、ごみの回収をしていません。正確に言えば、2022年から回収をやめました。「不便だよ。」というお声をいただくこともありますが、「うん、わかってるよ。」と受け入れていただき、例年通りキャンプを楽しんでくださっている利用者さんも数多くいらっしゃいます。

今回はごみの回収をやめた理由と、私たちNature Serviceが考えるキャンプのあり方についてお伝えしたいと思います。

キャンプとは

そもそもキャンプとは何でしょうか?定義はさまざまですが、日本キャンプ協会のキャンプインストラクター用テキストでは、「自然環境のもとで、必要最小限の装備で生活したり宿泊したり活動したりすることをキャンプと呼びます。」と説明しています。

近年のキャンプトレンドと比較すると、大きな違いがありますね。キャンプギアは大型化し、居住空間の快適さは増し、高級ホテル並みの料金設定と設備を有するグランピングが流行するなど、きれいで、不便のない、楽ちんなキャンプ(もはやキャンプとは似て非なるもの)が、「自然を知る・楽しむ手段」として広まっています。

私たちNature Serviceは、不便なこともあり、汚れることもあり、自然が相手だから想像を超える大変さにも直面し得るアウトドア・アクティビティ、それがキャンプだと思っています。そして同時に、自然と向き合う、自然を楽しむ、自然を大切に思う心を育む、自然に癒やされる、そんな場であってほしいと願っています。それゆえ、自然やその地域に住む人たちに対する感謝の気持ちを忘れてほしくないのです。

「自然さん、おじゃまします」

自然の中におじゃまさせてもらっている気持ち、忘れていませんか?


人は、ごみをいつでも捨てられると思うと、つい多く買いすぎたり、不要な食材は捨てて帰ればいいやと思ったりします。もちろん、すべての人がそうというわけではありませんが。ごみは持ち帰らなければいけないとわかっていれば、きちんと計画を立て、準備もします。そして、それがフードロスを減らし、結果として自然に負荷をかけずに帰宅することにつながります。

関連記事:キャンプ場で起きているごみ問題とは?ごみマナーを考える

「地域の皆さん、おじゃまします」

捨てたごみはどこの誰が処理しているのか、考えてみませんか?

大量生産・大量消費が当たり前になり、安く購入し、不要ならば捨ててしまえば良い、そういう考えがまん延しているように感じることがあります。

今、日本社会は少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少し続けています。それは、ごみの回収とも決して無関係ではありません。ごみは、収集作業員さん、収集車、焼却炉、最終埋立地など、誰かの手を借り、どこかの自治体に負荷をかけて処理されています。多くの自然豊かな地は地方にありますが、過疎化が進み、十分な人員や設備がそろっていない場所だってあるのです。

自然を直接的なり間接的なり守っているその地域の人たちのためにも、おじゃましたら、決して汚さずにごみを持ち帰ることをひとり一人が意識することが大切ではないでしょうか。

(参考)
日本が抱えるごみ問題について|SDGsからみた高齢化の影響と観光ごみについて

ごみ回収なしキャンプ場に14日間テント泊をした結果

多くのキャンパーが悩むのは、生ごみを持ち帰りたくない、臭いが嫌だ、という点ではないでしょうか。筆者は長野県にある星の森オートキャンプ場で14日間テント泊をし、すべてのごみを自宅に持ち帰りました。

生ごみを捨てずに長期滞在をどう乗り切るのか、出発前に色々考え、私が最終的に行き着いたのは持ち運びもできるコンポストでした。生ごみをポイッと入れて適当に混ぜておくだけで、驚くほど臭いがしないのです。これは良い!と実感し、夏場のキャンプ場でも使い続けました。さすがに夏場は臭いが発生するだろうという予想に反し、実際は春とほとんど変わりませんでした。おそらく、気温が高いと水分があっという間に蒸発してごみが干からび、臭いの発生が抑えられているのではないかと思っています。

この中に生ごみを入れて混ぜるだけ。最後は堆肥となる。

滞在を終えて、ごみを全部まとめてみた時に思ったことは、

  • 持ち帰らなければいけないと思えば、人は考え、ごみを減らす行動をとる
  • このごみで地域の皆さんや自然に迷惑をかけないという考え方や行動は、やっぱり良いな

ということでした。

自分を中心に考えれば、ごみを出したその場に捨てていきたいという気持ちは十分理解できます。ですが、自然や日本の社会構造まで考えた時に、もうそれではいけないのです。その状況をしっかりと認識し、実際の行動に移す時なのだと思います。

関連記事:長野県はなぜごみが少ない?その取り組みからSDGsの目標達成のヒントをみつける

14日間分のごみ

日本には右へならえという風潮が強く残っています。近隣のキャンプ場もごみを回収しているから、ウチも回収しておこう。そんな理由で回収を続けているところもあるのかもしれません。本来粗大ごみとして出すような大型のキャンプ道具が捨てられていたり、分別されていなかったり、まだ使えるもの、食べられるものなどが捨ててあったり、そんな状況に多くのキャンプ場が遭遇していると思います。実際、私たちもそうでした。自然が好きでキャンプ場に来てくれているはずなのに、ごみを見て「悲しい」と思ったことは一度や二度ではありません。

自然を楽しむキャンプ場が持続可能であり続けるには、自然やその地域に住んでいる人たちに極力負荷をかけないことを考えることが必要です。「キャンプ場がごみの回収をやめる」という思い切ったかじ取りが、必要な時期にきているような気がしてなりません。

関連記事:CSRにSDGs。企業ができることはなんだろう。-未来のステークホルダーと企業の責任-

(参考)
日本キャンプ協会

2件のコメント

  1. ご苦労様です。記事の内容考えさせられました。確かに今年からごみの回収が無くなった事は利用者としては不便です。近隣のキャンプ場が回収してくれて、同額で利用できる環境ではどうして・・・と思う事も事実あります。しかし、「行った先の負担にあやかって楽しい時間を過ごす」という時間の使い方を考えるときに来ているのだなと思いました。

    1. いつもご利用ありがとうございます。
      長野県の豊かな自然の中でキャンプ場を運営させていただき大変ありがたく思っています。同時に人混みや人工物がないぶん、人手も設備も足りていない可能性があることを私たち運営側も理解していく必要があると認識しています。
      長野県民の方や県外から来てくださる方々とも一緒に考え、行動に移していければと思います。今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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