自然の中で過ごしたり自然と触れ合ったりすることが心や体に良いことはよく知られています。多くの研究や調査も行われており、その効果も明らかになっています。ただ自然のどの要素が良いのか、色なのか、音なのか、はたまた匂いなのかといった点については、まだあまり研究が行われていません。しかし、2022年に英国の研究チームが自然の香りと幸福感の関係についての研究を行い、興味深い結果を報告しました。今回はその内容を「Smells Experienced In Nature Can Impact Our Well-Being; Here’s How」と「Nature, smells, and human wellbeing」の記事を参考に紹介します。

研究概要

英国の研究チームは、自然の匂いが幸福感にどのような影響を与えるかについて調査しました。性別、年齢、人種などのバランスを考慮して選んだ194人の対象者に、2月、4月、6月、10月のワークショップに参加してもらいました。

ワークショップでは、「森の中の借り物競争」と題して参加者に森の中を散策してもらい、そこで気づいたことを色、音、形、匂いなどの観点で書き出すように指示をしました。例えば、「きれいな赤い実があった」とか「木のいい香りがした」のようにです。その後、書き出した内容についての印象や好き嫌い、感情などを聞き取りさらに細かく分析をしました。

研究結果

その結果、特に匂いが人々の感情や認知、また記憶にも影響を与えることがわかりました。例えば、「松の匂いを嗅ぐとなぜか幸せな気持ちになった」とか「土の香りでリラックスした」のように、匂いが人の感情に働きかけ心を癒やす効果があることがわかりました。

また、「花の香りを嗅いだら意識が高まった」というような、匂いと認知面との関りを示唆する結果も得られました。ただそれ以上に顕著に現れたのは、匂いがないことの影響です。排気ガスやごみなどの匂いがある都会とは違い、自然には嗅覚を強く刺激する匂いがありません。「新鮮で清潔」と表現されるような自然の空気を吸うことは、五感をクリアにし頭をすっきりさせてくれると考えられます。

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また、興味深い発見もありました。それは、自然の匂いと過去の記憶との間に強い関連があるということです。「土の匂いを嗅いだら、子どものころ父の手伝いをした時のことを思い出して懐かしい気持ちになった」とか「松ぼっくりの匂いを嗅いだら、クリスマスの思い出がよみがえっていい気分になった」など、子ども時代の記憶が呼び起こされたという言及が多くあったのです。匂いが過去の思い出と結びつき、それが引き金となって感情までも誘発されると考えられます。

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まとめ

自然の匂いは、心を癒やしたり、頭をすっきりさせたり、過去の記憶や感情まで呼び起こすことがわかりました。また、匂いがないことが人に良い効果を与えることもわかりました。都市部では汚染や腐敗などのさまざまな匂いがあふれ、いつのまにか心や体に疲労がたまっています。時には自然の匂いに包まれながらリラックスしてみてはいかがでしょうか。

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(参考)
Smells Experienced In Nature Can Impact Our Well-Being; Here’s How
Nature, smells, and human wellbeing

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