白神山地の多彩なアクティビティを予約・体験できる「白神カレンダー」をご存じでしょうか。ここでは、世界自然遺産である白神山地の美しい自然や豊かな文化に触れられる、さまざまな体験プログラムを見つけることができます。

今回はその中の一つ、青森県のブナを有効利用した木工製品である「ブナコ」の製作を体験できる「ブナコ製作体験うつわ作りに挑戦!」というアクティビティに参加してきました。

今回私たちが訪れたのは、青森県西目屋村にあるBUNACO(ブナコ)西目屋(にしめや)工場です。実は、旧西目屋小学校をリノベーションして2017年4月にオープンしました。隣には、現西目屋小学校があり、終始子どもたちの元気な声が聞こえてきました。

BUNACO西目屋工場の入口で、明るく出迎えてくださったのは、佐藤さん。ブナコ製作体験に入る前に、工場内を案内していただきました。

「ブナコ」とは

まず、工場の1階入口付近で「ブナコ」について説明していただきました。

青森県が誇る自然の恵み、ブナの木から生まれたブナコは、厚さ1mmのテープ状に加工したブナ材をバウムクーヘンのような円盤状に1枚1枚丁寧に巻き重ね、湯呑み茶碗を使って押し出しズラして成形する木工品のことです。ブナ自体、水分を多く含む木であり、乾燥すると狂いやヒビが発生しやすいため、建築材料には適しませんでしたが、60年ほど前、旧青森県工業試験場(現青森県産業技術センター)がブナを活用する新しい方法を生み出しました。

この方法は、ブナの木を大根のかつらむきのような方法で長さ2m、厚さ1mmの薄い板状に加工。この薄板を、幅10mmほどのテープ状に裁断して丹念に巻き重ねてから成形するもの。この製法は、ブナコを生み出した当初からほとんど変わることなく続いており、すべての工程は手作業によるものだそう。60年もの間、同じ方法で作り続けていたことだけでも感動的ですが、それがすべて手作業だということにさらに尊敬の念を抱きました。

こちらの照明は星野リゾートで使われているもののレプリカ!直径は約80センチ、ピザ約3つ分です!

王林ちゃんをはじめ、たくさんの著名人が実際に体験に訪れていました!

「ブナコ」工場の見学

ブナコの説明を受けた後、2階へ上がり、スピーカー試聴室へと向かいました。

この部屋では、BUNACOスピーカーから流れる臨場感のある音が楽しめます。入った瞬間、クラシック音楽のやわらかな音色と洗練された空間に包み込まれました。ブナの木とBUNACO独自の製法によって実現した、音に命が吹き込まれた瞬間を堪能しました。

この部屋は、普段開放しており、時折おじいちゃんが何時間も1人で椅子に腰掛けてリラックスしていたり、若い男女が幸せそうな様子で空間を満喫していたりするそう。それくらいこの部屋は居心地の良い落ち着きのある空間となっていました。

ブナコ製の机と椅子。持ち上げると思いもよらぬ軽さでびっくりして笑ってしまいました。

工場内は、まだ旧学校の面影が十分に残っていて、懐かしい気持ちになりました。

次は、各作業工程を見学しました。西目屋工場で見学できる作業工程自体は、以下の工程があります。

  • 巻き上げ
  • 型上げ
  • 乾燥
  • 研磨・穴埋め

今回は、その中でも「巻き上げ」「型上げ」「研磨・穴埋め」の3つの作業を見学してきました。

最初に見学したのは、「巻き上げ」作業です。

中心にベースとなるものを置き、ブナ材を薄くテープ状にしたものを、バウムクーヘンのように隙間なく重ねていく作業。この作業がブナコの製造過程で一番難しく、3〜4年の年月を経てスムーズに作業ができるようになるようです。見学している私たちの目が回ってしまうほど、くるくるスムーズに円を回していき、あっという間に円が大きくなっていました。

こちらは、「型上げ」の作業です。磁器の湯呑み茶碗を使用します。

ブナコの製法は、他の製法とは異なる点があります。巻き上げの工程でバウムクーヘン状に重ねたものをずらしながら形を自由自在に変形させるため、ロクロ挽きなどの木を削って作る製法に較べて、削りかすなどが発生しません。そのため、ごみがほぼ出ず、また使用する材料も少なく済むので、エコだと海外からも評価されている手法だそうです。

「型上げ」は、今回実際に体験できる作業でしたので、プロの手法をじっくり観察しました。この段階では、プロの方がとても簡単そうに形を変形していたので、案外簡単かもと安心しきっていました。

最後に、「研磨・穴埋め」の作業を見学しました。

こちらは、佐藤さんも当日実際に身につけていたブナコ製のチャームを研磨している様子です。「巻き上げ」作業の際に重ね合わせたテープ状のブナ材の隙間を埋めるための工程です。

▼ブナコ株式会社 西目屋工場の企画・広報 相馬友美さんのインタビューを以下からお聴きいただけます▼

いざブナコ製作に挑戦

工場見学後は、実際に私たちでブナコを使ったうつわ作りに挑戦。一部始終手作業で行われるブナコの作り方を学び、自分だけのオリジナル作品を作り上げていきます。

体験したのは「型上げ」作業。見学のときは、簡単そうに見えていたこの作業が、実はコツが必要でした。磁器製のお茶碗を利き手でギュッと握り、少しずつ転がしながら形を変形させていくのですが、これがなかなか形が変わらないのです。

コツは「お茶碗を持っていないほうの手」の使い方にある、と教えていただきました。お茶碗側は支点にして、力は左手側から加えるのです。左手は一見、添えているだけのように見えますが、実はこちらの手の動きが重要でした。

コツを教えてもらってからは、変形スピードが早くなり、味のある形に変形させることができました。

作成後に記念写真を撮ってもらいました。思うように作成できてうれしそうです!

「型上げ」体験のあとは、実際に製作したうつわの裏に入れるメッセージや塗装する色を選びました。いつもお世話になっている家族や友達にプレゼントしてもいいかもしれませんね。ちなみに、完成品は約1カ月半後に記入した住所に送られます。

ミニショップとカフェ

工場内には、実際に工場で作られた商品が陳列されているミニショップや、ブナコを見ながら西目屋産素材を使用したスイーツを楽しむことができるカフェがありました。

ここでしか買えない商品もあるそう!ぜひ立ち寄ってみてください。

ブナコの照明やテーブルウェアで彩られた、とても心落ち着くすてきなカフェ。

まとめ

白神山地で体験できる「ブナコ製作体験うつわ作りに挑戦!」は、自然とともにある地域の伝統工芸と直接触れ合うことができる貴重なプログラムです。特にブナコの特性を生かして作り上げる工程は、木とともに時間を過ごし、自然の恵みを五感で感じることができます。その温もりたっぷりのブナコ製作体験で思い出に残る自分だけの一品を製作してみてはいかがでしょうか。

🌳白神山地が世界自然遺産に登録された納得の理由!🌳

青森県と秋田県に広がる約13万ヘクタールの広大なブナ天然林は、人間の手がほとんど及んでおらず、8千年以上にわたりその状態が保たれています。この原生的なブナ林は世界最大級の規模を誇り、それが1993年に日本初の世界自然遺産に登録された理由となりました。ここには540種以上の植物、4000種以上の動物が生息し、希少な種も含まれています。これほどの規模の原生林は世界でも珍しく、環境保護の観点からも世界的に高く評価されている場所なのです。

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