「自然体験不足障害」という言葉を聞いたことがありますか。2005年にアメリカで出版された『Last Child in the Woods: Saving Our Children from Nature-Deficit Disorder(『あなたの子どもには自然が足りない』という本の中で使われた言葉です。

著者は、昨今の生活様式や人々の考え方が、子どもを自然から切り離しており、そのことが子どもの心身に悪い影響を与えていると警鐘を鳴らしています。

今回は「WHAT IS NATURE-DEFICIT DISORDER?」と「Five Symptoms of Nature Deficit Disorder, and How Mindfulness Can Help」の記事を参考に、「自然体験不足障害」とはどのようなものか、またその原因や改善策を紹介します。

自然体験不足障害とは

「自然体験不足障害」というと、なにか恐ろしい病名のように聞こえませんか。でも、これは医学的に定義された言葉ではありません。『あなたの子どもには自然が足りない』の著者でありジャーナリストのリチャード・ルーヴ氏が作った言葉です。子どもが自然と切り離されることの危険性や緊急性を伝えるために、このような表現を作り出したのです。

2005年以降、自然体験が人間の発達に与える影響に関する研究が増え、自然から疎外されることが人、特に子どもの心身に深刻な影響を与えていることが明らかになってきています。

自然と過ごす時間が得られない子どもは不安感や抑うつ感を強く持っていたり、注意力や集中力の低下、落ち着きのなさといった注意欠陥障害の傾向があったりすることがわかっています。また、屋外での活動が不足することで肥満になったり、環境の変化に気付きにくい「感覚麻痺」という症状も出てきたりするのです。

自然体験不足障害の原因

ルーヴ氏は、自然体験不足障害の原因をいくつか挙げています。

都市化により屋外での遊び場が減るだけでなく、車などの交通量も増え、子どもが屋外で楽しむことが難しくなりました。また、テレビやコンピュータなど電子機器が増えたことで、子ども自身が部屋で過ごすほうが楽しいと思うようにもなってきています。

それらに加えて、屋外で起こる事故や不審者などによる事件などの報道に影響を受けた親たちが、「外は危険だ」という考えを持つようになり、子どもを屋内で守ろうとし過ぎていることも原因の一つだと指摘しています。

自然体験不足障害の改善策

ルーヴ氏は、「自然体験不足障害」の子どもは、親、学校、地域の努力で救うことができると考えています。

屋外に出て静かな時間を持つだけでも子どもは落ち着きを保てるようになります。芝生や土の上を裸足で歩く、木を触ってみる、小石を拾ってみるという機会を持つだけでも「感覚麻痺」を改善することができます。

学校の校庭や近くの公園で、5分でも10分でもいいからそこにある花や木を観察する。それを季節ごとに繰り返すと、環境の変化にも気づけるようになります。

大がかりなキャンプに行かなくても、一日かけて登山をしなくても、放課後や週末に身近にある自然と触れ合う機会を作ることで「自然体験不足障害」による症状を改善することはできるのです。

大切なのは、自然体験が減っていることによって失われているものを恐れるのではなく、身近にある自然環境から得られるものは何かを考え、子どもに自然と触れ合う時間を持たせてあげることなのです。

(参考)
WHAT IS NATURE-DEFICIT DISORDER?
Five Symptoms of Nature Deficit Disorder, and How Mindfulness Can Help

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